21
「じゃあ果歩、バイト頑張ってね。」
「うん、じゃねぇ知子ちゃん。」
大学を終えた果歩は知子と別れて、アルバイト先のトミタスポーツへ向かった。
トミタスポーツの仕事にも慣れてきた今日この頃。
いや、慣れるというか、トミタスポーツでの仕事は今のところ受付だけで、高い時給のわりに楽な仕事。
高い時給はもちろん嬉しかった果歩だが、遣り甲斐(やりがい)という面では若干物足りなさを感じていた。
トミタスポーツの建物に着いた果歩はスタッフ用の入り口から中へ入る。
「おはようございま~す」
次々と顔を合わせる男性スタッフにあいさつをしていく果歩。
ここのアルバイトを始める時は女性スタッフが少ないとは聞いていたが、仕事を始めてみると、マッサージ室に1人と、事務に1人、そしてアルバイトの果歩、女性はこの3人だけだった。
それに他の2人は毎日いるわけではなく、週一くらいしか出勤しなかったため、実質ここのスタッフで女性は果歩だけのようなものだった。
ここでの仕事服、トミタスポーツのロゴがはいっているTシャツとハーフパンツに着替えるため果歩は更衣室へ向かった。
「お~い、果歩ちゃん!ちょっと待って!」
「・・・え?」
遠くから駆け寄ってくる誰かに名前を呼ばれた果歩、後ろに振り返った。
「え、キャッ!!・・・と、富田さん・・・」
駆け寄って来きたのは、ここのオーナーでもある富田だった。
果歩が悲鳴に似た声をあげたのは、富田の格好を見たからである。
プールで水泳のインストラクターをしていた富田は水着姿であった。
しかもその水着は男性用のビキニの水着のようだったが、普通のビキニタイプではなくて、いわゆるブーメランタイプと呼ばれる水着で、中学、高校時代に水泳の授業で男子が着ていた物よりもかなり際どい水着だ。
富田のその姿を一瞬見た果歩は目をそらして顔を赤くした。
「と、富田さん・・・あの・・・な、なんでしょうか・・・?」
「ハハッ、おいおい果歩ちゃん何恥ずかしがってんの?ここじゃこんな格好普通だぜ?」
「は、はい、すみません・・・あの・・・それで・・・?」
いぜん目線を富田の身体から逸らしたままの果歩。
「あぁ、果歩ちゃんさ、今日から受付の仕事じゃなくてプールの監視員の仕事してほしいんだけどね。」
「監視員・・・ですか?」
「そうそう、まぁ大して難しい仕事じゃないんだけどね。決められたルール守ってない人とかを笛を吹いて注意したり、誰か溺れたりしてないかチェックする係なんだけどさ。」
「そうなんですか・・・はい、わかりました。」
「ハハッ、そろそろ受付の仕事にも飽きてきてただろ?」
「へへ・・・はい、ちょっと・・・。」
果歩は悪戯っぽく笑顔をつくって言った。
確かに受付の仕事は飽きてきたと思っていた果歩、新しい仕事を与えてもらえたのは正直嬉しかった。
「よし、じゃあこれに着替えて。」
そう言って富田は手に持っていたビニール製の袋を果歩に渡した。
「あの・・・これは・・・?」
「水着だよ。」
「え!?水着になるんですか!?」
「そうだよ?プールでの仕事だから、もしかして水の中に入ってもらう事もあるかもしれないしね。」
「はぁ・・・そうですかぁ・・・でも・・・」
「さぁさぁ!着替えて着替えて。」
「・・・はい・・・。」
笑顔で急かすようにそう言ってくる富田。
果歩は考える余地もなく水着の袋を持って更衣室に入っていった。
まさか今日自分が水着姿になるなんて予想もしていなかった。
・・・どうしよう・・・水着なんて・・・
・・・でもなんだか断りづらいし・・・はぁ・・・
ため息をしながら袋の中を見つめる果歩。
「果歩ちゃ~ん!着替えたら仕事の説明するから早くしてねぇ!」
ドアの向こうから富田の声が聞こえる。
「は、は~い!」
・・・んもう・・・しょうがないかぁ・・・
果歩は意を決して自分の着ている服に手を掛けた。
更衣室の前ではブーメランタイプの水着姿で富田がニヤニヤと不適な笑みを浮かべていた。
(果歩の水着姿かぁ・・・へへッ・・・どんな身体してんのか楽しみだぜ・・・それにしても・・・ありゃ押しに弱いタイプだなぁ・・・もうちょっと強引にいっても良さそうだな・・・)
ヤダ・・・ちょっと・・・この水着・・・私には小さいよぉ・・・
身に着けていた衣服をすべて脱いだ果歩はさっそく渡された水着を着てみた。
果歩は今まで夏にプールや海に行くような習慣はなかったので、水着になるのは高校時代の水泳の授業以来だ。
その当時着たのはスクール水着で、海やプールにも行かない果歩はスクール水着以外の水着はほとんど着た事がなかった。
そして今、富田に渡された水着、それは競泳用の水着だった。
こうした水着は水泳で鍛えている女性が着れば、イヤらしさなどほとんどないのかもしれないが、果歩のようなまったく水泳に縁がないような女の子が着ると妙にイヤらしく見えてしまう。
それにこの水着、果歩には少し小さいようだった。
身体が全体的にきつい感じがしたし、恥ずかしかったのは股の部分がハイレグタイプだった事だ。
結構角度が深い・・・果歩のアソコの毛は薄くて範囲も小さかったため、毛がはみ出してしまうようなことはなかったが、少しズレたら・・・と思うと少し怖い。
それにサイズが小さいためか、お尻の割れ目の部分に水着が少し食い込んでしまう。
更衣室にあった鏡で自分の水着姿を確認する果歩。
・・・あ~・・・ダメ・・・ダメだよ・・・こんなの人に見せられないよ・・・
真っ白な身体に食い込む黒い水着、そんな自分の水着姿に果歩は顔を赤くする。
他のに・・・他の水着に変えてもらおう・・・こんなのダメだもん・・・
果歩はドアに近づき、外にいる富田に声をかけた。
「あのぉ・・・富田さ~ん・・・」
「ん?どうしたぁ?もう着替えた?」
「いえ・・・あの・・・その・・・この水着、私にはちょっと小さいみたいなんですけど・・・」
「え~マジ?いやぁ女性スタッフ用の水着それしかないんだよねぇ・・・あ、でも大丈夫、上からTシャツ着ればいいからさ。な?それならいいだろ?」
「え・・・Tシャツですかぁ?ん~・・・」
「大丈夫大丈夫、Tシャツ着ちゃえば水着姿なんてほとんど見えないんだから。」
「え~でも・・・」
「ハハ、大丈夫だって、秋絵ちゃんもそうしてたから。ね?ほら、早くしないと時間ないし。」
「ん~・・・わかりました・・・」
ガチャ・・・
それから少ししてから、更衣室から果歩が出てきた。
富田に言われた通り果歩は、渡された競泳用水着の上にTシャツだけを着た姿で現れた。
・・・はぁ・・・でもやっぱり恥ずかしいよぉ・・・
「さ!じゃあ行こうか。」
顔を赤くして恥ずかしがっていた果歩に対し、そんなことはまったく気にしていないかの様に富田はそっけなくそう言った。
「は、はい・・・」
Tシャツは着ているものの、ハイレグの股部分や、食い込んだお尻の部分がチラチラ見えてしまっている。
いっしょにプールへ向かう二人。
富田は果歩に気づかれない様に横目でそっと果歩の身体を見た。
(ハハ・・・こりゃいい身体・・・おいしそうな身体してるぜ・・・)
果歩の真っ白な脚と、果歩が自分でTシャツを少し引っ張って隠そうとしている水着姿の下半身を、イヤらしい目線で見つめる富田。
(それにしても、あんな小さい水着、もしかしたら断固拒否されるかと思ったんだけどなぁ・・・ハハ・・・こりゃ先が楽しみだわ・・・)
富田は心の奥から沸いてくるイヤらしい笑みを堪えることができなかった・・・。
22
「じゃあ、そんな感じで頼むよ。まぁわからない事があったらいつでも聞いてもらっていいから。」
「は、はい。ありがとうございます。」
室内プールの脇で水着の上にTシャツ姿の果歩は、富田から監視員の仕事の内容の説明を受け終わったところだった。
・・・やだ・・・やっぱり恥ずかしい・・・
果歩がプールに入ってくるなり
「おぉ!果歩ちゃん今日は水着かよ、へぇ~いいねぇ!」
「おわ~、果歩ちゃん水着なの!?そのTシャツも脱いでみてよ。」
と、顔見知りの男性会員達にセクハラ紛いの声をかけられた。
今まで受付の仕事をやっていた果歩は、ここの男性会員達全員を知っている。
果歩の可愛さはこのジムに通っている男達の中では評判で、わざわざ通う曜日を果歩がいる曜日に変更する男が急増していたほどだった。
