妻に起きた奇跡


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ハロウィンの日のことだった。
俺は仮装パーティに出席するためにお化けの格好をしていた。
会社帰りの同僚も同じくお化けの仮装。
パーティが終わった後、一息つこうと同僚を自宅に誘った。
突然の誘いなので妻には言っていなかった。
自宅では息子を風呂に入れた後寝かしつけ、衣類を着ながら妻が寝る前に一息ついているところだった。
風呂上がりから寝かしつけるまでは落ち着きの無い息子のために妻はほとんど裸だ。
そのため応接間の扉は完全に閉めていた。
また部屋は暗くしておいた。
今回はかなり本格的にした特殊メイクのおかげで本物の幽霊と思えるほど怖く互いにそれを楽しみたかったのだ。
妻に気付かれないまま妻が寝たらみんなで解散という流れの予定だったがそうはならなかった。
息子を寝かしつけた妻が突然扉を開けて入って来ようとしたのだ。
同僚の靴は下駄箱の中に隠したが、俺の靴までは入れてなかったので、妻は帰って来た俺を確認しようとしたのだろう。
奇跡はその時起きた。
同僚を連れて来たことを知らなかった妻、部屋を暗くしていた、本格的な幽霊の特殊メイクをしていた、この3つが重なったためである。
妻は本物の幽霊だと思い込んでしまったのだろう。
悲鳴も上げることすら出来ず完全に腰を抜かした妻は立ち上がることも出来ず四つん這いになって俺達から逃げて行ったのだ。
更に、思い出して欲しい。
妻は風呂上がりで服を着ている途中。
やや割れた腹筋や太い腕を気にするためか、上半身からいつも着る癖があった。
下半身裸という人間としての尊厳を失ったかのような格好で家の中とはいえ堂々としている妻に対する懸念は、最悪の形で当たってしまった。
下半身裸四つん這いで逃げて行く妻の後ろ姿は、モザイクが上手い具合で登場するわけもなく、高画質スローモーションで俺達の記憶の中に焼き付けられてしまった。のだ。

 

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