白石聡史は一度、目を覚ましたが、今日から夏休みということを思い出し、朝寝坊しようと再び眠りについた。
中学三年の聡史は、朝が苦手だった。
そんな聡史を、母親の鏡子が起こしにやって来た。
「聡史、いくら夏休みでも、けじめはつけなさい」
母親の鏡子は厳しい口調で息子を叱り、部屋のカーテンをさっと開けた。
「うんん、 、お母さん、 、まだ眠いよ」
「朝ご飯は一緒に食べる約束でしょ、早く起きなさい」
聡史は眠い目をこすりながら、部屋から出て行く母親の鏡子のうしろ姿を見つめた。
(お母さんとの約束だけは、破るわけにはいかない)
聡史が一階に降りて行くと、廊下に漂う挽きたてのコーヒーの香りと共に、食堂から姉の声が聞こえてきた。
「やっと今日、内容のある話が聞けそうなの」
聡史の姉、真紀は大手新聞社の社会部の記者だった。
今年、四年制大学を卒業し、この春、なったばかりの新米記者だった。
「なかなか話をしてくれなかったけど、やっと今日、同じクラスの男の子が、いじめのあった場所へ案内してくれるの」
娘の真紀の話を聞きながら、鏡子は優しい目もとに憂いを滲ませた。
「本当に悲しいことだわ、まだ中学生の子供が、いじめを苦にして自らの命を絶ってしまうなんて」
「私もそう思うわ、 、卑怯で、陰湿ないじめは、絶対に許せない」
真紀は、記者となって初めて任された仕事の緊張感よりも、いじめという理不尽な行為への憤りで、熱い血をたぎらせていた。
「お母さん、私、一体どんないじめがあったのかはっきりさせたいの、事実をありのままに報道して、同世代の子供たちや、その親たちにもっといじめについて真剣に考えてもらいたいの」
鏡子と真紀の話しは、先月の初めに、隣町の中学生がいじめによって自殺に追い込まれた事件のことだった。
自殺したのは、学校は違うが聡史と同じ中学三年の少年だった。
「頑張りなさい真紀、 その男の子が話をしてくれる気になったのも、あなたの熱意が通じたのよ」
「きっとそうだと思うわ、私、本当に一生懸命だったの」
真紀は知らなかった。
今日、会うはずの少年は、真紀の真摯な情熱に心を動かされたのではなかった。
その少年は、真紀の体を狙っていた。
恐ろしい罠があるとも知らず、これから真紀は少年のもとへ出かけて行こうとしていた。
「一度、社に顔を出さなくてはいけないから、もう出かけるわ、お母さん」
「そう、しっかり頑張りなさい」
「はい、行ってきます」
母と姉の真剣な雰囲気に気後れした聡史は、食堂へ入るのをためらい入口で立っていた。
出かけようとした真紀が、眠そうに瞼を腫らした弟の聡史に微笑みかけた。
「あら聡史、おはよう」
「あ、おはよう、姉さん」
少し見上げるようにして、聡史は姉に朝の挨拶を返した。
聡史もけっして身長は低くなかったが、真紀のほうがいくぶん高かった。
「もう、まだ寝てるみたいじゃないの、しっかりしなさい、
お父さんが帰ってくるまで、この家の中で男はあなただけなのよ」
「うん、わかってる」
頼りない声で返事をしながら、聡史はうつむいた。
姉に真正面から見つめられると、いつも聡史は自分から顔を伏せた。
それは光り輝く、眩しいものを直視できないことに似ていた。
「じゃ、行ってくるわね」
さっと身をひるがえして玄関に向かう真紀が、爽やかな化粧品の香りを残していった。
聡史は、ゆっくり、深くその香りを吸い込んだ。
(ああ、姉さん)
聡史は思春期を迎えた頃から、真紀を性の対象として見るようになっていた。
互いに少し年齢が離れているせいもあり、女性として美しく成熟しつつある真紀を、
少年の聡史は姉としてではなく、一人の女性として見ていた。
マスターベーションを覚えから、
聡史はペニスをしごく時、姉の真紀を淫らな想像に登場させた。
今では、ただ単に想像の中だけでは抑えられないほどに、姉への想いが募っていた。
「聡史、朝ご飯、早く食べなさい」
鏡子に呼びかけられるまで、
聡史は化粧品の香りを惜しむように、何度も息を吸い込みながら廊下に立っていた。
姉への強い思慕と性欲で、少し赤くなっている顔を母親の鏡子に悟られないように、
聡史は顔を伏せて食卓についくと、いつものように緩慢な動作で食事を始めた。
卵焼きを口の中に入れてから飲み込むまで、聡史はずいぶんと時間を費やした。
そんな息子を母親の鏡子は微笑みながら見守っていた。
「そうだわ聡史、昨日の夜、お父さんから電話があって、
やっぱりあと二ヶ月ほどかかるらしいわ」
聡史の父親は電気メーカーの技術者で、海外へ長期出張していた。
「えっ、二ヶ月も」
「あら聡史、あなた真紀に言われたこと気にしてるの、
いいのよそんなこと、私は、聡史のおっとりした、大らかな性格は大好きなのよ、
ただ時間にルーズなところは直しなさい」
人として生きていくための約束事には厳しいが、他のことには寛容で優しい母だった。
鏡子は、家庭に問題を抱えた女性達を支援する団体、『つばさの会』の主宰者をしていた。中学生の聡史でも、仕事と家庭を両立させるのがどれだけ大変なことかよく分かっていた。一つの組織の責任者として、また家庭の主婦として、毎日とても忙しいはずなのに、
それでも疲れた顔一つ見せない母親の鏡子を、聡史は尊敬していた。
立派な母親を自慢に思い、その息子であることが誇らしかった。
「私もう出かけるけど、今日、塾はお昼からだったわよね」
「うん、それまで予習しようと思うんだ」
「お昼ご飯はチャーハンが冷蔵庫に入ってるから、温めて食べなさい」
母が出かけて行き、広い家に一人になった聡史は、
かねてから密かに思い巡らしていたことを、今日こそ実行しようと思っていた。
聡史は、姉の部屋に忍び込むつもりでいた。
白石真紀は、上司に必要な報告を済ませ、約束した少年と会うため新聞社をあとにした。
半袖の白いシャツに洗いざらしのジーンズ姿の真紀は、
女性にしてはかなり広めの歩幅で、道行く人を追い越し、JRの駅に向かった。
(今日の取材、必ず成功させないと)
自殺した少年の苦しみや悲しみを思うと、真紀は目頭が熱くなった。
あのいじめは、暴力をともなう陰湿なものだったと噂されているが、具体的な内容は、
いまだに不明だった。
警察も傷害事件として調べているようだったが、硬く口を閉ざす生徒達や、
なんとか事件を穏便に終らせようとする学校側の鈍い対応に、捜査は進んでいなかった。
電車に乗った真紀は、取材の要点をまとめたメモ帳を取り出した時、
まとわりつくような男の視線に気がついた。
よくある事だった。
いつものように真紀は、その視線をまったく無視した。
真紀のななめ前に座っているその営業マンは、広げたスポーツ新聞を読むふりをして、
彼女に見とれていた。
(いい女だ)
ラッシュの時間帯は過ぎていたが、車両のシートは埋まり、数人の乗客がつり革につかまっていた。
その中で、きちんと両膝を揃えてシートに座った真紀は手帳にペンを走らせていた。
陰影のはっきりした、整った顔立ちの彼女は、見る者にクールな印象を与えた。
真紀を見つめる営業マンの男根は、なかば勃起していた。
(くそっ、あんな女とセックスできる男が羨ましいぜ)
ショートカットの髪型は、見るからに勝気そうな真紀をことさら気の強い女に見せていた。
その営業マンにとって、真紀のような女の裸を想像し、彼女が心を許した恋人の前で股を広げる姿を想像するのは、ことのほか刺激的だった。
そして同時に、そんな真紀の姿を実際に目にすることのできる幸運な男に嫉妬した。
途中の駅で、
お腹の膨らみが目立ち始めた妊婦が、車内に乗り込んできた。
シートが埋まっている車両の中で、真紀はすっと立ち上がると、その妊婦に席を譲った。
さりげない自然な振る舞いだったが、
そういう行為は意外と周囲の視線を浴びる。
妊娠した女性が感謝で頭を下げると、つかのま柔らかく和んだ表情を真紀は見せた。
周囲の好奇の目を気にもせず、何事もなかったようにドアのそばに立つと、彼女はふたたび手帳を開いた。
真紀がシートから立ち上がったことで、営業マンは彼女の全身を堪能することができた。
真紀の白いシャツをひかえめに盛り上げる胸元や、細くしなやかなウエスト、
そしてジーンズをかたどる引き締ったヒップラインから一直線に伸びる長い足の有様を、
それこそ舐めるように見つめた。
(犯りたい)
全体的に硬さのある体つきからは性的な匂いよりも、人としての清潔感が強く感じられた。
営業マンは、そういう真紀の清潔さに、歪んだ欲望をかりたてられた。
(犯りたい、こういう女を涙が枯れるまで、責めてみたい)
電車から降りた真紀の後姿が窓から小さくなっていくまで、
その営業マンは首をひねって、いつまでも見つめ続けた。
中学校の正門には三人の少年達が待っていた。
「あ、白石さん、おはようございます」
野坂健一の少年らしい、明るい挨拶だった。
「おはよう野坂君、ちょっと待たせたみたいね」
「いえ、僕達が早く来すぎたんです、