そんな短期間でトミタスポーツのマスコット的存在になっていた果歩の水着姿、男なら仕方ない事なのかもしれないが、その視線が果歩に集中している事に、さすがに鈍感な果歩でも気付いていた。
・・・もぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・・
その大勢の男性の視線はおそらく果歩の下半身、Tシャツでは隠れないハイレグの股の部分、そして水着が少し食い込みぎみのお尻に集中しているであろう事にも果歩は気付いていた。
Tシャツを下に引っ張りながら少しでも下半身が隠れるようにと努力する果歩。
「ちょっとちょっと!男性の諸君、果歩ちゃんの方見過ぎです!セクハラになりますよ!さぁさぁ、自分のトレーニングに集中してください!」
富田が果歩の前に立って、男性達の視線を遮るようにして言った。
「じゃあさっき言った通り、頼むよ、果歩ちゃん。」
「は、はい。わかりました。」
富田の爽やかな笑顔で言ってきた言葉に果歩も笑顔で返事をした。
監視台の梯子(はしご)を登っていく果歩、その時下から冨田は果歩の下半身、お尻に食い込んだ水着を凝視していた。
(ハハッ!こりゃマジで美味そうだわ・・・あんま長いこと我慢できねぇな・・・ま、今日の果歩の様子じゃそんなに時間は掛からないかもしれねぇけどなぁ・・・。)
そんな富田のイヤらしい下からの視線にまったく気付いた様子のない果歩、一番上までたどり着くと、監視員用の椅子に腰を下ろした。
「よし、じゃあもし溺れてる人とか見つけたらその笛を大きく吹いてくれよ。」
「はい、わかりました。」
「じゃあ頼むわ。」
そう果歩に言って富田はインストラクターの仕事に戻っていった。
・・・はぁ・・・結構暇かも・・・
監視員の仕事は退屈だった。
もしかして受付の仕事より暇かもしれない。
一応プール全体を注意深く監視しているつもりだったが、それは最初の頃だけで、しだいに(どうせなにも起きないし)と心のどこかで思ってきてしまう果歩、集中力がなくなってきていた。
それにしてもなんだか未だに男性会員達の視線を感じる・・・。
椅子に座っているから食い込んだ水着などは見られていないと思うが、それでも果歩の椅子からぶら下っている白い脚などをチラチラ見られている気がする。
しかし、果歩はそういった視線には結構慣れていた。
というのは中学や高校時代の水泳の授業の時にも同じような視線は感じていたからだ。
最初は恥ずかしいし嫌だったが、もう果歩の中では男の人は仕方ないのかもしれないと割り切っていた。
もちろん水着姿を見られることは恥ずかしい事に変わりはなかったのだが・・・。
・・・ん~・・・あ~暇だなぁ・・・
しばらく監視の仕事を続けていた果歩だが、そのうちだんだんと、ある男性の方をチラチラ見るようになっていた。
その男性は・・・富田だった。
会員のお客に泳ぎ方の指導をしている富田。
・・・富田さんって・・・すごい逞しい身体してる・・・やっぱインストラクターだから毎日鍛えてるのかなぁ・・・
果歩が見ていたのは富田の鍛え上げられた身体だった。
なぜだろう・・・無意識のうちに富田の方に遠目から視線が行ってしまう。
それは果歩が昨日秋絵の部屋で見たDVDのあの男優の身体と、富田の身体を重ねて見てしまっていたからだった。
そう、あのDVDの女性と激しく交わっていた男の逞しい身体。
そして今朝見た夢の中で果歩と濃厚な性行為をしていた男の逞しい身体。
その体つきにそっくりな逞しい身体が今、果歩の視線の先、現実の世界に存在しているのだ。
黒く焼けた肌
厚い胸板
大きな背中
割れた腹筋
筋肉質な太い腕
そして・・・果歩の視線が止まってしまう場所・・・
富田の下半身・・・その中心部分・・・
一瞬、女性なら目を背けたくなるような水着を穿いている富田。
しかし果歩の目はしっかりとその下半身を見つめていた。
それは、もはや[チラ見]ではなかった。
ブーメランタイプの小さな水着、その中心部分の大きな膨らみに果歩の目は釘付けだった。
強引に収められているであろう富田のペニスはその膨らみから、相当な大きさのものであることは容易に想像できた。
果歩は自分の下腹部が熱くなってくるのを感じた。
昨日からずっと燻り続けていた小さな炎が今、視覚的刺激によって再び大きなものになり始めていたのだ。
大学では講義に集中したり、知子と話をしたりして忘れかけていたその感覚。
しかし、本当はずっと我慢していたのだ。昨日からずっと・・・
果歩は想像してしまう・・・。
逞しい身体に抱かれる自分を。
大きく股を開かされ、その中心に逞しい男根を挿入される自分を。
我慢し続けていたムラムラ感が、急激に果歩の身体の中で増大してきていた。
股間が、アソコがムズムズする・・・
Tシャツの裾をグッと握り締め、時折り太ももを擦り合わせるような仕草をする果歩。
・・・あっ・・・・
ジュワァっと熱い何かが股間の秘裂から溢れ出してきた事に気付いた果歩。
ハァ・・・ダメ・・・
ドク・・・ドク・・・ドク・・・
心臓の脈と同じリズムでイヤらしい粘液が生産され、秘裂から溢れ出てくる。
・・・ダメ・・・変なこと想像しちゃ・・・
本能的に見つめてしまっていた富田の身体から視線を外し、グッと目を瞑る。
必死に心を落ち着かせようとする果歩。
「・・・お~い果歩ちゃん・・・果歩ちゃん!」
「・・・え・・・?」
監視台の下の方から男の人の声。
富田の声だった。
「どうしたんだよ、目瞑って下向いちゃって。」
「え?あ・・・す、すみません!」
「ハハッ、おいおい、まさかお眠りしてたんじゃないだろうなぁ?」
「い・・・いえ、寝てはいなかったですけど・・・。」
「本当かぁ?ハハッ、まぁいいよ、それよりちょっと来てくれないか?水質検査の仕方教えるから。」
「え?・・・は、ハイッ!わかりました。」
さっきまで富田の身体を見ながら想像していたことを思うとなんだか気まずい・・・
富田との会話だけで自分の顔が赤くなっていることがわかる。
監視台の椅子から立ち上がろうとする果歩。
その時一瞬、嫌な感覚を股間に感じた。
ハっとした表情の果歩。
そっと握り締めていたTシャツの裾をめくって水着の股部分を確認してみる。
嫌な予感は当たっていた。
果歩の水着の股部分には、自身から溢れ出た湿った粘液によって染みができていたのだ。
プールに入っていない果歩の水着は、色が黒いとはいえ、乾いた部分と濡れた部分の色の違いは結構はっきりしていた。
・・・うそ・・・やだ、どうしよう・・・
富田を下で待たせたまま、顔を赤くして泣きだしそうな表情の果歩は、監視台から降りることができなくなってしまっていた・・・。
23
「ん?どうした?果歩ちゃん。」
「え?い、いえ、なんでもないです・・・。」
そんなに大きな染みじゃないし・・・注意深く見られない限り気付かれないかな・・・。
富田から呼ばれているのだ、この監視台から降りないわけにはいかない。
しかたなく椅子から腰を浮かせて、監視台の梯子(はしご)から降りていく果歩。
登っていく時同様、下にいる富田にお尻を向ける格好だ。
さっきと同じように富田はジロ~っと目線を果歩の下半身に向けいる。
(ん?・・・ハハ・・・果歩のやつ、妙に俺の方チラチラ見てるなって思ったら・・・フフ・・・こりゃいいわ・・・)
富田はさっき監視台に登っていくときにはなかった染み、プールに入ってもいないのに濡れている果歩の股間の小さな染みを、富田は見逃さなかった。
その染みを見つけた時、富田はイヤらしい笑みを堪えることができなかった。
監視台から降りてきた果歩をイヤらしい笑みを浮かべながらジッと見つめる富田。
「・・・あ・・・あのぉ・・・?」
「ん?あぁごめんごめん。ハハッ、ちょっと果歩ちゃんの水着姿に見惚れちゃってたよ」
「え・・・?」
その言葉を聞いて顔を赤くして恥ずかしがる果歩。
「いやぁ、うちのジムほとんど女性会員いないからさ。ごめんごめん、ついつい果歩ちゃん可愛いからさ。」
「・・・はぁ・・・恥ずかしいです・・・あんまり見ないでください・・・」
果歩はTシャツの裾を引っ張りながら水着の股部分を隠しながら恥ずかしそうに言った。
