其の一 野良千ずり
春さき、野辺へぶらつきゐるうち、蓬つみ又は田芹ひきにと、十三四の処女ども、五人、三人足もそらにかけ歩くさまを見れば、何となくゆかしく思はれる。かかる折にも、一物をもちあつかひ堪えがたき熱をさまさんとする者、若き人には多かるべし。かやうなる時、快くやらんと思はヾ、さりげなき様して、処女のそばへ行き、我も同じやうに草つむふりにて、子供等の挙動をうかヾふべし。処女達はつみ草に余念なければ、我が股ぐらをこひをる人ありとは知らず、溝の岸などに、ほしと思ふ田芹見出したる嬉しさに、股をひろげてつみをるものゆゑ。ゆもぢのはしより、むっくりとまんじゅう二ツならべし如き土器をあらはすことまヽあり。此の時、男は我が右の手をふところに入れ、へのこ十分におやかし、十分気のゆくやうになしをき、さて、その女の子の前に行き、我も芹をさがすとみせて、股ぐらをのぞき、ふんどしの上よりサッサッとかくべし。大勢の子供みてゐながら、気のつくもの一人もなし。また神社仏閣の内には、十三四の子、むすめ、又は子守などうちむれゐて、さまさまの遊びごとをなしをるものゆゑ、右の法にならひ、心を用ふれば、ぼヾをみる事たやすく、千摺をかくことは造作もない事なり。編者、たびたび実験して覚えあることなり。
(『相対会研究報告』「千摺考」より)