それで今日は、友達を二人連れてきました、彼が日下で、こっちが多田です」
ぺこりと頭を下げるその二人は、あどけなさの残る大人しそうな少年だった。
そんな少年達に、真紀は微笑みかけた。
「夏休みなのにわざわざ来てくれて、みんなありがとう」
「白石さんがいろいろ詳しい話を聞きたいんじゃないかと思いまして、
なんとか説得して、二人に来てもらいました」
三人の少年達の中でいちばん背の低い野坂健一は、礼儀正しい言葉使いをした。
しかしその礼儀正しさとは裏腹に健一は、紹介した二人の少年に名刺を渡す真紀へ、
ちらっと、子供とは思えない狡猾そうな目を向けた。
もし真紀が、
健一のずる賢い目の光に気づいていれば、哀しい不幸は避けられたかも知れない。
「それじゃ白石さん、いじめのあった場所にご案内します」
真紀と野坂健一が並んで歩き、その後ろから日下と多田が続いた。
白いシャツから薄っすらと透けて見えるブラジャーのラインや、
硬く丸みをおびたジーンズのヒップラインを、後の少年達がじっと見つめていることを、
真紀は知るはずもなかった。
今日の取材を快く了解してくれた三人の少年たちを、真紀は信じきっていた。
このいじめに関する取材は、真紀にとって隣町の中学校ということもあり、
また誠実さと情熱をかわれて、社会部の記者として初めて一人で任された仕事だった。
これまで毎日のように学校を訪れても、生徒や教師から話を聞くことは出来なかった。
誰もが、その話題を避けていた。
ところが三日前、ある男子生徒が取材に応じてもいいと言ってきた。
その生徒が、野坂健一だった。
その頃、
白石聡史は、姉の部屋に忍び込んでいた。
目的は、真紀の下着だった。
思春期のさなかにある聡史は、
特に最近、日増しに強くなっていく自分の性欲を抑えられなくなっていた。
マスターベーションをする時、思い浮かべるのはいつも姉の真紀だった。
(姉さん、僕の綺麗な姉さん)
実の姉を性の対象とすることに、
強い罪悪感でためらいもした聡史だったが、そのうしろめたさが逆に興奮をよんだ。
姉の顔を思い浮かべ、長身のすらりとした体を想像すると、ペニスが固く勃起した。
だが、そうして射精した後は、きまって激しい後悔と自己嫌悪さいなまれた。
聡史は自分が異常な性癖の持ち主ではないかと悩んだ。
『もうやめよう、こんなのいけないことだ』と、
たとえ想像の中でも、もう二度と姉を汚すようなことはすまいと固く心に誓っても、
次の日にはもう我慢できなくなり、部屋にこもってをマスターベーションを繰り返した。
抑えられない姉への想いに悶々とする聡史も、真紀の着替えや入浴の場面をのぞいたり、
まして直接、真紀の体に触れたりする度胸はまったく無かった。
(ああ、せめて姉さんのパンティーが欲しい)
聡史は、姉の分身となる物が欲しかった。
姉の肌に触れていた物、
しかも、最も秘めた部分に密着していた下着を、聡史は切望した。
姉の下着を見てみたい、触ってみたい、そういう思いに聡史はとり憑かれていった。
以前、
臆病で気弱な聡史がそれこそ決死の思いで脱衣所の籠の中を探ってみたが、
目的の物を手にすることは出来なかった。
白石家の女性たちは、自分の下着はその日のうちに洗うことを習慣としていた。
丁寧に洗われ、乾燥機でもとの状態に戻った下着は、そのままタンスの中に収められた。
それは同居する男たちの目を気にしているという訳ではなく、
常に清潔な身だしなみを心がけている鏡子や真紀の習慣だった。
真紀の下着を見たい、触れたいという欲求を抑えきれなくなった聡史は、
夏休みの初日、その思いを真紀の部屋に忍び込むことによって果たそうとしていた。
真紀と三人の少年たちが歩いていた。
中学校への通りを一つ隔てると、辺りはまったく違う雰囲気になった。
車の走る音も聞こえなくなり、急に静かになった。
そこには、閉鎖され、取り壊しの計画すら頓挫している古い繊維工場があった。
工場の暗い色をした鉄筋の壁はひび割れ、錆びが浮き出てた部分は崩れ落ち、
その廃墟のような建造物の周囲には草木もなく、蝉の鳴き声すら聞えてこない。
中学校からほんの少し歩いただけなのに、辺りには嘘のように人影がなかった。
「あの倉庫なんですけど」
野坂健一が指差す倉庫は、学校の体育館ほどの大きさだった。
繊維産業が好況な時期には、出荷待ちの商品がぎっしり保管されていたはずの倉庫も、
工場本体と同様に、長い年月に耐え切れず鉄筋の壁はボロボロに腐っているようだった。
高い所にある窓ガラスは石でも投げられたのか、ほとんどすべて割れていた。
白石家では部屋のドアに、鍵は付けないことにしていた。
家族間のプライバシーは、お互いの意志で尊重しあうことになっていた。
聡史は、家族の信頼を裏切る自分の行為を恥じてはいたが、
どうしようもなくこみ上げてくる真紀への想いには勝てなかった。
(姉さん、僕の姉さん)
きちんとカーテンが閉めてある真紀の部屋は暗かった。
夏とはいえ午前中の部屋の空気はひんやりとして、微かに化粧品の香りがしていた。
カーテンはそのままにして明かりをつけると、聡史はゆっくりと部屋を見回した。
英語の解らないところを聞きに、何度か来たことのある姉の部屋だった。
本棚には整然と国内外の本が並び、
ベッドの上には紺色をした夏用の掛け布団が、丁寧に折りたたまれていた。
ノートパソコンが置かれた机の上は整理が行き届いており、フローリングの床には
塵一つ落ちていなかった。
聡史はベッドにうつ伏せになり、真紀の柔らかい枕に顔をうずめて息を吸い込んだ。
その枕には、真紀とすれ違うとき、いつも微かに薫る甘い香りが凝縮されていた。
聡史は、『姉さん』とつぶやきながら、
ズボンの中で既に勃起しているペニスをベッドに擦りつけた。
そのまま射精してしまいたい衝動に駆られたが、なんとか我慢すると、
聡史はベットから降りて目的の物を探し始めた。
洋服ダンスの下から二段目の引き出しに、求めているものがあった。
その中の右側には、
たぶん専用のケースなのか、細かく幾つもに仕切られた四角い枠の中に、
丁寧に折りたたまれた真紀のショーツが整然と収められていた。
左側には、ブラジャーが綺麗に並べられていた。
ほとんどの下着の色は白だった。
すべてを手にとって形や感触を確かめたかったが、そんなことをすれば几帳面な姉に、
必ず悟られてしまうと思った聡史は、奥にある白いショーツとブラジャーを抜き取った。
(こんな寂しい所でいじめられていたなんて)
自殺した少年のことを思うと、真紀は胸が痛んだ。
自らの命を絶つ決心をするまでに、どれほど辛い目に遭わされたのか。
それを思うと、真紀は思わず目が潤んでしまった。
古い倉庫の扉に野坂健一が手をかけ、
小柄な体格の割に太い腕で、鉄製の大きなスライド扉を横に引いた。
健一が扉を横に引くだびに錆びたレールが、耳障りなほどの高音でキイキイときしみ、
やっと人が入れる幅に開いた入口から、真紀が先頭になって進んだ。
倉庫の中は、ガラスの割れた高い窓から、幾すじもの光の束が射しこみ、照明など必要ないほどに明るかった。
(あれは、何かしら)
湿ったカビの匂いがする、がらんとした広い空間の一角に、
高い窓から射しこむ光の中で、何か白い物がかすんで見えた。
その白く見える物は、
野坂健一が今朝はやく、あらかじめ用意していた物だった。
そんなことなど知らない真紀は、どんないじめが行なわれていたのか、
その様子を少年たちから聞きながら、そのぼんやり白く見える物に向かって足を進めた。
(これが姉さんの、パンティーとブラジャー)
聡史はそれらを広げ、顔をうめた。
ショーツを裏返し、姉の秘所に密着していた部分には、しつこく鼻を近づけた。
綺麗に洗ってある下着からは、
なんの淫靡な匂いも嗅ぎとることは出来なかったが、それでも聡史は鼻をこすり付けた。
(姉さん、姉さんっ)
聡史はズボンとブリーフを一緒に下げ、勃起しているペニスにショーツを巻きつけた。
聡史は姉のショーツに射精した。
若い少年の性を満足させた聡史は、冷静に枕の位置やベッドのシーツのしわを直して、
ブラジャーは元通りにタンスに戻した。
広い倉庫の片隅で真紀が目にした物は、白いシーツに包まれた敷布団だった。
その敷布団は、むき出しのコンクリートの床に無造作に置かれていた。
しかもその脇には、最新型のビデオカメラが三脚に据えられていた。
(どうして、 、こんな所に)
後ろからついて来ていた少年達の話声が、ぴたっとやんだ。
(まさか)
はっとして振りかえった真紀に、少年達は異様に血走った目を向けていた。
健一が低く笑った。
先ほどまでの礼儀正しさが嘘のように、健一は卑しく笑った。
「あなた達、 、私を、だましたのね」
「今ごろ気づいても遅いよ、白石さんっ」
健一が、真紀の腹部に猛然とタックルした。
素早い健一の動きを避けきれなかった真紀は重心を崩され、敷布団の上に押し倒された。
それが合図のように、日下と多田の二人の少年も、真紀に襲いかかった。