富田の見惚れちゃってたよ、という言葉、さっきから熱くなっていた果歩の身体は落ち着くどころか、そんな言葉をかけられただけでさらに身体は熱くなり、鼓動は速くなる。
「ハハっ果歩ちゃん、見ないでくださいって言ってもお互い様だろ?」
「え・・・お互い様・・・ですか・・・?」
一瞬、富田が言ったことの意味が理解できなかった果歩。
「果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?」
「え?」
「さっき監視台からすっげぇ視線を感じたからよ、ダメじゃん、お客さんをちゃんと監視してなきゃ。」
顔を急激に真っ赤にして、富田の言っていることが図星であることを表現してしまう果歩。
「・・・あ・・・あの・・・・すみま・・・」
「ハハっ!いいのいいの!女の子だってそういう気分の時もあるよなぁ。ハハッ!」
「と・・・富田さん・・・」
まさかずっと富田の身体を見ていた事に気付かれてたなんて、果歩はどうしようもなく恥ずかしい思いだった。
「ハハッ!いいよいいよ、気にしないで、見られて減るもんじゃないから。」
「・・・・・・・」
果歩の目はウルウルして今にも泣き出しそうな雰囲気だ。
「さぁ!水質検査の道具、置いてある場所教えるからついて来て。」
「・・・ハ・・・ハイ・・・」
果歩は顔を赤くしたまま小さな声で返事をして富田の後についていった。
「え~っと・・・ここだな・・・果歩ちゃん、ちょっとこっち来てみな。」
「は・・・はい・・・。」
果歩が富田に連れてこられたのは、いろいろな道具が置いてある小さな倉庫のような部屋だった。
狭い部屋の中に入った2人の距離は密着しそうなくらい近くなっていた。
「ここに、水質検査の道具が全部置いてあるから。」
「はい・・・。」
道具の場所を目で確認する果歩。
しかし、その目が一瞬、富田の股間にいってしまう。
間近で見る富田の逞しい身体・・・さっき富田から指摘されたにもかかわらず、反射的に富田の股間を見てしまう果歩。
富田の臍(へそ)のあたりから股間の方へ向かって生い茂る濃い毛並みは、どこからが陰毛なのかわからない。
そしてその下にあるブーメランタイプの水着の膨らみは、近くで見ると驚くほど大きく感じた。
果歩はほぼ無意識のうちに富田に気づかれないようチラっと一瞬見ただけだったが、富田はその一瞬の果歩の目の動きを見逃してはいなかった。
(ハハ・・・こりゃもう・・・確実にいけるな・・・)
自信に満ちた富田の表情。
富田の計画が成功することが、自信から確信に変わった瞬間だった。
検査道具を持ち出し、プールの側で検査道具の使い方を果歩に説明する富田。
「ほら、そんなに難しくないだろ?」
「は、はい・・・。」
「それじゃ次回から水質検査は果歩ちゃんの仕事な。」
「はい、わかりました。」
プールの側にしゃがんでいた2人だったが、富田が急に果歩の前に立ち上がった。
その時、ちょうど富田の股間が果歩の目の前にくる位置になってしまった。
「・・・え・・・・?」
しゃがんだまま顔をあげた果歩は、顔の高さと同じ、目の前にあるビキニの膨らみに一瞬、目が釘付けになってしまう。
「・・・果歩ちゃん?どうした?」
「・・・え!?い、いえ!なんでもありません・・・。」
動揺した様子で果歩はその場に立ち上がった。
「さて、時間も時間だし、果歩ちゃんの今日のバイトは終了にしようか。」
「は、はい・・・ありがとうございました。」
そう言って、使った検査道具をさっきの部屋へ片付に行く二人。
「それにしてもいいよなぁ・・・。」
ふと、富田が口を開いた。
「え・・・?なにがですか?」
「果歩ちゃん、スタイルいいよなぁ・・・?」
「え・・・」
急にそんな事を言われてまた顔を赤くする果歩。
「いや、冗談抜きで。女友達とかによく言われない?」
「い、いえ・・・そんな・・・普段水着になることもないし・・・それに私スタイルなんて・・・よくないです・・・」
恥ずかしそうにそう答える果歩。
それは正直な答えだった、果歩は自分のスタイルが良いなんて思ったことはなかった。
「ハハッいやいや、肌も白いし、スゴイ良いと思うよ?でも・・・トレーニングしたらもっといいスタイルになるぜ?」
「トレーニング・・・ですか・・・?」
「あぁ、秋絵ちゃんもやってるトレーニングなんだけどね、俺が考えた特別メニューのトレーニング。」
「秋絵先輩も・・・!?」
「そう・・・そうすればもっと大人っぽいスタイルになれるよ。」
「そ・・・そうなんですか・・・?」
大人っぽい・・・確かに秋絵は大人っぽかった。
同姓の果歩でも秋絵からは何か色気のようなものを感じる。
「まぁ・・・また休みにでも時間あったら試してみてよ、果歩ちゃんなら特別に無料で教えるからさ。」
「は・・・はい・・・ありがとうございます。」
大人っぽいスタイルになるトレーニング・・・それがどんなものなのか、今の果歩には想像もつかなかった・・・。
24
「ふぅ・・・ただいまぁ・・・。」
誰もいない、1人暮らしをしているアパートの部屋に着いた果歩。
部屋の電気をつけて、そのついでにパソコンのスイッチも入れる。
ピッ・・・ブーーン・・・
トミタスポーツのアルバイトを終えた果歩は、寄り道せずにまっすぐアパートへ帰ってきた。
今夜、果歩は〝アレ〟をする事に決めていた。
どうしても〝アレ〟をしたくてたまらない気持ちになってしまったのだ。
「ん~・・・あれ?友哉からメールがきてない・・・どうしたのかなぁ・・・?」
いつものようにパソコンのメールをチェックした果歩。
友哉が留学してから今まで一日も欠かさず届いていたメールが今日は届いていなかった。
いや、よく考えると、昨日秋絵の部屋に泊まったため、昨日のメールもまだチェックしていなかったのだが、受信箱には昨日の分のメールも届いていなかった。
「忙しいのかな・・・友哉・・・」
いままでずっとメールは友哉の方から届いて、それに果歩が返事をするという形だったが、今日初めて、果歩の方からメールを送信してみる事にした。
【友哉元気~?昨日は私、秋絵先輩の部屋でお泊りしてきちゃってメール送ってなかったんだけど・・・今日確認したら友哉からメールきてないよぉ・・・忙しいのかな?ちょっと心配だよぉ・・・返事待ってま~す】
カタカタカタ・・・
「ふぅ・・・お風呂入ろっ・・・」
メールを送信した果歩はお風呂場に向かった。
ザーーーーー・・・・・!
湯煙でいっぱいになった浴室の中で、頭のシャンプーをシャワーで洗い流しながら果歩はある事を考えていた。
「・・・・・・・。」
それは、メールが来ていなかった友哉の事ではなく、別のことだった。
昨日から今日にかけて果歩が目にしてきた物をもう一度頭の中で想像していたのである。
秋絵の部屋で見たDVD、今朝見た淫らな夢、そして・・・富田。
今日、予期なく突然水着姿になる事になってしまった果歩。
何度顔を赤らめただろうか。
・・・はぁ・・・恥ずかしかったなぁ・・・
小さめの水着、男性会員達の視線、それに、富田の肉体に目を奪われてしまっていた自分自身。
富田の逞しい身体、あのブーメランタイプの小さなビキニの大きな膨らみ、想像しただけでなんだか体が熱くなってくる。
『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』
・・・富田さん・・・気付いてた・・・
今考えてみれば、もしかしたら、果歩が水着の股部分につくってしまっていた小さな染み、その事も富田には気付かれていたかもしれない。
・・・どうしよう・・・富田さんに変な風に思われちゃったかな・・・
そんな事を考えながらも自分の手をそっと股間にもっていく果歩。
ザーーーーー・・・!
温度が温め(ぬるめ)のシャワーを体にあてながら目を瞑り(つむり)、秘裂に指を沿わせる。
ヌル・・・・
シャワーのお湯とは明らかに違うネットリとした液体が果歩の指に纏わりつく。
アルバイトが終って、更衣室で水着を脱いだとき、水着の股部分にベットリついていた粘液と同じもの。
ハァ・・・ァ・・・・
固定してあったシャワーのノズルを外して、そのまま自分の秘部に持っていく果歩。
昼に一度帰ってきた時には中途半端に終ってしまっていたシャワーオナニー。
ザーーーー!
