「みんな、ちょっと注目してくれる!いいものを見せてあげるわ」
担任の女教師、優美子が言った。
放課後の、西日がさす教室の一場面である。その日、掃除当番 に当たっていた、われわれの班五人と、意味もなく教室で雑談していた六~七人の女子生徒だけが、 そのとき、その場所にいた。
女教師の優美子につづいて・・・・・・というよりも、むしろ彼女に引きたてられるようにして、 教室の中へ入ってきたのは、隣のクラスの男子生徒二人。いずれも素行にやや問題のある腕白小僧 として、学年全体に顔を知られる存在だった。
その二人が、今日はやけに落ち着きがない。いや、落ち着かないのはいつものことだが、妙に 緊張している。顔色が、白い。話す言葉が、せかせかとしている。そんな季節ではないというのに、 全身に汗をかいている。
おれたち五年三組の生徒は、その二人が、またなにかとんでもない悪さをしでかして、罰を受ける のだと直感した。だがそれにしても、なぜ彼らはこの教室へわざわざ連れて来られたのだろう? 優美子先生の言う、「いいもの」とはいったい何なのか?その場に居合わせた十人ほどの生徒たちが、 女教師の次の言葉に期待した。
優美子先生は、二人の腕白小僧を教壇の前にならべると、普段の授業では一度も見せたことのない 険しい表情で、
「それじゃ、約束通り、やってもらうわよ。ここにいるみんなの前でね」
と、言った。
二人の腕白は、身をよじったり、女教師の顔を哀願するように眺めたり、少しの間躊躇していたが、 優美子先生がもう一声、
「ほらッ、どうしたのよ。先生と約束したでしょ。いまさら何を恥ずかしがっているのよ。さっさとしなさい」
言うと、二人のうち背の低い坊主頭の少年が、はいていた白い体操着の短ズボンを、ズルリ、と その下に着けていたパンツまでいっしょに、いきなり脱ぎ捨てたのである。
予想外の光景を目にした女子生徒たちが、みな一様に悲鳴をあげた。
もう一人のやせた少年は、そう簡単には覚悟ができないらしく、隣の相棒がみんなの前に下半身を さらした後も、まだモジモジしていた。
すると、優美子先生が、さらに激しい叱責の言葉を放った。
「こらッ!マサノリ君は脱いだのに、なんで脱げないの。いいわ、それじゃ、先生が脱がしてあげる」
そう言って、彼女は少年のズボンに手をのばした。
よせっ!と叫んで、少年は女教師の手をはじく。怒った女教師はただちに命令を発して、
「あんたたち、ちょっと、手伝ってちょうだい!」
その命令に従順に応じた幾人かの生徒が、わっ、と一人の少年の周りに群がり、たちまち彼のズボン と、パンツの両方を引きずり下ろした。
腕白少年はそろって直立を命じられ、それから五分ほど、剥き出しの下半身をみんなから観賞された。
おれと、他に二人いた男子生徒は、気恥ずかしくてその場にいたたまれなかったが、女の子たちは全員 大はしゃぎで、この『お仕置き』を楽しんだ。やがて、やせた方の少年が泣き出し、それにつられて坊主頭 も泣いたところで、この会はおひらきとなった。
学年全体に『スカートめくり』が大流行し、子供たちはそれを一種の“鬼ごっこ”としてやって いるからいいようなものの、さすがに教員会議で問題となって、やがて全面禁止となったのは、 それより一週間ほど前のことである。
万が一、この禁をやぶった者は、それ相応の罰を与える。具体的には―――みんなが見ている前で パンツを脱がして、女の子と同じ恥ずかしさを味わわせる―――と、優美子先生は言っていた。
だが、まさか本当に実行されるとは思わなかった。妙齢の優美子先生の口から、「パンツ脱がし云々」 を聞いたとき、子供ながらにゾクゾクとしたことを覚えている。
言っておくけど、この話、本当にあったことですよ。もう二十年以上前の話になるが・・・・・・。 きっと今だったら、問題になることが確実な、教師による『体罰』のお話でした。