「やめなさいっ」
真紀は少年達に腕を突き出し、長い足を跳ね上げて抵抗した。
抵抗の激しさを物語るように、
真紀の履いたローヒールの靴はあらぬ方に飛び、コンクリートの床に転がった。
少年達は真紀の動きを封じようと、三方から彼女の体にまとわりついたが、
予想を上回る凄まじい真紀の抵抗に、健一は額に汗を滲ませた。
「おい多田、腕だ、腕をつかめ、日下、おまえは足だっ」
いらだつ健一は真紀の腹部や二の腕、太腿のあたりを殴りつけた。
さすがに真紀の顔こそ殴らなかったが、健一の無慈悲な暴力には効きめがあった。
二度目に受けた腹部への強打によって、咳きこむ真紀の抵抗が一瞬弱まった。
すかさず両手を頭の上で交差するようにつかまれ、両足は膝のあたりを抱きこまれた。
「こ、こんな、 、放しなさいっ、 、」
腹部の痛みに息をつまらせながら、それでも真紀は少年達に制止の声を浴びせ、
死にもの狂いで体をよじり、抵抗した。
しかし、多田と日下の二人にがっしりと押さえこまれた真紀の抵抗は虚しいものとなり、
もはや彼女は、少年達から逃れることは出来なかった。
ふうっと息をついた健一は立ち上がると、ビデオカメラのファインダーをのぞきこみ、
仰向けに押さえつけられた真紀の全身をアングルに捉えた。
聡史は、
精液で汚したショーツを手にして、真紀の部屋をあとにした。
自分の手だけによるマスターベーションとは、明らかに違う満足感に聡史は酔っていた。
下着を使った行為が、これほど刺激的なものとは思いもしなかった。
家族の信頼を裏切り、こそ泥のようなまねをして姉の下着を手に入れても、
聡史はまったく罪の意識を感じていなかった。
性欲の虜となり、越えてはならない一線を踏み越えてしまった聡史の心は病み始めていた。
自分の部屋に戻る時、
ふと、母の下着はどんなのだろう、と思った。
この時ばかりは聡史は慌てて、そんな自分の考えを打ち消した。
(なに考えてるんだ僕は、 、お母さんは、僕の尊敬するお母さんだ)
聡史の心の深いところでは、
姉の真紀に対する性欲と同じものが、母親の鏡子にも向けて育っていた。
いまは母親への尊敬の気持ちが勝っているが、何かのきっかけさえあれば、
いつ意識し始めてもおかしくないほどに、強く確かな欲望が生まれていた。
聡史にとっての不幸は、身近にいる女性たちがあまりにも美しすぎることだった。
聡史は知らなかった。
大切な姉が危機に瀕していることを。
そしていづれは、尊敬する母の鏡子までもが、
非道な少年の餌食になってしまうことを知らなかった。
聡史は、机につくと塾の予習を始めた。
ビデオカメラのファインダーをのぞきながら健一が、また卑しく笑った。
「白石さん、しっかり撮ってあげるよ」
多田に腕の関節をねじられ、日下に両足を抱きこまれた真紀は、完全に自由を奪われた。
「楽しませてあげるよ白石さん、僕は結構セックスに自信があるんだ」
「なんですって、 、
私を甘く見ないで、必ず告発して、あなた達に償いをさせるわ」
真紀は柔らかいショートの髪をふり乱し、肩で息をしながら、
健一に鋭い目を向けた。
その鋭い視線をへらへらと笑って受け流した健一は、真紀に近づくと、
彼女の腰にどすっと座り込んだ。
「そんなこと言ってられるのも、今のうちさ」
両手を伸ばして白いシャツをゆるやかに盛り上げている、真紀の乳房を鷲づかみにした。
「っっ、 、」
頭上で、多田に両腕をねじ曲げられているため、
上半身を激しく右左によじって健一の手から逃れようとする真紀の腕の筋肉は引きつり、肩の関節には激痛が走った。
それでも真紀は身をもがいて抵抗を止めなかった。
可能なかぎり、少しでも汚らわしい健一の手から逃れようと懸命だった。
健一は、真紀の白いシャツに深いしわを刻みつけ、乳房に指をくい込ませた。
「白石さん、ペチャパイかと思ってたら、そこそこあるじゃん」
真紀の抵抗を楽しみながら乳房を嬲っていた健一の手が、白いシャツのボタンにかかった。
「おい多田、もっと強く押さえろ」
体をよじる真紀の抵抗がひときわ激しくなり、その真紀の胸元を追うようにして、
健一の指が白いシャツのボタンを外していった。
「へへっ、そんなに暴れて、ボタンが千切れたら帰るとき困るのは、白石さんだよ」
縦に割れていくシャツの胸元から、真紀の素肌と白いブラジャーが現れる。
「、 、馬鹿なことはやめなさいっ」
まだ中学生の少年達が、
このような手段で女性を襲うとは、真紀には信じがたいことだった。
女を罠にかけ、よってたかってその体を貪ろうとする少年達。
その卑劣さに、憎しみがこみ上げてくる。
真紀にとっては、裸にされる恥ずかしさよりも、
少年達への怒りのほうが勝っていた。
「卑怯者っ、あなた達はそれでも男なの、 、こんな、こんなやり方で、 、」
「ふん、素っ裸にしてやる」
健一はシャツをさっと左右に押し開き、
シャツの裾を荒々しくジーンズから引き出した。
ハーフカップの白いブラジャーと、
それに負けない透きとおる白さが眩しい、真紀の素肌がさらけ出された。
すかさず健一は、ブラジャーをぐっと上に押し上げ、
小ぶりでもはっきりと半円を描く真紀の乳房を、両手でつかんだ。
「いつもクールな顔してるくせに、可愛いオッパイしてるじゃない、
白石さんって、何人の男を知ってるのかな、三人、それとも五人?」
健一にしてみれば、真紀のように男を寄せつけないタイプの美人でも、
複数の男性経験は必ずあるはずだというのが、あたりまえの感覚だった。
中学三年で既に和姦、強姦を含めて十人以上の女性と性交の経験がある健一は、
なんだかんだ言っても女はセックスを好み、それを求める生き物だと思っていた。
とても中学生とは思えない余裕を見せて、健一は真紀の乳房をもみこんだ。
しかし健一とは対照的に、真紀を力強く押さえつけている多田と日下は、
首を伸ばし、目を血走らせて彼女の乳房に見入った。
そんな二人に、健一は小ばかにしたような顔を向けたあと、再び真紀に視線を移した。
「白石さんの恋人より、きっと僕のほうがセックスは巧いはずたよ、
へへっ、たっぷり可愛がってあげるからね」
健一が、桜色の乳首に吸いついた。
真紀はぞっとする悪寒で全身に鳥肌を立て、その感触に吐き気を覚えた。
「やめなさい、汚らわしいっ」
白く輝く肌も、硬い乳房も、淡く色づく乳首も、
そのすべてが初めて、男の視線と、男の手と舌の動きを知るものだった。
真紀は処女だった。
もちろん真紀にも付き合っていた男性は何人かいたし、唇を許した男性もいた。
しかし結局、身をゆだねてもいいと思える相手には出会えなかった。
大袈裟に、処女であることを大切にしてきたという訳ではない。
遊びのセックスにも、興味がなかったと言えば嘘になる。
ただ真紀は、自分が心から好きになれる男とセックスをしたいと思っていた。
彼女が二十三歳という年齢で未だに性体験がないのは、そういう相手が、
これまで真紀の前に現れなかった、ただそれだけの理由だった。
「こんなに乳首を硬くしちゃって、白石さんって、意外と敏感なんだ」
健一は硬い弾力のある真紀の乳房をもみたて、音をたてて乳首を吸った。
快楽など微塵も感じていなくとも、
真紀の乳首は刺激に反応して充血した。
硬くしこった乳首をつまみあげた健一が、
敏感な反応をみせる真紀を嘲笑った。
女性の体の繊細な仕組を侮辱する健一に、真紀は新たな怒りをつのらせた。
「いい加減にしなさいっ」
真紀は少年を厳しく叱りつけた。
女性の人格をまったく無視した非道な少年達に、真紀は全身を怒りで震えさせた。
しかし、
声を荒げる真紀を前にしても、健一はへらへらと笑って乳首を嬲り続けた。
「さてと、そろそろ見せてもらおうかなあ、白石さんのオマンコ」
乳房を弄んでいた健一の手が、真紀のジーンズに伸びた。
留めボタンを外され、
ジーンズのファスナーが下ろされるくぐもった音を聞いた時、
真紀は自分の身に起きている非情な現実をあらためて実感した。
(レイプされる)
ジーンズを引き下ろそうと、健一の両手に力がこめられると、
それを防ごうと、真紀は必死になった。
少年達も驚くほどの抵抗だった。
どんなに肩の関節に激痛が走っても、真紀は狂ったように抵抗した。
極限まで身をよじり、腰を右に左にひねって健一の手をふり払おうとした。
しかし、真紀の抵抗のすべては無駄なものだった。
健一によってジーンズは奪いとられ、
露わになった白いショーツと、すらりとした両足が少年達の目にふれた。
真紀が激しく抵抗した動きにつられてなのか、
股間にショーツがより合わさって食い込み、
女の裂目を露骨なまでに示すほど、くっきりと縦じわができていた。
「いつもかっこいい白石さんのスジマンかあ、なんかぞくぞくするなあ」
言いながら健一は、その縦じわの溝を人差し指でなぞった。
真紀は全身を緊張させ、怒りの表情を健一にぶつけた。
「許さないっ、私は、あなた達を絶対に許さない、よく覚えてなさい、この償いは必ずさせるわっ」