「ァ・・・ァ・・・・はぁ・・・・ん・・・・」
片手をタイルの壁につけ、脚を少し開いてシャワーから勢いよく出てくるお湯を股間に当てる。
「ァ・・・はゥ・・・あ・・・・あっ・・・」
昨日からずっと我慢してた、ずっと燻っていたムラムラ感をただ開放することだけに集中する。
あぁ・・・は・・・ダメ・・・立ってられない・・・
やがてシャワーによる快感で脚がガクガクして痺れるような感覚を覚えた果歩。
・・・はぁ・・・
一旦シャワーを股間から外し、自慰行為を中断した。
・・・ガタ・・・
浴用のイスに真っ白なお尻をおいて腰掛け、そこで果歩は大胆に脚をM字に開脚させた。
そしてシャワーのノズルを再び開脚させた股の中心に持っていく。
果歩はゆっくりと目を閉じ、一息つくと、シャワーのお湯の勢いを先ほどよりも強くしてそこに当てた。
「あッ!ん~~!ぁ・・・あぁ・・・・ハン・・・ぁ・・・」
先ほどよりも強い刺激が果歩の体を襲い、思わず喘ぎ声をあげてしまう。
「ァ・・・ァ・・・はァ・・・ココ・・・ハァ・・・」
しばらく続けているうちに自分のより気持ち良い場所、性感帯を見つけ出し、シャワーのノズルの角度を調節する果歩。
一番敏感なクリト○スには強くあてすぎると痛みを感じるが、丁度良い具合にあてたり離したりを繰り返すと気持ち良いことがわかってきた。
しかし、果歩が一日中、いや昨日からずっと待ち望んでいたあの感覚、あの快感の絶頂の波はまだまだ遠くにあるままだ。
シャワーオナニーは気持ち良いが、それだけでは果歩が望むあの頂には辿り着けないと、果歩は悟ったのだ。
ヴィーーーーンヴィーーーーンブーーーーー!
グチャ・・・グチャ・・・グチャ・・・・グチャグチャ・・・・
細かい振動音と粘液質な湿った音が響く部屋、その薄暗い部屋のベッドの上で果歩は白い裸体をくねらせていた。
「あっ!ンぁ・・・ぁ・・・ハ・・・・・あぁ・・・ア・・・・ァ・・・」
自らの手で紫色のバイブレーターを激しく抜き差しする果歩。
グチャ・・グチャ・・グチャグチャ・・・・
そしてその動きを徐々に速めていく。
片手はバイブレーター、もう片方の手はDカップの真っ白な乳房を揉みしだき、指は器用にその先端の勃起したピンク色の乳首を刺激している。
「あ・・・ァ・・・ハァ・・・ァ・・・気持ち・・・イイ・・・あっ・・・ん・・・」
バイブオナニーに没頭する果歩。
果歩は目を瞑り、頭の中である事を想像しながら自慰行為を行っていた。
それは、愛しい彼氏と愛し合う場面・・・ではなく、ただただ淫らな妄想、快楽だけを求める妄想・・・・
果歩が頭の中で性交をしている相手は、果歩のアソコに肉棒を抜き差し、激しい濃厚なセックスをしている相手は・・・それは、富田だった。
恋人の友哉ではなく、富田の逞しい身体をオカズにしてオナニーに没頭する果歩。
「アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・」
ついに果歩は上気した表情で富田の名前まで口ずさんでしまう。
もうあの大きな波が、快感の絶頂の波がすぐそこまで来ている。
ラストスパートをかける様にさらに手の動きを速くして、一気に絶頂に達しようとする果歩。
ヴィーーーーーン!!!
グチャグチャグチャグチャ・・・・!!!
「アッアッアッアッ・・・・ん~・・・あッ!!イ・・・ん・・・んあぁぁぁ!」
その瞬間、果歩の頭は真っ白な光に包まれた。
ベッドの上で白い裸体が大きく反り返る。
「あっ・・・ンーーー!」
果歩は3、4秒仰け反ったあとバタッと脱力し、身体を縮こまらせてビクビクと絶頂の余韻に反応していた。
「ハ・・・ン・・・ぁ・・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
ハァハァと、まるでマラソンを走り終わった後の様な息遣いをしている果歩。
果歩の股間付近は薄暗い部屋の中でテカテカと僅かな光を反射させている。
股間からお尻、太ももまでも自らの体液でベトベトに濡らしてしまっていた。
ベッドの上で裸のまま蹲る(うずくまる)果歩の目からは何故かツーっと涙がこぼれていた・・・。
25
「果歩ぉ・・・果歩?・・・ちょっと、ねぇ果歩ぉ?」
「・・・・え?」
いつものように大学の食堂で昼食をいっしょにとっていた果歩と知子。
毎度のようにくだらない事を知子が話し掛けるも、果歩は心ここに有らずといった様子だ。
「どうしたのよ?昼間からボ~っとしちゃって。」
「う、ううん・・・別に、なんでもないよ・・・。」
「はぁ・・・あっ!わかった!友哉君とケンカでもしたんでしょ?」
「え?ち・・・ちが・・・」
結局昨日は友哉からメールの返事はなかった。
しかし、果歩の気持ちが暗くなっていたのはそれだけが原因じゃなかった。
『アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・』
昨日、たまりに溜まっていた自分の欲求を開放した時、頭の中で果歩は富田に抱かれていた。
そう、恋人の友哉ではなく、あのバイト先のオーナーである富田に。
自慰行為の後、ベッドの中でなんとも言えない罪悪感を感じ、涙を流した果歩。
頼りにしていた友哉がいなくなって、すぐにこんな風になってしまった自分の弱い心が嫌だった。
このタイミングで友哉からメールが来なくなったのも、そんな心に隙がある自分の責任ではないかと思ってしまうくらい果歩はマイナス思考になっていた。
「ふ~ん・・・友哉君からメールが来なくなったかぁ。友哉君忙しいんじゃないの?」
「うん・・・たぶんそうだと思うんだけど・・・。」
「大丈夫よぉ、そんな心配しなくたって。あっそうだぁ!果歩、友哉君に電話してみたら?」
知子は明るい笑顔をつくってそう言った。
「電話・・・かぁ・・・うん、そうしてみようかな・・・。」
「きっと何かメールを送れない事情があったのよ。電話して声聞けば、すぐ安心よ。」
「うん、そうしてみる。ありがとう知子ちゃん。」
知子はいつも果歩をからかってばかりだが、肝心なときにはいつも真剣に相談にのってくれたり励ましたりしてくれる。
そんな優しい知子と友達になれて本当によかったと、果歩は心の底から思っていた。
その日、雑貨屋さんのアルバイトを終え、自宅アパートの部屋に帰宅した果歩。
部屋に入り、すぐにパソコンの前に行きスイッチをつけた。
もしかして帰ってパソコンをチェックすれば友哉からメールが届いていて、電話するまでもなく自分は安心を得られるのではないかと、果歩は心のどこかで期待していたのだ。
メール返せなくってごめん、という友哉からのメール・・・
パソコンが立ち上がるのを今か今かと、焦りにも似た気持ちで待つ果歩。
「・・・・・・・。」
無言の果歩、TOPページに新着メールの文字は出てこなかった。
念のため、メール受信ボックスも確認してみる。
カチッ・・・・
マウスをクリックした音だけが部屋に響く。
「・・・メール・・・きて・・・ないや・・・。」
ため息のような声だけを発した果歩。
小さいようで大きな期待を抱いていた事で、なんだかメールが来ていないのが余計にショックだった。
それと同時にさまざまな事が果歩の頭をよぎる。
友哉の身になにかあったんじゃ・・・という心配する果歩の心。
しかし、正直なところ果歩の心配はそれだけじゃなかった。
昨日の自分、頭の中でだけとはいえ、友哉以外の男性と交わってしまった事で、そのことが遠くにいる友哉に伝わってしまったのではないか・・・そんな事は普通はありえないのだが、どうしてもそんな風に思ってしまう果歩。
根拠もなにも無い事だが、とても悪い予感がしたのだ。
しかし、メールは来ていないから事の確認をするには電話をするしかない。
ベッドの上に座り、開いた携帯電話をじっと見つめる果歩。
