百年の女


2文字数:439

 朝コンビニで買うコーヒーは、缶のコーヒーから豆をひいて入れるタイプのものに変わった。
 「おはようございます」
 隣でカップを装填したのは、昨日職場を退職した直属の上司だった。
 作業着を着ていたので、今日から早速どこかの仕事に向かうところなのか。
 昨日は一家で職場にあいさつに来られた。
 「胃を切っちゃってから調子が出なくてねえ」
 その時はじめてお目にかかった奥さんのるみさんは、職場の皆に買ってきた缶コーヒーを配っていた。
 
 「少女が大人になる期間はどのくらいでしょうか」
 結婚式の余興にしてはきわどいものがあるクイズ。底辺と名指しされても仕方のないレベルだった。
 「ひとつきです」
 寒っ。
 しかし、ちょうどひと月前に、〇〇山の展望台で、車の中で婚前交渉に及んだ上司の話では、るみさんは初めてではなかった。

 遠い記憶だった。
 今コーヒーを配っているるみさんはしかしワンオーナー感半端ない貞淑な人妻そのものだった。
 

 

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