「へへっ、好きだなあ、そういう白石さんの気の強いとこ、
はいはい、よく覚えておきます、白石さんがどんな体をしてたかね」
健一はショーツの両端をつかむと、一気に引き下げ、両足から抜き取った。
体毛の薄い体質なのか真紀の陰毛は、
女の亀裂の一端を窺わせるほどに淡く、細かった。
清純とも言えるその有様を目にした健一は、ふゅぅ、と口笛を吹いた。
「まいったなあ、ほんとクールな顔してるわりに、可愛い体してるんだよなあ、
中味がどんなか、楽しみだよ」
健一はそれまで両足を押さえつけていた日下と一緒に、真紀の股間を割り開こうとした。
片方の足を健一が、そしてもう片方を日下がつかみ取り、
二人がかりで真紀の両足を左右に広げた。
どんなに真紀が両足に力を込めても、二人の少年には敵わなかった。
「こんな、 」
「白石さんって、外人みたいだなあ、びらびら、ピンク色してるじゃん」
真紀は、両方の足首が敷布団からはみ出すほどに股間を広げられた。
真紀の両腕を組み敷いている多田は身を乗り出すようにして、
そしてそれぞれ左右の足をつかんでいる健一と日下は、のぞき込むようにして、
真紀の秘められた股間の中心を凝視した。
開かれた両足につられるように、ほころびかけている陰唇に健一が片手を伸ばした。
「これが白石さんのオマンコかあ、
へへっ、乳首を舐められて感じたの? ちょっぴり濡れてるよ」
処女であるが故の鋭敏な体は、
快楽など感じていなくても男を迎え入れる準備を始めていた。
普通の日本人女性とは異なり、
陰唇よりもその内部のほうが濃い紅色に光る真紀の秘肉を健一はいじりまわした。
顔を横にそむけた真紀は、
生まれて初めて、男の前に股間をさらす羞恥に戸惑った。
その羞恥は、真紀に自分が女であることを実感させた。
(こんな、 、)
全身が燃えるような、強烈な恥ずかしさを、真紀はこれまで経験したことがなかった。
男の目の前で両足を広げることがどんなに羞恥を伴うものか、真紀は初めて知らされた。
少年達への怒りを、そして憎しみを、一瞬忘れてしまうほどの恥ずかしさだった。
「あれれっ、白石さん、顔が赤くなってる、
体だけじゃなくて、性格も、けっこう可愛いいんだね」
真紀の片足を押さえ込んだまま、健一は器用にズボンとブリーフを脱いだ。
「淫乱かと思ったら、あんまり濡れてこないね、
もう面倒くさいから、このくらい濡れてればいいでしょ、白石さん、
僕の自慢のチンポで、白石さんの恋人より上手にセックスしてあげるからね」
健一のペニスは見事に勃起しており、その大きさは異様なほどだった。
日下の手助けを得て、健一は挿入の体勢を真紀に強いた。
もう、真紀がどんなに身をもがいても、
上向きに割り広げられる開脚を阻止できなかった。
両足の間に健一の体が割り込みむと、その後ろでは、
立ち上がった日下が、左右に開いた両足首をつかんで持ち上げた。
真紀には、抗いようがなかった。
上半身をしっかり押さえこまれ、そして腰がいくぶん浮き上がるほどに両足を真上に
広げてつかみ上げられてしまうと、その体は力を入れる支点を失ったかのように、真紀が
どんなに腰をひねろうと力を込めても、すべての動きが頼りなく無駄なものになった。
「白石さん、気持ち良くさせてあげるから、仲良くしようね」
健一のペニスの先端が、真紀の女の亀裂をなぞるようにゆっくり上下に這いまわった。
生まれて初めて男性器に秘所を嬲られるおぞましさに、真紀の背すじに悪寒が走った。
口惜しくて哀しい感覚に歯を食いしばって耐える真紀が、
膣口に痛みを伴なう圧力を感じた時、彼女は「いやーっ」と、絶叫した。
その叫び声は、
少年達も、そして彼女自身も驚くほどの大きな声だった。
真紀は、そんな自分の声を不様だと恥じたが、
しかし、叫ばずにはいられなかった。
その叫びは、非道な少年達を最後まで拒もうとする、真紀の魂の叫びだった。
「いやっ、いやーーっ」
「白石さん、もう諦めろよ、
ほら、こうして、ここにはめて、こうやって、ずぶっと」
「、 、うっっ」
膣口に健一の亀頭がめり込んだ瞬間、真紀の体が硬直した。
激痛が背中を突き抜け、真紀は自分の肉が裂ける音を聞いたように錯覚した。
健一のペニスが、じわじわと硬く閉じた膣内を突き破っていくたびに、
真紀の痛みはさらに苛烈に、
肉の裂ける音は真紀の鼓膜へ直接、響いてくるようだった。
「すごい締まりしてるじゃん白石さん、なかなか入らないよ」
真紀の膣内に半ばまでペニスを埋めた健一は、不思議な物を見た。
自分のペニスと、その下の敷布団のシーツが、赤く染まっていた。
それを見たとき健一は、
真紀の生理が始まったのかと思ったが、すぐにその考えを改めた。
真紀の大人びた彫りの深い顔とは、まったくかけ離れて見えるほどの幼さの残る肩の線、
硬い乳房、挿入を拒むようなきつい膣内、真赤な鮮血、そして苦痛にうめく真紀の姿、
そのどれもが健一に、いま自分とセックスしている女が、処女であることを告げていた。
「白石さんって、処女だったの、
おいみんな、笑ってやれよ、この女、いい歳こいて処女だぜ」
苦痛の中でその言葉を聞いた真紀は、精一杯に恨みのこもった目を少年に向けた。
その目を見た健一は、ついに残忍な本性を現した。
真紀の髪をつかみ、極端に傾くほどに真紀の顔を手前に引寄せた。
「どう白石さん、初めての男の味は、 、痛い?、痛いよねえ、
僕のでかいチンポをはめられて、そりゃあ痛いよねえ、
でもねえ、まだまだ、こんなもんじゃないよ」
言葉の終らないうちに、
健一は半ばまで埋めていたペニスを、一気に根元まで突き刺した。
「ううっ、 、」と息を詰らせる真紀の髪をつかんだまま、健一は腰を動かし始めた。
「白石さんみたいな、いい女の初めての男になれて、僕も嬉しいよ、
よく覚えておいてね、これが男の味だよ」
相手の苦痛など一切無視した、己の快楽を満たすための荒々しい健一の腰使いは、
真紀に激痛のみをもたらした。
(こんな男に)
好き勝手に女の体を貪る健一に、真紀は苦痛の中で激しい憤りをぶつけた。
「許さない、 私はあなたを、決して許さない」
健一もそんな真紀へ挑むように、深々とペニスを打ち込んだ。
鋭い突きによって、新たな激痛が真紀の全身を貫いた。
「初めて女にされて、血まで流してるくせに、まだまだ元気がいいね」
健一は腰の動きを早め、真紀の傷を広げていく。
「まったくよく絞まるねえ、やべえ、もう出そうだよ
白石さん、 、たっぷり出してあげるからね」
せわしなく腰を動かす健一が迫りくる快楽に醜く顔をゆがめ、射精の気配を見せた。
真紀も女として、妊娠の危険に怯えたが、黙って目を閉じた。
かりに『避妊を』と訴えたとしても、
健一のような男が、その願いを聞き届けてくれるとはとても思えなかったからだ。
それに、憎い男へ『避妊を』などと、
懇願するような弱気なまねはしたくなかった。
この期に及んで、男に犯される弱い女の姿を、少年達に見せたくなかった。
真紀は激痛に耐えながら必死で無表情を装い、そっと目を閉じた。
上半身にはボタンを外されたシャツが両腕に絡まり、
ずり上げられたブラジャーの下では、
健一の爪が食い込んだ跡のはっきりと残る乳房が、硬く揺れていた。
そんな真紀の姿を、
そして敷布団のシーツの赤い染みまでも、
高精度のレンズをもつビデオカメラが冷酷に記録していった。
大量の精液を浴びた真紀は、嘔吐しそうなほどの汚辱感が去らないうちに、
今度は多田のペニスを膣口に押し付けられた。
それまでの凄まじい抵抗による疲労と、激痛による筋肉の痺れで、
真紀の体にはもう抗う力は残っていなかった。
それでも真紀は、挿入を試みようとする多田へ壮絶なまでの怒りの表情を向けた。
「許さないっ、 、あなたにも、必ずこの償いはさせるわ」
真紀の鬼気迫る怒りに怖気づいたのか、
「ひっ、」と多田は泣きそうな顔をして腰を引いた。
そんな多田の背中を、健一が叩いた。
「なにビビッてんだよ多田、こんないい女、二度と抱けないぞ」
真紀の怒りの表情に怖れをなし、泣きべそをかきながらも、
それでも美しい真紀へのたぎる性欲をおさえ切れずに、多田は彼女を犯した。
健一ほどの大きさではないものの多田のペニスは、真紀にふたたび苦痛をもたらした。
最初は恐々と腰を使っていた多田も、射精が近づくと遮二無二にペニスを突き立てた。
真紀への畏れがいびつな興奮を多田に与えるのか、
「し、白石さんっ」と、彼は情けない悲鳴を上げながら、
それでも彼女の乳房をねじ切らんばかりに乱暴にもみたて、射精して果てた。
多田と同じように日下も、真紀の恐ろしい怒りの表情から目をそらしたまま、
叩きつけるような勢いでペニスの出し入れを繰り返した。
日下が射精する頃には、
真紀の体は破瓜の痛みが麻痺するほどに疲労していた。
多田と日下の二人は、呆けたように精液の流れ出る真紀の股間をのぞきこみ、
女性器を指先で嬲った。