友哉が無事であってほしいという気持ちが半分、そして果歩自身の罪悪感からきている不安から開放されたいという気持ちが半分。
とにかく、いつも通りの友哉の声を聞けば、いろんな意味での安心が得られるのだ。
そんな期待と不安を胸に、果歩は携帯電話のボタンを押し始めた。
番号を押し終え、携帯電話を耳にあてる果歩。
プル・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・・
ドキドキ・・・
なにか受験発表の時のような、息の詰まるような思いだった。
(大丈夫・・・きっと知子ちゃんの言ってた通りになるよ・・・)
そう自分に言い聞かせながら友哉が電話に出るのをジッと待つ果歩。
早く友哉のあの声が聞きたい・・・。
プルルルル・・・・プルルルル・・・・
しかし、友哉はなかなか電話にでなかった。
オーストラリアと日本はそんなに時差は無いはずだから、非常識な時間でもないはずだが。
(友哉・・・でないなぁ・・・もしかして寝ちゃったのかなぁ・・・・)
もちろんその可能性も十分あった。
(・・・でない・・・明日、もう一回掛けてみようかな・・・)
が、果歩がそう思って、電話を切ろうとした時だった。
プルルルル・・・・プル・・・ガザガザ・・・
突然コールする音が消え、電話が繋がったような音がした。
「・・・・あ・・・・もしもし?・・・・友哉・・・?」
『・・・・・・・・。』
「あれ・・・もしもし・・・友・・・」
『もしも~し!』
「え?」
やっと聞こえた声、それは日本語を話す女性の声だった。
『もしもしぃ?どちら様ですかぁ?』
一瞬頭がパニックになる果歩。
・・・あ、あれ、もしかして、番号間違えたのかな・・・
「・・・あ、あの・・・友哉の携帯・・・」
『あ~そうだよぉ、友哉の携帯だよぉ。あ、もしかしてあなた、日本の友哉の友達?』
やはりこれは友哉の携帯だった。
でも・・・どうして女の人が友哉の携帯にでるの・・・・
「・・・あ・・・あの・・・友哉は・・・・?」
「あ~ごめんねぇ、今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ、電話コール長かったからでちゃ・・・」
カチャ・・・
女性の言葉を最後まで聞かずに果歩は携帯電話を閉じた。
「・・・・・・・。」
バタっとベッドに倒れ天井を見つめる果歩。
友哉の声が聞きたかった・・・
・・・どうして・・・
「・・・・友哉・・・・・。」
なんとも言えない思いが胸の奥から込み上がってきて、大粒の涙が溢れてくる。
シーンと静まりかえった部屋の中で果歩のすすり泣く声だけが響いていた。
26
「・・・はぁ・・・・。」
ため息をつきながら自分の部屋でアルバイトに行くための準備をする果歩、鏡のまえで身なりを整える。
鏡に映る自分の顔は前より少しだけ痩せて見えた。
この2日間まともな食事を摂れなかったのだ。摂れなかったというより、ごはんが喉を通らなかったというべきか。
あれから2日間、果歩は大学とアルバイトを休んでいた。
友哉の携帯に電話したあの夜は、涙が枯れてしまうほど泣き続けた。
次の日、大学に行く時間になっても、体と心が重く感じてとても行く気にはなれなかった。
知子は心配して電話を掛けてきてくれた、果歩が涙声で『大丈夫だから』とだけ伝えると『大丈夫じゃないでしょ』と言って、その後果歩のアパートまでケーキを買って持ってきてくれた。
その時の知子はとても優しくて、一生懸命果歩を励ましてくれた。
そして土曜日の今日、知子の励ましのおかげで少し元気を取り戻した果歩はトミタスポーツのアルバイトに行く事にしたのだ。
しっかりしなきゃと自分に言い聞かせる果歩、それに、アルバイト先にもこれ以上迷惑をかけられない。
だけど・・・
あれから3日、友哉からは折り返しの電話どころか、メールの返事もない。
『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ・・・』
あの時の女性の声、言葉が、思い出したくもないのに頭の中で何回も再生される。
浮気・・・
あの友哉が浮気なんて・・・
そう思うだけで、すぐ眼に涙が溜まってしまう。
グッと目を瞑り、その事を頭から必死に消そうとする果歩。
「もう・・・バイト行かないと・・・。」
溢れそうな涙をグッと堪えて、果歩は自宅アパートを出た。
「おぉ!果歩ちゃん!体調大丈夫かぁ?」
トミタスポーツに着いた果歩、スタッフルームの入り口付近で、ここのスタッフで面接の時も同席していた山井に声を掛けられた。
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑かけてすみませんでした。」
体調を聞かれたのは、アルバイトを急に休んだ理由を風邪をひいたという事にしておいたためだ。
「そっかぁ、じゃもう普通にバイトの仕事今まで通りできるんだね?」
「はい、大丈夫です、もう完璧に治りましたから。」
「じゃあ、今日はプールの監視員の仕事頼んでいいかな?仕事内容は確かこのまえ富田さんに教えてもらったよね?」
「・・・監視員・・・ですか・・・。」
「うん、まぁほとんど座ってるだけだし、できるよね?」
「・・・は、はい・・・わかりました。」
確かに監視員の仕事は楽すぎるほど楽だ、しかし果歩は気が進まなかった。
「はぁ・・・またこれ着ないといけないんだぁ・・・。」
更衣室のロッカーの前で、ため息をする果歩。
手に持っているのは、先日も身に着けた果歩の体には少しサイズが小さめの競泳用水着だ。
先日の事を思い出す果歩、自分の身体に向けられる男性会員たちからの視線、そして富田。
富田の身体を見て、淫らな想像をして水着に染みをつくってしまった自分自身のことを思い出す。
しかし、仕事を引き受けた以上、この水着を着ないわけにはいかない。
そう小さな覚悟を決め、果歩は身に着けている衣服を脱いでいった。
・・・やっぱり・・・
室内プールに出てきた果歩は、案の定、複数の男性会員達からの視線感じた。
嫌悪感ではない、しかし、とても恥ずかしかったのだ。
上はTシャツを着ているものの、下半身のハイレグ部分と、水着が小さいために若干食い込んでしまっているお尻の部分、男性会員達の視線は特にそこに集中している。
・・・やっぱこんなの恥ずかしいよぉ・・・
・・・早く監視台に座っちゃお・・・
監視台の椅子に座ってしまえば、下半身を見られることはほとんどない。
果歩は少し小走りぎみで監視台に向かった。
「あれ、果歩ちゃん?」
監視台に向かっていた途中、後ろから名前を呼ばれて果歩は振り返った。
「・・・あ、秋絵先輩?」
そこにいたのは、秋絵だった。しかも秋絵は水着姿、水着は果歩の水着と同様の競泳水着のようだった。
「フフ・・・果歩ちゃん今日は監視員の係?」
「・・・あ・・・は、はい。」
果歩は秋絵の水着姿に見とれてしまっていた。
・・・すごい・・・秋絵先輩モデルみたい・・・それに・・・
それに秋絵のプロポーションからは、女の果歩でもドキっとしてしまうような、何か成熟した大人の女性の雰囲気のようなものを感じた。
「果歩ちゃん大丈夫?大学休んでたの・・・実は知子ちゃんに食堂で会ったからちょっと聞いちゃったんだけど・・・果歩ちゃん、友哉君との事で悩んでて休んでるって・・・。」
秋絵は心配そうな表情で果歩を見ながら言った。
「え・・・知子ちゃんが・・・?・・・はい・・・あの・・・ちょっと・・・」
その事を聞かれ、果歩の顔が少し曇る。
なんだか、こんな場所でも、友哉の事を少しでも思い出すだけで泣きそうになってしまう。
「そっかぁ・・・私でよかったらいつでも相談のるからね、遠慮なく言ってね。」
「は、はい。ありがとうございます・・・。」
秋絵からそんな風に声を掛けてもらえたのは正直うれしかった。
知子にも励ましてもらったが、自分の中に何か詰まったような思いを、果歩は誰かに吐き出したかったのかもしれない。
