朝コンビニで買うコーヒーは、缶のコーヒーから豆をひいて入れるタイプのものに変わった。
「おはようございます」
隣でカップを装填したのは、昨日職場を退職した直属の上司だった。
作業着を着ていたので、今日から早速どこかの仕事に向かうところなのか。
昨日は一家で職場にあいさつに来られた。
「胃を切っちゃってから調子が出なくてねえ」
その時はじめてお目にかかった奥さんのるみさんは、職場の皆に買ってきた缶コーヒーを配っていた。
「少女が大人になる期間はどのくらいでしょうか」
結婚式の余興にしてはきわどいものがあるクイズ。底辺と名指しされても仕方のないレベルだった。
「ひとつきです」
寒っ。
しかし、ちょうどひと月前に、〇〇山の展望台で、車の中で婚前交渉に及んだ上司の話では、るみさんは初めてではなかった。
遠い記憶だった。
今コーヒーを配っているるみさんはしかしワンオーナー感半端ない貞淑な人妻そのものだった。