健一は、しつこいほどに乳房をもみ、乳首を弄ぶように悪戯した。
真紀には、それらをはね返す体力は残っていなかった。
しかし真紀の心は、非道な少年達への怒りで燃えていた。
きっ、と少年達を睨みつけ、殺気を感じさせる低い声で言い放った。
「もう気が済んだでしょう、 、出て行きなさいっ」
その声に驚き、首をすくめて、慌てて真紀の股間から手を引いた多田と日下の二人とは逆に、健一だけは真紀に臆せず、残忍な顔を彼女にむけた。
健一の言葉使いまでも、一変した。
「なんだとお、気にいらねえな、その目、
処女だったくせによお、俺たちに犯られて、もっと哀しそうな顔をしろよ」
健一は指先に力を入れ、弄んでいた乳首をひねりつぶした。
「出て行けだとお、馬鹿やろう、まだまだ終わりじゃねえんだぞ」
健一の合図で、少年達は真紀の上半身に残っていた衣服をすべて剥ぎ取った。
シャツとブラジャーを奪われると、真紀は強引にうつ伏せにされた。
「おい日下、ロープと、それから例の物だせよ」
ビデオカメラの三脚の下に置いてあるスポーツバッグの中を日下が探るあいだに、
健一は真紀の両腕を背中でねじり合わせた。
「へっへへ、
犯るときは暴れるのを無理やり押さえつけるのがいいんだけどなあ、
これからはちょっと手が邪魔なんだよ」
(この子達はいったい何を)
背中で交差された両腕にロープが絡みつき、真紀の不安を煽るように強く縛められた。
うつ伏せにされると真紀のウエストの細さと、
ヒップラインの硬い丸みがことさら鮮やかに浮き彫りになる。
「次の、お楽しみは」
健一は、真紀の二つに割れて盛り上がる臀部の片方をつかむと、
その肉を押しやるように谷間を広げて、彼女の肛門をむき出しにした。
健一の視線を拒むようにすぼまる真紀の肛門は、
色素の沈着が少なく、放射状の細かなシワさえも桃色をなしていた。
「ふんっ、尻の穴までピンク色なんて、めずらしい女だぜ」
思わぬところに興味を示す健一に、真紀は身を硬くした。
少年達の意図が、真紀にはまったく分からなかった。
羞恥心の強い真紀は、怒りで全身を震わせなからも、
自分ですら見たことのない排泄器官に少年達の視線を感じ、また顔を赤く染めた。
「真紀、たっぷりいじめてやるぜ」
「何をするのっ、 、あっ、 、痛ぅっ」
肛門に、刺すような痛みを真紀は感じた。
多田に両肩を押さえつけられ、日下に両足をつかまれ、そしてうつ伏せにされて両腕を
縛められていては、その痛みから逃れようと最後の力をふりしぼって身をもがいても、
真紀の抗いはなにほどの効果もなかった。
感覚的に、なにか細い物が、排泄器官に差し込まれたことが分かるものの、
それがもたらす痛みに耐えかねた真紀は、それを押し戻そうと無意識に肛門をすぼめた。
その時、腸内に液体のしぶきが、強い圧力をともなって一気に流れ込んできた。
「んっっ、 、 、な、何をしたのっ」
窮屈な姿勢でも、なんとか後ろの健一にふり返ろうともがいた時、
ふたたび肛門に痛みが走り、またしても腸内にしぶきを感じた。
「うっっ」
直腸の粘膜をちりちりと刺激する液体に、真紀は鳥肌を立てた。
(この子達は、 、)
経験のない真紀にも、健一が何をしたのか分った。
それを裏付けるように、横向きにされている真紀の顔の正面に、
健一が放り投げた二つの小さな、ピンク色をしたプラスチック容器が転がった。
いびつに一部分が潰された容器は、まぎれもなくイチヂク浣腸だった。
健康な真紀は、これまで使ったことは無かったが、
一つの常識として知ってるものが、目の前に転がっていた。
「もう一個、あるんだぜ」
健一はひときわ深く容器の先端を真紀の肛門に突き刺し、
薬液の入っている丸く膨らんだ部分を、おもいっきり力を込めて押し潰した。
その薬液のしぶきは、一粒一粒が小さな針のように、真紀の腸内を襲った。
たとえようの無い悪寒と、初めて知覚する腸内の焼けつくような刺激を、
真紀は冷たい汗をかきながら、必死に耐えた。
真紀は、背中で両腕を縛められたまま、
無理やりブリキのバケツを跨がされていた。
「はっはは、すげえ格好じゃない、白石さん」
ビデオカメラを手にした健一が真紀を嘲った。
汗で光る額に前髪をまとわりつかせ、真紀は刺しこむ便意に耐えていた。
真紀も新聞記者のはしくれである。
新聞の紙面に載ることの無い、悲惨なレイプ事件を数多く知っていた。
凌辱された女性達が、どれだけ心と身体に傷を残したか見聞きする機会もあった。
そんな時、
真紀は、冷酷で変質的な方法で女性を辱める男達を心底憎んだ。
真紀は女性を襲う男達を、決して許してはならない思ってきた。
それだけに、自分自身が凌辱の対象にされた今、
少年達に向けられる真紀の憤りは凄まじいものだった。
しかし、
既に限界に達している便意と苛烈な腹痛で、血液の流れは凍りつき、
真紀の全身は蒼白となって、脇腹や太腿の筋肉が痙攣していた。
「へっ、もう我慢できないんだろ、
こういう時は『見ないで』とか『お願い許して』とか言うもんだぜ、
ぶるぶる震えてるくせに、澄ました顔するなよ」
必死に便意を耐える真紀は身体を引きつらせていたが、
その表情はきりっと冴え、
目を閉じて、少し上に向けたその顔はいつにも増して美しかった。
真紀は、少年達に許しを乞うことなど、けっしてしまいと誓っていた。
強制的な排便はもはや避けられないとしても、
不様にうろたえる素顔を見せたくなかった。
それは真紀の、女性としての最期の誇りだった。
「そんなに見たければ、 、見るがいいわ」
場違いなほど冷静な声で、真紀が言った。
その直後、倉庫内に破裂音が響いた。
ブリキのバケツを跨がされた真紀は、
その中に薬液で溶かされた軟便を飛び散らせていった。
真紀の耳に、自らが発した破裂音が残酷にこだまする。
そして立ちのぼる匂いまでも知覚してしまった真紀は、上体をそらし、天を仰いだ。
少年達のはしゃぐ声と食い入る視線のなかで、
真紀の肛門は、固形物をひねり出した。
真紀は、顔を震える肩にそっとうずめた。
それは今日、少年達に初めて見せた、女らしい仕草だった。
覚悟はしていても、排泄を見世物にされることが、
女にどれほどの辛さを強いるか、真紀は苛烈なまでに思い知らされた。
「いつもクールな顔してるくせに、ウンチは臭いよ、白石さん」
三人の少年達とビデオカメラの前で、真紀は排泄を終えた。
その真紀を敷布団の上に引きずり倒した少年達は、
うつ伏せにした千穂の臀部を高く持ち上げた。
後手に縛られたままの真紀には、横向きになった右の頬にすべての体重がかかり、
背中がいびつに曲るほど肛門を真上にさらされた。
「こんなに汚して、今拭いてあげるよ、白石さん」
おどけた口調の健一は真紀をからかいながら、ティッシュで肛門を拭った。
自分ですべき最も人間的な行為を、健一によってなされた真紀は、
目も眩むような羞恥で全身を赤く染めた。
目の前に、
健一が無造作に放り投げたティッシュが落ちてきた。
排泄のあとが真っ白なティッシュにこびり付いていた。
(恥ずか、しい、 、)
みじめな姿のまま、こみ上げてくる恥ずかしさに頬を真っ赤に染めた。
「あれえ、白石さん、顔が真赤になってるよ、
肛門を拭かれるのって、そんなに恥ずかしいの、
へっへへ、可愛いぜ、真紀さんよお」
健一は、多重人格者のように、顔つきや言葉を変え、真紀を嘲った。
そして、肛門のしわをなぞるように、しつこくティッシュを使った。
一人の女性として自立した真紀ゆえに、
排泄後の処置を他人の手で為されることに強い羞恥を覚えた。
(はっ、 なに、 、)
真紀は、排泄器官に冷たい液体を感じた。
健一は真紀の肛門にローションを塗りこみ、人差し指をねじ込んだ。
「くっっ」
吐き気をともなう衝撃で、真紀の腰がよじれた。
「白石さんの処女は、ぜんぶ僕がもらうからね」
肛門の絞まり具合を指先で確かめた健一は、
勃起したペニスを真紀の肛門に押しつけた。
真紀には、ことの現実がにわかには信じられなかった。
(この子は、 、)
「そんな、 、狂ってるわ」
身動きを封じられた真紀を、背後から押し潰すように健一がのしかかった。
「ここですると、やみつきになるらしいよ」
「やめ、っぐ、 、 、」
肛門に健一の亀頭がめり込んだ時、真紀の呼吸が止まった。
歯を食いしばって耐える真紀の細いウエストを健一は鷲づかみ、
一気にペニスの根元まで、肛門を深く貫いた。
衝撃の反動によって、真紀が息を吸い込んだ音は、かすれた喘ぎ声に似ていた。
「白石さんの肛門を犯せるなんて、最高だよ」
真紀のもがき苦しむさまは、健一を楽しませた。
楽しみながら健一は、ペニスを肛門へ出し入れした。
ローションによって裂傷こそしなかったものの、
排泄器官を襲う苦痛と衝撃に真紀は、声すら上げられず、
途切れがちな呼吸を繰り返した。
常識外の部分で交わっていることで、次第に興奮の度合いを高めた健一の目は、
狂気を帯びてきた。
「はあはあ、白石さんっ、」