尊敬し、憧れている秋絵になら、その詰まったものをすべて曝け出す事ができるような気がした。
そして秋絵なら、そのすべてを受け止めて、いい答えを導きだしてくれる様な気もしたのだ。
「なになに?果歩ちゃん恋の悩みかい?」
「え!?」
突然聞こえた後ろからの男性の声。
いつの間にかすぐ後ろに来ていたその男性の声に聞き覚えのある果歩は少しビックリして後ろに振り向いた。
「な~んだ、じゃあ果歩ちゃん休んでたのは風邪じゃなかったのかぁ」
その声の主は・・・先日同様、ビキニパンツの水着姿の富田だった・・・。
27
「え・・・・あ・・・すみません・・・あの・・・」
「ハハッ!いいのいいの!果歩ちゃんくらいの年頃は恋の悩みは多いもんだしねぇ。」
バイトの欠勤の理由が嘘だった事を正直に謝る果歩に対し、富田はそんな事は気にしてないよ、といった感じの反応を見せた。
「そうかぁ、そういえば果歩ちゃん、彼氏と遠距離恋愛中だったもんなぁ。」
「・・・は、はい・・・」
果歩は一瞬富田の方を見たがすぐに目線を外して下に俯いてしまった。
プールからあがったばかりの、水の滴る富田の逞しい肉体を果歩は直視できない。
チラッと富田の身体を見ただけで、先日の自分の自慰行為を思い出してしまう・・・。
あの時、果歩は自分が富田に抱かれているシーンを想像して行為に及んだのだ。
そう、今目の前にいる富田の身体をオカズにしてオナニーをした。
あの夜の事を思い出すと、恥ずかしくて富田とまともに会話できそうにない。
下を向き顔を赤らめている果歩。
富田はそんな果歩の身体を上から下までジロ~っとイヤらしい細めた目で見つめる。
そして富田は秋絵の方を見ると、なにか目で合図を送った。
秋絵も富田のその合図に小さく頷く。
「ねぇ果歩ちゃん、今日バイト終ったらちょっと飲みにでも行かない?明日は学校もバイトもお休みでしょ?」
「え・・・飲みに・・・ですか・・・?」
「そうそう!こういう時はパァっと楽しくお酒を飲んで、ストレス発散した方がいいわ。ですよね?富田さん。」
秋絵は明るい表情でそう言い、富田のほうを見た。
「ハハッ!そうだよぉ!よし!今日は俺が奢る(おごる)よ!」
明るく振舞う富田と秋絵、果歩は自分を元気付けようとふたりが誘ってくれているのだと感じた。
「でも・・・そんな・・・なんか申し訳ないです・・・。」
しかし果歩は正直そんな気分ではなかった、今日はバイトが終れば自分の部屋でまた一人で泣きたい気分だったのだ。
泣けば少しは気分がスッキリする。
嫌な事を忘れるためのお酒なんて、果歩は今まで経験したことがなかったため、なんだか気が進まなかったし、それで気分が晴れるなんて思えなかった。
「フフ・・・大丈夫よ、富田さんお金だけはたくさん持ってるから。」
「おいおい!お金だけってなんだよぉ!ハハッまぁ2人を奢るくらいの金は財布にあるけどなぁ。」
秋絵の言葉に対し富田は笑いながらそう言った。
「フフ・・・ね?果歩ちゃん、富田さんもそう言ってるし、どうかな?」
もうこうなってしまっては断るわけにはいかない。
「ホントに・・・いいんですか?」
「もちろん!」
富田が景気良くそう答える。
「じゃあ今日はいつもより早めに仕事あがって飲みに行くかぁ!」
「え・・・でも仕事・・・。」
早めにあがると言っても、他のスタッフの方に迷惑が掛かるのではないかと、果歩は心配そうな表情だ。
「いいのいいの!オーナーの特権特権!ハハッ仕事は他の奴に任せればいいから!」
「富田さんホント仕事いいかげんですよねぇ。」
「いいんだよ!じゃあ、果歩ちゃん、いつもより一時間早くあがっていいから、着替えたら、スタッフルームで待ってろよな?」
「は、はい。」
・・・飲み会かぁ・・・
監視台の椅子に座る果歩、今日もこの仕事は相変わらず退屈だ。
ボ~っとプールを眺める。
そんな退屈すぎる時間、時計の針の動きが遅く感じる。
そんな時間を過ごすうちに、いつしか水色のプールを眺めていた果歩の視線は、お客さんに泳ぎ方を指導している富田に向いていた。
『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』
ハっとして果歩は慌てて富田を見ていた視線を外した。
先日富田から言われた言葉を思い出したからだ。
どうしてだろう・・・無意識のうちに富田を見つめてしまっていた。
・・・今は友哉の事で頭がいっぱいなはずなのに・・・
恋・・・じゃない・・・
富田に対する果歩の思い。
それが単に性の対象として富田を見てしまっているという事に、自分で果歩はしっかりとした自覚はなくても、心のどこかでわかっていたのかもしれない。
友哉の事で心が疲れきってしまっているというのに・・・
そんな自分の気持ちに、先日の自慰行為の後と同じような罪悪感を感じる果歩。
富田さんは悪い人じゃない、というか富田さんはいい人だもの・・・
でも、富田を見て、変な気持ちになっている自分が、まるで心の中で浮気をしてしまっているようで、自分で自分を許せなかった。
・・・でも・・・友哉は・・・友哉だって・・・
その日、富田と秋絵が提案してくれた飲み会、メンバーは富田と秋絵と果歩、そしてスタッフの中で特に富田と親しい山井の4人だった。
富田は居酒屋の個室を予約していてくれた。
その居酒屋は料理の値段はそこそこするようだったが、味は申し分なく美味しかった。
そんな美味しい料理だから、自然とみんなお酒も進む。
富田 「さぁさぁ!今日は果歩ちゃんを励ます会なんだから、果歩ちゃん、さぁ飲んで飲んで!」
果歩 「あ・・・はい、ありがとうございます。」
秋絵 「富田さんあんまり果歩ちゃんに飲ませすぎちゃダメですよ。」
山井 「まぁまぁ、いいじゃん、俺果歩ちゃんが酔いつぶれるところ見てみたいし。」
果歩 「そ、そんな・・・だめですよ・・・」
富田主催のこの飲み会、果歩にとっては意外と楽しいものになっていた。
富田と山井の話は面白いものだったし、秋絵が少し暴走気味の2人のブレーキ役になってくれている。
暗く落ち込んでいた果歩の心が、少しずつ晴れていくようだった。
友哉の事も、今は思い出すこともない。
果歩も楽しい気分でお酒が進む。これがアルコールの効果なのか、飲めば飲むほど楽しく感じる。
富田のススメもあり、果歩は今まで経験した事が無い程の速いペースでお酒を口にしていた。
コースで出されていた料理もすべて食べ終り、デザートを口にしていた4人。
腕時計を見た富田が口を開いた。
富田 「さて、そろそろ次!二次会行こうか!」
果歩 「え・・・二次会ですか?」
山井 「そうそう、トミタスポーツの飲み会の二次会はいつも富田さんの部屋でって決まってるんスよね?」
富田 「ハハッそうだよ、俺の部屋なら酒もいっぱいあるしなぁ。」
果歩 「富田さんの部屋・・・ですか・・・?」
秋絵 「果歩ちゃん、私も行くから、二次会も富田さんの部屋でどう?」
果歩 「ん~っと・・・どうしようかな・・・」
秋絵 「明日は休みだし、今日はパァっとやりましょ?ね?」
山井 「そうそう!今日はなんたって果歩ちゃんが主役なんだから。」
確かに明日は休みだし、今はとても楽しい時間を過ごせている。
果歩はもう少しこの時間を味わいたいと感じていた。
果歩 「それじゃ・・・はい・・・いいですか?」
富田 「よ~し!果歩ちゃんからOK出たし、おい山井!タクシー呼べ!」
山井 「了解しましたぁ!」
威勢がいい男ふたり、その顔はニヤっとなんともイヤらしい表情をしていた。
この後の事を考えると2人は笑いを堪えることができなかったのだ・・・。
28
富田 「まぁ、適当なところに座ってくれよな。酒とつまみ持ってくるわ。」
盛り上がった居酒屋での飲み会の後、二次会として4人が向かったのは富田のマンションの部屋だった。
