ジャーナリスト魂の中学生のてん末報告


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中学3年の1学期にクラスでは目立たない存在のA子と、隣のクラスで目立たない存在のH志がつきあっているという噂が立った。
2人ともスポーツ・勉強も普通で、見かけも普通、とにかく存在感の薄さが特徴だったので驚いた。
しかも2人が家庭科室でセックスしているという話まで飛び出した。
これはH志と同じクラスのK美の目撃談で、A子とH志が放課後にあたりを気にしながら家庭科室に入ったのを見たというだけで、現場を見たとか声を聞いたというほどのものではなかった。
新聞部だった俺のジャーナリスト魂に火がついた。
情報提供者のK美とは仲が良かったので、彼女とその親友であるM理、それに俺の相棒であるN村を誘って特別取材班を編成し、家庭科室を事前に入念に調べた。
やっているとすれば家庭科室の奥にある準備室で、そこには入り口はひとつしかない。
だが、窓があった。
そこの鍵を事前に外しておけばよいだけだ。
その翌日だった。2人が動いた。
K美が俺に知らせてきた。
既に家庭科準備室の窓の外にはマイクとビデオカメラを運び終えていたので、俺とN村に女子2人は窓の下に向かった。
これも既に用意していた椅子を使って、窓にとりついたN村が聞き耳を立てた。
そして俺たちに向かってVサイン。
すぐにビデオカメラと集音のためのマイクをN村に渡した。
N村は窓を静かに開けて撮影と録音を始めた。
その後20分、撮影がおわった。
椅子などを撤収し、俺たちは俺の家に急いだ。
はたして局部こそ写っていなかったが、二人のセックスビデオは綺麗に撮影できていた。
繰り返し見て興奮するやら大笑いするやらで、時間が過ぎた。
問題はこのビデオをどう扱うかだった。
K美は悪質で2人に売ろうという。
M理はダビングして売ろうという。
女子はえげつないなと思った。
N村はこれを見せて、A子にやらせてもらおうと言ったが、女子から猛反発を受けた。
俺は黙って職員室に置いておこうという提案をした。
結論はどれでもなく、有志を募って学校の映像機器を使って上映会をするというとんでもないものになった。
映像全体をぼかした状態なら誰かはわからないだろうということで、ビデオは教室に置いてあったという筋書きにした。
翌日にビデオ上映会を口コミで宣伝し、翌々日には30名くらいが視聴覚教室に集まった。
先生が来ないかの監視役を俺がやり、N村がセッティングして上映した。
観客の中にはH志もいたが、A子はいなかった。
始まった。会場がどよめいた。
「これ家庭科室じゃないか?」
「うそだろ!」
という声が上がり始め、H志が部屋を出て行ったのを見て、会場は
「おおーっ!」
と盛り上がり、男が彼であることが露見した。
そうなると相手の女子は誰かという話題になり、
「巻き戻せ」
とか
「そこでストップ」
という声がかかり、あろうことか、なぜか相手の女子は「これK美じゃん」という声が上がった。K美は
「バカ、わたしだったら、ここにいるわけないでしょ!」
と怒り、 K美説を唱えた奴も
「そりゃそうだな」
と納得した。
ここでも話し合いになり、このビデオをどうするかという議論が重ねられた。
その結果は職員室に届けようということになった。
だが俺たちが撮影していたのを知っている奴がいないとも限らないということに気付いたので、H志を呼び出して、希望を訊くことになった。
翌週月曜日にH志を呼び出すことになったが、こういう話は漏れるもので、凄いビデオがあるという話が学校中に広まり、結局ビデオを先生に渡して、俺たち4人はこっぴどく叱られたが、ことがことだけに内々で処理することになって、完全に口を噤むことを条件に許してもらえた。
H志とA子にはおとがめなしということになった。
だが俺たちは悪かった。
N村はこういうときのためにしっかりダビングしたビデオを用意していて、クラスの殆どの奴にレンタルして、一人あたり100円だったから、数千円の儲けになった。
貸し出し用のビデオがさらにダビングされた可能性もあるので、今このビデオがどの範囲に出回っているかは不明だ。
しかも画像は鮮明。
今でも同窓会でこのビデオの話題になるが、A子はもう吹っ切れたらしく、
「撮られているのなら、もっと演技をすればよかった」
などと言っていたらしい。

 

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