健一は執拗に、激しく腰を使った。
真紀に獣のようにのしかかり、鷲づかんだウエストに爪を食い込ませ、
思いのままに、真紀の肛門を蹂躙した。
健一は、真紀の肛門に射精した。
しかし、それでも満足できないのか健一は、
うつ伏せに横たわる真紀の髪をつかみ、顔を上げさせるとその前にあぐらを組んだ。
肛虐の苦痛とショックで、
意識が朦朧としかけていた真紀にも、健一の意図が分かった。
少年のペニスを真紀はかすれた声で拒絶した。
「そんなこと、絶対にいやっ、」
髪をふり乱して、真紀は拒んだ。
健一は、日下と多田に命じて真紀の頭を押さえつけさせた。
少年とはいえ、男三人がよってたかって、
一人の女性にフェラチオを強いようとする有り様は、あまりに惨いものだった。
一人は真紀の耳を千切れるほどにつかみ、また一人は髪をつかんだ。
そしてもう一人は、真紀の口をこじ開けようと顎をつかんだ。
真紀の人格を無視した、残忍な行為だった。
射精したばかりにもかかわらず、
健一は硬く勃起したペニスを、強引にこじ開けた真紀の口内へ押しこんだ。
「っむ、 、」
潤いのある真紀の唇が、健一のペニスによってその形を変えられていった。
無理やりこじ開けられた顎のラインと、それよって強調された整った鼻筋が、
少年にフェラチオを強いられる真紀を、残酷なまでに美しく見せていた。
健一は、自分のペニスを口に含ませた真紀の横顔をじっと見ながら、
つかんだ真紀の頭を上下に揺さぶった。
真紀はうつ伏せのまま、哀しい奉仕を強いられた。
(憎い、 、この男が憎い)
何もかも、暴力と腕力によって強いられた行為だった。
(憎い、 、)
瞬間、真紀は本気で、ペニスを噛み切ろうとした。
口内を蹂躙し、喉を突き上げる健一のペニスを、本気で噛み切ろうとした。
しかし、できなかった。
非道な男たちを前にすれば、自分も弱き女であることを、真紀は悟った。
真紀は、全身からすべての力を抜いた。
「かぁー、たまらないや」
健一は、好き放題に真紀の口内を犯した。
多田も興奮し、真紀の胸をもんだ。
乳房をもみながら滑らかな背中に舌を這わせた。
日下は、真紀の腰を持ち上げ、背後から犯そうとのしかかっていく。
「おい日下、尻の穴は俺のもんだからな」
分っていると目で頷く日下は、真紀の膣口にペニスを突きたてた。
それからの真紀は、少年達におもちゃにされた。
健一には、喉の奥深くをつかれ、口内に射精された。
日下と多田は、交互に真紀の唇と膣を犯した。
真紀はふたたび出血した。
すでに両腕を縛めていたロープは解かれていた。
少年達は真紀の身体を弄んだ。
多田は小ぶりで硬い乳房に執着した。
日下はすらりと引締まった太腿から足首までを繰り返し舐めた。
その様子を、健一がビデオカメラで記録していった。
時刻は午後の三時をすぎていた。
ようやく少年達は満足したのか、荒い息をしながら真紀を見下ろした。
仰向けに横たわる真紀の唇の端から、
広げられた股間から、少年達の精液が流れていた。
敷布団からはみ出していた片足を静かに引き寄せた真紀は、
乳房をかばうように両腕を胸にまわすと、少年達に背を向けた。
「もう、出て行って」
真紀の声が、哀しく倉庫に響いた。
「へっ、あれだけ犯らて、まだそんな偉そうに、
おい、分ってると思うけど、こっちにはビデオもあるし、
警察になんか言うなよ、
それに、あの馬鹿が自殺したこと、
もう調べるなよ、いじめた俺達にとっては、えらい迷惑だからな」
少年達が引き揚げていった後、
静かな倉庫で一人きりの真紀は、身を横たえたままじっとしていた。
天井を見つめる真紀の心にあるのは、無念の思いだった。
少年達の本性を見抜けなかった愚かさ、
暴力によってレイプされ、あらゆる辱しめを受けた事実、
そして自分の体が、少年達を悦ばせた口惜しさ、
何もかもが、無念だった。
緩慢な動作で身を起こした真紀は、
突然むせかえる嘔吐感に咳きこみ、胃液を吐いた。
その胃液には、少年達の精液も含まれていた。
真紀は、自分のバッグから懐紙を取り出し、顔をそらせて股間をぬぐった。
ぬぐってもぬぐっても、新たな精液があふれてきた。
散乱している衣服は所々ほこりで汚れ、
白いブラジャーも白いショーツも同様だった。
真紀が、ゆっくりと衣服を身につけるその姿を、
健一が鉄の扉の陰から盗み見ていた。
多田と日下を先に帰した健一は、
なんとしても犯された後の、一人でいる真紀の姿を見たかった。
犯され、恥をかかされた女が、どんな顔をしているのか、見てみたかった。
引きずるような足取りで扉に向かう真紀から隠れるように、
健一は向かいの木陰に身を潜めた。
倉庫から出ようとした時、
真紀は股間にじっとりとした生暖かいものが広がるのを感じた。
膣内に残っていた少年達の精液が流れ出たものだった。
真紀は扉に寄りかかった。
その蒼ざめた頬に、ひとすじの涙が流れた。
少年達の前では、けっして見せることのなかった真紀の涙だった。
無念の思いに、真紀は鉄の扉に爪を立てた。
その様子を、
木陰から健一が残忍な笑みをうかべてじっと見ていた
その日、
白石聡史は塾が終ったあと友人の家に寄り、帰ってきたのは七時をすぎていた。
すでに帰宅していた母親の鏡子が夕食の準備をしていた。
清潔なキッチンの中で、
丁寧でも、手際のいい動きを見せる鏡子が聡史にふり向いた。
「あら聡史、お帰りなさい」
いつもと変わらない優しい母の声だった。
(どうして僕のお母さんは、いつもあんなに素敵でいられるんだろう)
中学生の聡史にも自分の母親の仕事が、
神経をすり減らす厳しい内容であることはよく分っていた。
鏡子が主宰する『つばさの会』は今ではボランティアの枠をこえ、
一種の公的機関として認知されるほど、重要な存在になっていた。
家庭内暴力、夫からの暴力、 、
さまざまな問題を抱える女性たちにとって、欠くことのできない組織だった。
そこでの鏡子は多忙を極め、
また責任者として、けっして間違いの許されない決断を迫られた。
聡史にもそのことが分かっているだけに、
家族の前で疲れた顔や、ストレスの欠片さえみせない母親を聡史は尊敬した。
姉と母、聡史にとっては二人とも慕い憧れる同じ肉親でも、
姉の真紀に向けられる歪んだ欲望と、
母親の鏡子への畏敬の気持は、その時の聡史の中では矛盾するものではなかった。
「ねえお母さん、姉さんは今日も遅いの」
午前中、はじめて姉の部屋に忍び込み、下着を盗んで自慰にふけった聡史は、
いまだに続く興奮と罪悪感とで姉のことが気になった。
「珍しいこともあるのね、あの真紀が頭が痛いといって寝てるのよ、
会社も早引けしたらしいわ、悪くならなければいいのだけれど」
聡史はどきっとした。
自分がした卑猥な裏切り行為が、
姉に祟ったのではないかと迷信じみた思いにかられた。
しかし以前、姉が風邪をひいたときに見た潤んだ瞳を思い出し、
病に蒼ざめる美しい姉の顔を想像すると、聡史は股間が熱くなった。
真紀は真っ暗な部屋の中でベッドに横たわり、
身じろぎもせずに闇を見つめていた。
股間に残る痛みと異物感が、真紀を苦しめた。
この自分の身体で快楽を貪った少年達に憎しみがつのった。
まばたきもしない真紀の瞳から、静かに涙が流れた。
一階の食堂で夕食をとる鏡子と聡史は、そんな真紀の姿を知るはずもなかった。
真紀はその翌日から出社した。
朝食の時、頭痛は治まったと母と弟に笑顔を見せた。
ともすれば暗く沈みこんでしまう自分自身を叱咤し、気力を奮い起こした。
あの少年達に負けてはいけない、という思いが真紀を支えた。
だが必死に抵抗したことによる全身の筋肉と関節の痛みが、
そしてなおも残る股間の痛みが、昨日の屈辱的な記憶を鮮明に蘇えらせた。
それから数日、真紀は何度も専門の弁護士や、警察を訪ねようとした。
一度など弁護士事務所のドアの前まで行ったこともあった。
しかし、どうしてもドアを開けることができなかった。
真紀は自分の女としての弱さを思い知った。
少年達を罰したい気持は強かったが、
法廷で自らが受けた辱めのすべてを、さらす決断が真紀にはできなかった。
あのビデオの映像だけは、誰にも見られたくなかった。
誇り高い真紀は、そんなことは絶対に避けたかった。
そしてもう一つ、
日ごとに真紀を苦しめていくのは妊娠への不安だった。
若い少年達の精液をあれだけ何度も身体の奥深くに注ぎこまれては、
妊娠は避けられないと思った。
最も頼りになる母に打ち明けたかったが、
そうすればきっと母も自分のことのように哀しみ、苦しむに違いなかった。
もしも次の予定日に生理がなかったら、そのときは、 、
(中絶、 、)
真紀は女として哀しい言葉を思い浮かべた。
鏡子はここ一週間、
娘の真紀の様子がいつもと違うことを、ずっと気にしていた。
親の眼から見ても娘の真紀は美しく映ったが、
何か悩みを抱えているように思えてならなかった。
「真紀、今日は久しぶりに駅まで一緒に行きましょ」