果歩 「わぁ~広い部屋ですねぇ!」
富田が住んでいるマンションは、まさに高級マンションと言っていい。
先日果歩が訪れた秋絵のマンション、その部屋も高級感があり広々としていたが、富田のマンションはそこ以上に豪勢で広い部屋だった。
山井 「ホント、うらやましいよなぁ。こんな所に住めるなんて。」
果歩 「本当ですね・・・。」
果歩は大きなソファに腰を下ろし、キョロキョロと辺りを見渡している。
部屋が広いだけじゃなく、置いてある家具も高級そうなものばかりだ。
富田 「ハハッ!でもまぁ、これはこれで、掃除とか大変なんだぜ。」
秋絵 「フフ・・・富田さんホントに自分で掃除してます?この前はお手伝いさんに頼んでるって言ってませんでした?」
富田 「ハハッ!まいったなぁ、秋絵ちゃん余計な事言わんでくれよぉ!」
やはりトミタグループの社長の息子であり、トミタスポーツのオーナーでもあるのだから経済的に恵まれているのは当然だった。
こんな遊び呆けているような人間が、このような恵まれた生活を送っていることに苛立ちを感じる人も多いはず。
しかしそんな富田の事を、お人好しの果歩は特に嫉んだりする事はなかった。
むしろ果歩の目には、富田はトミタスポーツのオーナーとして立派に働いているように見えていたため、尊敬のような気持ちさえあった。
最初の居酒屋に続き、二次会も富田が用意してくれたおいしいお酒とつまみ、それに富田と山井の面白いトークで盛り上がっていた。
果歩も辛いことがあった反動なのか、これまで飲んだことがないくらいお酒も進み、頬をピンクに染め、富田と山井の話を聞きながら笑っていた。
・・・やっぱり参加してよかった・・・秋絵先輩も富田さんもこうやって元気づけてくれて・・・やさしいなぁ・・・
果歩は心の中で富田や秋絵に感謝した。
今日は帰っても部屋でひとりで泣くだけだったはずが、今はこんなにも楽しい気分でいられるのだから。
今この時間だけは嫌なことも忘れられる。
4人とも大分お酒を飲み終えて、盛り上がっていた時間から少し落ち着いて、みんなソファに座りゆったりとした時間になった時、富田がふいに口を開いた。
富田 「それにしても、大変だよなぁ果歩ちゃんも、遠距離恋愛ってのは。」
果歩 「え・・・あ・・・はい・・・。」
突然富田にそんな事を言われ、友哉の事を思い出してしまい果歩の顔が少し沈む。
秋絵 「富田さん、そんな事言ったら果歩ちゃん嫌な事思い出しちゃうじゃないですかぁ。」
富田 「あ・・・あはは・・・あ~ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったんだけど。」
富田はばつの悪そうな顔で慌てて謝った。
果歩 「い、いいんです・・・別にそんなお気遣いして頂かなくても・・・。」
秋絵 「フフ・・・あ、そうだぁ果歩ちゃん。彼との事、富田さんと山井さんにも相談してみたら?一応私達より恋愛の経験値はあるだろうし。」
山井 「ハハッ!一応じゃなくて、ありまっせ~経験値、特に富田さんは。そうっスよね?」
富田 「おうおう!果歩ちゃん、俺達でよかったら相談にのるぜ?恋愛相談なら馴れたもんだからさ。」
果歩 「・・・で、でも・・・そんな・・・。」
そんな事を言われても、富田達に言ったところで状況が変わるとは思えなかったし、せっかく楽しい飲み会を暗い雰囲気にしてしまうのではと、果歩は思った。
秋絵 「ねぇ果歩ちゃん、今日は果歩ちゃんを励ます会でもあるんだし、ここで思っていること全部言っちゃえばきっと気分も楽になるわよ、ね?富田さん達がしっかり受け止めてくれるわ。そうですよね?富田さん?」
「そうそう!誰にも言わずに悩みを溜め込んじゃうのはよくないぜ?」
確かにそうかもしれない・・・ここで胸に詰まった苦しい思いを吐き出してしまえば少しは楽になれるかもしれない・・・
アルコールが回っていたせいもあるかもしれないが、果歩は誰かに今の自分の状況を擁護してもらいという気持ちになっていた。
こんなかわいそうな自分を慰めてほしいという弱い心に。
富田 「そうかぁ・・・彼氏の電話に女がねぇ・・・。」
山井 「いやぁマジこんな可愛い彼女がいるのに浮気とかありえないっスねぇその彼氏。」
秋絵 「私が知っている限り、友哉君はそんな事するような子には思えないだけどねぇ・・・。すごいマジメな子よね?友哉君って。」
果歩 「・・・・ハイ・・・私もそう思ってたんですけど・・・。」
友哉はそんな人じゃない・・・あの優しくてまじめな友哉がそんな事するはずがなかった・・・
そんな事するはず・・・
しかし、あの電話に出た女性・・・・あの言葉は・・・
『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるから・・・』
山井 「甘い!甘いなぁ~果歩ちゃんと秋絵ちゃんは、男なんてそんな美しい生き物じゃないんだぜ?」
富田 「・・・ハハッ・・・まぁなぁ。」
山井の言葉に富田はごもっともといった感じで頷いている。
山井 「どんだけ真面目そうな男でも溜まるもんは溜まるしねぇ・・・。」
果歩 「え・・・たまる・・・?」
富田 「ハハッ果歩ちゃん、果歩ちゃんだって男がある事をしないと溜まってちゃうモノがある事くらい知ってるだろ?」
果歩 「え・・・そ、それは・・・。」
もちろん、果歩もそれが何なのかは理解できたが、恋愛相談のはずが突然の下の話に、果歩は顔を赤らめる事しかできなかった。
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秋絵 「フフ・・・2人ともなんで急に下ネタなんですか?これは恋愛相談ですよ?」
言葉に詰まって困っていた果歩を見て、秋絵は男ふたりに言った。
富田 「ハハッ果歩ちゃん、恋愛の話と性の話は深く結びついてるんだよ?」
果歩 「・・・そう・・・なんですか・・・?」
果歩は富田の言っている意味がよくわからなかったのか、首を傾げている。
山井 「まぁさ、果歩ちゃん、男はあれが溜まってムラムラしているところに、セクシーな女とかが近づいてきたら、だいたいヤっちゃう可能性が高いんだよねぇ。」
富田 「残念ながら遠距離とかで彼女に会えない奴なんてとくにね。」
果歩 「そ・・・そんなぁ・・・。」
・・・そうなの?・・・男の人ってみんなそうなの・・・?
アルコールのせいで涙脆く(なみだもろく)なっていたのか、果歩は男ふたりの言葉を聞いて目に涙を浮かべていた。
富田 「まぁ果歩ちゃんさ、果歩ちゃんはまだ若いんだし、何事も経験さ。今回の彼氏の事は残念だったけどさ。」
果歩 「・・・・・・・。」
富田 「女の子はいっぱい恋をしたり、いろんな経験して魅力的な大人の女になっていく訳だし。今回のことも、その一部だと思ったほうがいいよ、な?」
果歩 「・・・大人の・・・女性・・・・・・」
秋絵 「そうよ果歩ちゃん、恋も他のいろんな事もたくさん経験した方がいいわ。いい大人の女性になって、友哉君を見返すくらいにならないと。だから今回の事も、いい経験だと思ったほうがいいわ。」
果歩 「・・・でも・・・私は・・・友哉の事が・・・。」
友哉の事をそう簡単に忘れられることなど、今の果歩にはまだできるはずもなかった。
秋絵 「まだ無理して友哉君の事を忘れようとしなくていいの、時間を掛けてゆっくりでいいのよ、ゆっくり・・・。」
果歩 「・・・ハイ・・・。」
果歩は消え入りそうな小さい声で、悲しそうに返事をした。
山井 「そうそう!浮気してた彼氏の事なんてはやく忘れて、新しい幸せを見つけたほうがいいっしょ!」
果歩 「・・・新しい・・・。」
新しい幸せと言われてもピンと来なかった。
これは果歩にとって初めての失恋だったからかもしれない。
失恋の後の対処法を何も知らないのだ。
・・・新しい恋人を見つけるって事・・・?