いつも自分より早く出かける娘に合わせて、鏡子は支度を済ませた。
「お母さん達もう出かけるけど、聡史も今日は早いんでしょ」
「うん、もうちょっとして行くよ」
息子に戸締りを頼み、鏡子は娘と一緒に家を出た。
二人は眩しい朝日の中を、ゆっくりとした足取りで並んで歩いた。
駅まで十分足らずの緑の多い住宅街を、母娘は世間話をしながら歩いた。
「真紀、今日は晩ご飯食べた後、二人でワインでも飲まない」
駅が見えたころ、鏡子は娘に優しく言葉をかけた。
真紀は、はっとした。
(お母さんは私が悩んでいることを知ってる)
大変な仕事を持ちながらいつも家族のことを気にかけ、
敏感に自分の苦しい胸のうちを感じとってくれる優しい母の言葉に、
真紀は目頭を熱くした。
あふれそうになる涙を必死にこらえ、真紀は笑顔を作った。
「私とお母さんだったら、ワイン一本じゃあ足りないわ」
「あら本当ね、分かったわ、美味しいワインを二本、買って帰るわね」
そんな母娘の様子を、
駅の柱の陰から、一人の少年がじっと見ていた。
野坂健一だった。
健一は、美しい二人を見て股間を充血させていた。
特に健一は、真紀の隣りにいる女性に注目した。
(あの女は母親か、へへっ、いい女じゃん)
白い半袖のブラウスと、膝が隠れるほどのグレーのセミタイトのスカート、
その地味な服装が、鏡子本人の魅力をことさら浮きあがらせていた。
しだいに距離が狭まり、ほとんど目の前で鏡子を見た健一は、唾を呑みこんだ。
(いい女だ)
娘に顔を向ける鏡子の首すじの細さは、真紀よりも際立っていた。
(オバンのくせして、いい身体してしてるじゃねえか)
いかにも仕事を持つ女性らしく、きっちりとセットされた艶ある黒髪と、
優しい目もとを彩るかすかな小じわが、成熟した大人の女性を思わせた。
(犯りてえ)
すっと立っているだけでにじみ出てくる品の良さと、人としての威厳は、
年若い健一を威圧したが、だからこそ健一は、そんな女を泣かせてみたかった。
(あの口でフェラチオさせてえ)
薄くひいた口紅が上品に映える鏡子の唇に、健一は欲情した。
これまで街で見かけた美しい主婦のあとをつけ犯したことのある健一も、
真紀の母親ほど性欲を刺激された大人の女を見たことがなかった。
(あの女、くそっ、犯りてえ)
確かに四十歳は超えて見えた、しかしそれでも瑞々しいほどの美しさだった。
鏡子の重ねた年齢が、そして人生の歴史が、
彼女を美しい大人の女にしていた。
方向が違うのか鏡子はすぐ前の改札に向かい、
真紀は反対側の改札口へと地下道に入っていった。
健一はいっとき鏡子の後姿を堪能したあと、
真紀を追って地下道への階段を駆け降りた。
ちょうど真紀が階段を昇り始めたときに健一は追いつき、
そのすぐ後ろにぴったりとついた。
社会部の記者として行動しやすいように、
真紀はいつも通り、ジーンズに白い半袖のサマーセーターという身軽な服装だった。
健一は、硬さのある真紀のヒップラインを見つめた。
(俺がこいつを女にしてやったんだ)
一週間前、
真紀の処女を奪い、肛門まで犯した健一は、
その優越感からか余裕をもって真紀の臀部の切れこみを眺めた。
真紀が昇りの階段に足をかける度に、ジーンズの裾からのぞく足首が鋭く引き締まり、
それはペニスで味わった真紀の膣の収縮と、肛門のすぼまりの強さを健一に連想させた。
(こいつもいい女だ)
「白石さん」
階段を昇りきったところで、健一は後ろから声をかけた。
出勤前の足早な人の流れのなかで、真紀は立ち止まった。
しかし、ふり向く素振りも見せず、すぐに歩き始めた。
「待ってよ、白石さん」
意外な真紀の反応に健一はいくぶん慌てた。
背の低い健一が、
すらりと背筋を伸ばして歩く真紀にまとわり付くようにしてあとを追った。
「止まれよ、あのビデオ、
親父さんやお袋さんの知り合いに観せてもいいのかよ」
(なんて卑怯な)
真紀が恐れていたことが起きた。
ビデオの存在を脅しの材料にし、
しかも家族を巻きこもうとする健一にあらたな憎しみがつのった。
(私が拒めば、この子は言葉通り実行するにちがいない)
真紀は父を、そして優しい母を哀しませたくなかった。
改札口に向かう人の流れをふり切るように、
真紀はわきへそれ、大理石の柱の前で止まった。
「今日で終わりにするよ、しつこく付きまとうほど僕は馬鹿じゃないよ」
背を向けたままの真紀に、健一はさらに言葉をつなぐ。
「嘘じゃないよ、これで最期だよ、
それに多田と日下の二人は心配ないよ、
僕がいないと何もできない奴らだし、
だから、今日は白石さんの家で、ねっ、ねっ」
巧みに子供らしい言葉使いと、乱暴な物言いを使い分ける狡猾な健一に、
真紀は唾を吐きかけてやりたかった。
憎んでも余りある男だった。
その男が、また性欲をむき出しにしてきた。
きっとまた、屈辱的なことを強いられるのは真紀にも分かっていた。
それでも、真紀には辛い決心をするしか、道はなかった。
さっとふり向いた真紀の表情は、
冷酷な健一でさえびくっとするほど冷たく凍りついていた。
「これっきりにすると約束しなさい」
相手の心に沁みこませるような強い響きに、健一は何度も頷いた。
健一を無視するように真紀は視線を遠くにあてると、
ふたたび地下道へと向かった。
まっすぐ前を見つめて歩く真紀の速さに健一はついて行けず、
ときおり小走りで広がる間隔を縮めた。
聡史は一週間前、
姉の真紀の部屋に忍び込んでから勉強に集中できなくなっていた。
姉が素肌に身につけていた下着の感触を知って以来、
聡史が姉に向ける欲望はさらに深まっていった。
こっそり盗んだ姉の下着は、度重なる自慰により精液で無惨に汚れた。
(もう一枚、姉さんのパンティーが欲しい)
その日は朝から実力テストのある日だったが、
塾へ向かう途中で聡史はどうしても姉の下着が欲しくなり、来た道をひき帰した。
聡史が家の近くまで戻ったとき、前を行く姉の後姿に気づいた。
(あれ、 、)
姉は一人ではなかった。
見たことのない小柄な少年が、足早な姉にまとわり付くように一緒に歩いていた。
聡史の見守るなか、二人は家に入っていった。
(姉さん、会社に行ったはずなのに、それにあいつは誰だ)
少年への姉の態度は、遠目に見てもわかるよそよそしさだった。
周囲の人に、細やかな配慮をするいつもの姉らしく見えなかった。
(もう、冗談じゃないよ)
姉の下着を手に入れたい一心の聡史は、その思いを阻まれる成り行きに苛立った。
(あいつ、ひょっとして)
聡史は数日前の、母と姉の会話を思い出した。
(なんでいじめの取材、家でするんだよ)
自分のたくらみを中断させた少年に、聡史は理不尽な怒りをぶつけた。
(一体どんな奴なんだ)
聡史は、音をたてないようにドアを開けた。
玄関には、きちんと揃えられた姉のローヒールと、
乱暴に脱ぎ捨てられた少年のスニーカーがあった。
足音を忍ばせて廊下をゆく聡史に、リビングから姉の声が聞こえた。
姉は、勤める新聞社に欠勤の連絡をしているようだった。
聡史が廊下から、そっとリビングをのぞくと、
庭が見えるサッシにはカーテンが閉められたままで、部屋の照明がついていた。
カーテンに向かい、こちらに背中を見せて、姉は携帯電話を片手にしていた。
その手前で、どう見ても中学生と思える少年がソファにふんぞり返り、
『つばさの会』の案内書をめくっていた。
それは新しく刷り直したサンプルを母が持ち帰り、
テーブルの上に置いていたものだった。
聡史は、たとえようのない違和感を覚えた。
リビングの様子も、姉も、そして少年も、普通ではなかった。
(なんで姉さん会社を休むんだ)
聡史は、少年に目を向けた。
(なんだよ、こいつの態度の大きさは)
携帯電話を切っても姉は、カーテンの前に立ったままだった。
少年は『つばさの会』の案内書を丸めて持ってきたリュックに入れると、
真紀の背中に顔を向けた。
「白石さん、もう済んだのなら、こっちへ来なよ」
しばらくじっと佇んでいた真紀は、
さっと身をひるがえし、毅然として少年に歩み寄った。
「もし約束を破ったら、
その時は、あなたを殺して私も死ぬわっ」
「おっかないなあ、約束は守るよ、
あのとき撮ったビデオ、これも返すよ」
少年はリュックからビデオテープを取り出し、テーブルの上に置いた。
「これでいいでだろ、だからさ、始めるよ」
少年がソファから立ち上がった。
聡史は不安と恐怖につつまれた。
(どうなってるんだよ)
約束、 、死ぬ、 、殺す、 、
聡史は確かに、そんな姉の言葉を耳にした。
ビデオ、 、という少年の言葉も。
(姉さんのあんな恐い顔、はじめて見た)
聡史は、これからいじめの取材が行なわれると信じて疑わなかったが、
その場の雰囲気が、尋常のものではないことに慄いていた。
真紀はすこし顔を上にして目を閉じた。
リビングをのぞく聡史に、姉と少年が向かい合う姿が見えた。
(姉さん、なんて綺麗なんだ)
混乱した頭のなかでも、聡史は姉の美しさに心を奪われた。