・・・でも今はとてもそんな気分じゃ・・・
富田 「まぁとりあえず今日はさ、果歩ちゃんが早く彼氏の事を忘れる事ができるように俺達が協力するからさ。ささっ飲んで飲んで。」
そう言いながら富田は果歩の隣に座ると、果歩が使っていたグラスに新たにお酒を注いだ。
果歩 「あっ、富田さん、もう私は・・・。」
もう結構飲んだ後だ。
今日の果歩はすでに今までにないくらいアルコールを摂取してしまっていた。
これ以上飲むのは少し怖い気がする・・・
富田 「いいじゃんいいじゃん、たまには・・・な?この酒うまいんだぜ?」
果歩 「じゃあ・・・後一杯だけ・・・。」
断れない性格の果歩、これだけ進められたら、あと一杯くらいは飲まない訳にはいかない。
ゴク・・・ゴク・・・
富田 「お~いいねぇ!いい飲みっぷりだねぇ!」
グラスを口に運び、半分ヤケになった様に一気に入れられたお酒を飲み干す果歩。
もう今夜は・・・今夜だけは、ここにいる先輩達に甘えてもいいかも・・・と果歩は思い始めていた。
・・・はぁ・・・熱い・・・なんだか体が熱くなってきた・・・
どうやら富田がさっき注いだお酒はアルコール度数がかなり高めのお酒だったらしい。
ちょっとだけ覚めかけていたアルコールが再び効き始め、頬がさらにピンクになっていく果歩。
秋絵 「フフ・・・でもねぇ果歩ちゃん・・・女の子にはまだ果歩ちゃんが知らないような幸せがいっぱいあるのよ。」
富田とは反対側の果歩の隣に座った秋絵がポ~っとアルコールが回ってきている果歩に話しかけた。
果歩 「・・・私がまだ知らない幸せ・・・・ですか・・・?」
ボ~っとする頭で考えてみても秋絵の言っている意味がよくわからなかった果歩。
その時、秋絵は何やら怪しい笑みを浮かべて、果歩に気付かれないようにして山井に目で合図を送った。
山井はその合図を確認すると、ニヤっと笑い口を開いた。
山井 「そういや、彼氏の事は置いておいても、果歩ちゃんは大丈夫なの?」
果歩 「・・・え?・・・大丈夫って何がですか?」
富田 「ハハッ、そうだよなぁ・・・果歩ちゃんも女の子とはいえ、年頃だもんなぁ。」
富田と山井がニヤニヤと笑みを浮かべているが、果歩はその意図する事が何なのかサッパリわからない。
山井 「果歩ちゃんもさ、彼氏と遠距離ってことは、いろいろと溜まってんじゃないのぉ?」
果歩 「えっ?・・・・」
富田 「ずっとしてないんじゃ・・・溜まってるんだろ?果歩ちゃんも。」
果歩 「え?え?・・・な、なに言い出すんですか2人とも・・・。」
男ふたりの質問の意味がわかった果歩は、カァっとピンク色だった顔色を赤色に変えて言った。
というか、こんな質問は普通、男性が女性に面と向かって言うことではないと思った。
秋絵 「フフ・・・ちょっと2人とも質問がストレートすぎますよ。」
困り果てる果歩をフォローするように秋絵が富田と山井に言った。
山井 「ハハッごめんごめん・・・でもさ、実際問題あるだろ?果歩ちゃんだってムラムラする事。」
果歩 「・・・そ・・・それは・・・。」
正直者で嘘をつけない性格の果歩は、そんな事ありませんとは言えずに言葉に詰まってしまう。
富田 「清純で可愛い果歩ちゃんも人間だもんなぁ・・・果歩ちゃんがそういう時どうやってムラムラを処理してんのか興味あるわぁ!」
果歩 「と・・・富田さん・・・・。」
あまりに直接的な富田の言葉にもう恥ずかしくてしかたない様子の果歩。
いや恥ずかしいと言うより、もうこれはセクハラのようなものだ。
しかしここで、今まで男ふたりの下ネタから果歩を守ってくれていた秋絵が信じられない言葉を口にする。
秋絵 「フフ・・・果歩ちゃん・・・果歩ちゃんはムラムラしたらバイブオナニーで処理してるんだよねぇ?」
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果歩 「あっ秋絵先輩!!?」
果歩は自分の耳を疑った。
秋絵が今言った事、あの事は心を許した女の子同士の秘密だったはず。
秘密だったはずというか、常識的に暗黙の了解で秘密のはず。
山井 「うっわ~マジ!?果歩ちゃんバイブ使ってんの!?」
富田 「ハハッていうか、果歩ちゃんがオナっちゃてるって事実だけでなんかすごいな。」
果歩 「え?・・・あ・・・あ・・・あの・・・・。」
もう恥ずかしいどころではない。
それにアルコールで意識ボーっとしているのもあり、思考もうまく回らない。
パニック状態の果歩は富田と山井に何を言われても返す言葉が見つからなかった。
秋絵 「これだけ可愛い果歩ちゃんも人の子だものね、いいのよ果歩ちゃん、それぐらいの事は女の子でもほとんどの子はしてるわ。」
果歩 「秋絵先輩・・・でも・・・どうして・・・?」
・・・どうして富田さんと山井さんの前でそんな事・・・
秋絵 「フフ・・・ごめんね、果歩ちゃん。でもね、果歩ちゃんが大人の女性に一歩近づくにはこういう勉強も必要なのよ?」
果歩 「・・・秋絵先輩・・・よく言ってる意味が・・・勉強って・・・?」
秋絵 「だからね、女の子だってエッチな勉強は少しはしないとね。男の子が逃げてっちゃうのよ。」
果歩 「・・・でも・・・私は・・・。」
秋絵 「友哉君がなぜ浮気しちゃったのかはわからないけど、これからのために果歩ちゃんはもう少し知識と経験を増やしておいた方がいいと思うわよ?」
果歩 「そんな事・・・言われても・・・。」
確かに同年代の周りの子と比べれば果歩はそういった事の知識も経験も少なかった。
・・・でも・・・だからって・・・私がそんなだから友哉は他の女の子と?・・・そんな・・・・
秋絵 「幸いここにいるお二人さんは、知識も経験も豊富だしね。」
富田 「よ~し果歩ちゃん!俺達で良かったらいくらでも協力するぜ?なぁ山井?」
山井 「もちろんっスよ!果歩ちゃんのためなら何でもするって。」
そう言って果歩に詰め寄ってくる男ふたり。
果歩 「えっ!?・・・ちょ、ちょっと!待ってください!」
果歩は反射的に逃げるようにソファの背もたれの方に身体を引いた。
話が想像もしてなかったあらぬ方向へ進み始めて、果歩の頭の中はさらにパニック状態になっていた。
果歩 「あの・・・なんか・・・話が変な方向にいってません?」
秋絵 「フフ・・・果歩ちゃん、もしかして果歩ちゃんは友哉君と付き合っていてもこういった事は全部受身だったんじゃない?」
果歩 「・・・それは・・・・。」
そう言われれば、友哉との交わり時はすべて友哉に任せて、友哉の言う通りにしていただけだった。
しかしそれは、果歩は知識も経験もなく、恥ずかしがり屋でもあったため仕方がなかった事かもしれない。
富田 「ハハッなるほどね、果歩ちゃんは彼氏にまったく自分の気持ちを解放していなかったって事だな?それじゃ彼氏さんがちょっと気の毒だなぁ。」
果歩 「・・・・解放って言われても・・・。」
なんだかこれでは果歩が性に疎いせいで友哉が浮気したんだと言われているようだ。
山井 「男ってのは相手に気持ちよくなってもらってなんぼだからなぁ・・・果歩ちゃんが気持ちを解放してくれなかったら・・・彼氏の気持ちも盛り上がらないよなぁ。」
果歩 「・・・そんな事言われても・・・。」
確かに友哉の前で果歩はそんなに乱れた姿を見せた事はない。
秋絵にもらったバイブレーターでのオナニー。
あの時のような興奮は友哉との性交で感じた事はない。
・・・でも、それって私が悪いの・・・?
友哉にまかせっきりだったから・・・?
秋絵 「フフ・・・果歩ちゃんは友哉君にフェラチオもしてあげた事ないんだよね?」
果歩 「・・・ハイ・・・。」
フェラチオ、男性器を口に含んだり舌で刺激したりする行為。
果歩は知識としては知っていても実際に友哉にしてあげた事はなかった。
それは友哉から頼まれたこともなかったし、もちろん恥ずかしがりやの果歩から積極的に行為に及ぶことなどあるはずがなかった。
しかし、果歩の本心では、フェラチオに興味がないわけではなかった。
それどころか先日、果歩は男根の形を模ったバイブレーターをまるでフェラチオをするように口に含んで舐めていたのだから。
山井 「え~マジ?果歩ちゃん彼氏にフェラしてあげたことないの!?あ~そりゃ彼氏かわいそうだわぁ!」
富田 「今時フェラチオしないカップルなんて珍しいよなぁ?」
果歩 「・・・そ・・・そうなんですか・・・。」
なんだかさっきから果歩は自分ばかり責められているようで、今にも泣きそうであった。
しかしその一方で、富田達が言うとおり、性に消極的な自分に友哉は不満を抱いていたのかもしれない、と思うようになっていた。
秋絵 「フフ・・・果歩ちゃん、じゃあ果歩ちゃんのこれからの恋愛生活のためにも、ちょっとここで練習してみない?」
果歩 「練習・・・ですか・・・?」
秋絵 「そう、フェラチオの練習をね。」
怪しい笑みを浮かべながら言われた秋絵の言葉に、アルコールでボ~っとした頭で少し考え、その意味を理解した時、果歩の身体は熱くなったのだった・・・。
出典 ・メンメンの官能小説
http://menmen1106.blog130.fc2.com/