その聡史の目の前で、
少年が、真紀のサマーセーターのふくらみに両手をそえた。
(あっ、姉さんっ)
一瞬、わずかに肩を引いただけで、真紀は静かに目を閉じたままだった。
聡史はおもわず声が出そうになったが、
あまりの出来事に全身が麻痺したようになった。
少年の手に力が加えられ、ふくらみの形がいびつに変えられていった。
聡史には理解できなかった。
そして目の前の光景が信じられなかった。
「一週間ぶりだね、
へへっ、あのとき白石さんが処女だったんでビックリしたよ」
真紀がまったく抵抗しないことに調子づいた少年はぺらぺらと喋った。
「たくさん血を流してたね、
やっぱりあれかな、犯されても初めての男は忘れられないものなのかなあ」
少年は、聡史を驚愕させることを言った。
(あの日だ)
聡史は一週間前の、姉が頭が痛いと言って晩ご飯食べなかった日を思い出した。
(あの日、姉さんはレイプされたんだ)
聡史の目に涙があふれた。
(姉さん、処女だったんだ)
聡史は猛烈に腹を立てた。
(姉さんの綺麗な身体を、あいつがレイプしたんだ)
聡史はしだいに事の成り行きを理解した。
(姉さん脅されてるんだ、だからじっとしてるんだ)
少年を打ちのめそうと思った。
そして姉を救おうと聡史は思った。
動けなかった。
麻痺した身体が動かなかった。
しかし、それがいい訳であることを、聡史自身も自覚していた。
聡史は、自分が勃起していることを知っていた。
右手はすでに、ズボンの中へ潜りこんでいた。
姉の真紀がレイプされた事実を知った瞬間、
痺れるような興奮で、自分のペニスがいきり立ったことを聡史は知っていた。
自分の大切な人が汚されていく残酷な陶酔感に、聡史は身を委ねた。
あの少年への怒りも、口惜しさも、本物だった。
また、姉への愛情と憐憫も、本当の物だった。
ただ聡史にとって、美しい姉が墜されていく姿は、何よりも刺激的だった。
聡史は泣きながら、
それでも両目を見開いて、自分のペニスをこすり続けた。
「白石さんて呼びかた、よそよそしいな、
真紀って呼んでもいいかな、いいよね」
年上の女性である真紀を呼びすてにして、少年は片手を、真紀の太腿に伸ばした。
「学校で習ったよ、こういうの無抵抗主義って言うんだろ、
気の強い真紀らしいな、
へっ、だったら僕のすることに逆らわないでよね」
少年の目は残忍さをおび、口調まで変わった。
「真紀、ひざまずけ」
少年が声を荒げた。
「処女だったおまえを、
女にしてやったチンポにフェラチオしろと言ってるんだ、ひざまずけっ」
押さえつけられた右肩をがくっと落とし、
真紀は少年の前に膝をついた。
ズボンとブリーフを腿まで下げた少年のペニスは、上を向いて勃起していた。
気が強く、誇り高い真紀が、
男の前にひざまずく姿など、それまでの聡史には想像すら出来なかった。
「真紀、咥えろ」
真紀の唇に少年のペニスが押しつけられた。
今日の朝、いつものように聡史と一緒に朝食をとった姉だった。
朝の挨拶を口にした、香り高いコーヒーを口にした、姉の素敵な唇。
その唇に、赤むけた少年のペニスが押し付けられていた。
(姉さんっ)
聡史が見つめ中、
姉の真紀は自ら、そのペニスを口に含んでいった。
聡史には、姉の魂が抜けているように思えた。
少年が頭をつかみ手前に引き寄せられても、
真紀は眉一つ動かさず、されるままになっていた。
その光景は、確かに聡史を興奮させたが、彼は少なからず不満を持った。
もっと、屈辱に耐える無惨な姉の姿を見たかった。
聡史の精神は、少しづつ狂い始めていた。
真紀の唇がこじ開けられ、野太い少年のペニスが半ばまで埋まっていた。
「いい気持だ、ぞくぞくする、
それに真紀のフェラチオ顔、たまんねえや」
真紀の整った顔立ちのなかで、唯一ゆがめられた口許を少年は何度ものぞき込んだ。
「もう出そうだ、真紀、全部飲めよ、いいな」
少年は、真紀の頭の角度をさまざまに変え、前後に揺さぶった。
「おおっ、出すぜっ」
少年が精液を放つあいだすら、真紀はじっとしていた。
しかし、精液を飲み下した後も冷めた表情のままだった真紀が、
突然こみ上げる嘔吐感に背中を折りまげた。
(あんな姉さん、見たことない)
激しく咳き込む真紀の姿は、聡史を満足させた。
不様に両手をついて嘔吐を繰り返す姉の姿に、聡史は興奮した。
真紀の体は、意志の力だけではどうにもならないほど、
少年の放った精液を受けつなかった。
「けっ、そんなに俺が嫌かよ」
少年は真紀の髪をつかんで顔を引き起こした。
咳きこみながらも結局、
何も吐き出せなかった真紀は息を乱し、その唇は紫色に血の気を失っていた。
(姉さんがいじめられてる)
聡史は新たな涙を流した。
涙を流しながらも、聡史は高まった興奮に抗しきれず、一度目の射精をした。
少年に命令された真紀が、サマーセーターを脱いでいた。
頭から抜きとり、柔らかい髪がみだれて額にかかっても気にする素振りも見せず、
真紀はジーンズの留めボタンに手をかけた。
ファスナーを下ろすと、デニム特有の乾いた音をさせてジーンズを脱いだ。
丁寧に折りたたまれた衣服のそばで、真紀が下着姿をさらした。
「今日も白か、
まあ、そういう色気のないやつが似合うんだよな、真紀には」
すでに裸になった少年はソファに座り、
スポーツタイプの下着が形どる小ぶりな乳房のふくらみや、
恥丘の柔らかで息吹くような盛り上がりを目で楽しんだ。
同時に、聡史も楽しんでいた。
姉の下着姿を見るのは、初めてだった。
「ブラジャー、外せよ」
乳房を隠そうともしないで真紀がブラジャーを取りさった。
「こっちへ来いよ」
言われるままに真紀は、ソファに座る少年の前に立った。
少年は右手で乳房をもみ、
そして左手でショーツに包まれた恥丘をすくい上げるように嬲った。
「一週間しかたってねえのに、
へへっ、女にされてオッパイが柔らかくなったじゃねえか」
少年は無造作に、真紀の硬くしこった乳首をひねり上げた。
さすがの真紀も「うっ」と、うめいてその身を硬直させた。
少年はへらへらと笑った。
「真紀、次はパンティーだ」
それまで一切の感情を見せなかった真紀も、
少年の目の前での脱衣には、女として躊躇いがあった。
ショーツのふちにかけた指先が、どうしても動かなかった。
「なんだよ真紀、恥ずかしいのかよ」
そんな少年の揶揄する言葉を振り払うかのように、
真紀はさっとショーツを下ろし、つま先から抜きとった。
脱いだショーツをサマーセーターとジーンズの間にしのばせると、
真紀は少年の真正面に立った。
リビングの入口に身を隠す聡史の目には、真紀の横向きの姿が映った。
(あれが、姉さんの裸)
なめらかに反った背中と逆のラインを描く臀部の丸みと、
その反対にある陰毛の薄いかげりを、聡史はじっと見つめた。
見つめながら、聡史はブリーフの中に二度目の射精した。
「なあ、縛ってもいいだろ」
リュックからロープを取りだし、少年は真紀の後ろにまわった。
両腕を背中で縛り、余ったロープを胸元にもかけた。
雑な縛り方だったが、真紀の乳房を無残に歪めるには充分だった。
少年は真紀をリビングの絨毯に押し倒すと、乳首に吸いついた。
「真紀、おまえって不思議な女だよなあ
顔は恐ろしいほどクールなのに、体はほんと、可愛いんだよな」
少年は乳首を執拗に吸った。
そして時おり、上目使いに真紀の表情を窺った。
身じろぎひとつしない真紀の表情には、いささかの変化もなかった。
「あのなあ、少しは色っぽい顔しろよ」
真紀の足元に移動した少年は、足首から太腿へ舌を這わせ、
そして両手で真紀の足を広げていった。
「けっ、澄ました顔してるくせに、濡れてるじゃねえか」
少年が股間に顔を寄せた。。
潤いを見せる真紀の膣に人差し指を挿入しながら、陰核を吸った。
真紀の腰がぴくっと反応した。
「こんなに濡らして、感じてるんだろ」
きつく陰核を吸われた時、
一瞬、腰しを少し浮き上がらせたものの、真紀の表情は変わらなかった。
(あの姉さんが、濡れるなんて)
聡史には、姉の股間の様子は見えなかったが、
胸元を縛られ、人の字に身体を開く姉の姿は刺激的だった。
姉の開いた股間では、少年の頭がうごめいていた
少年は真紀の両足を折りたたみM字に広げると、
ペニスを膣口にあてがい、挿入の姿勢をとった。
(姉さんが、 、犯される、 、)
姉が犯される、 、
その現実は、聡史をこのうえない興奮へと導いた。
聡史は、もはや狂っていた。
「真紀、気持ちよくさせてやるからな」
亀頭が膣口に埋まっても
真紀はわずかに顎をそらせただけで、そん表情に変化はなかった。
「やっぱりきついな」
ペニスを根元まで入れると、
少年はゆっくりと出し入れを繰り返した。
「へへっ、また血が出てるぜ」
先週の傷口が治りきっていないのか、ペニスをうすく染める出血だった。
少年は、余裕を持って,腰を使った。
聡史には,
蒼白かった姉の顔が、少し赤みがかってきたように見えた。
少年の腰の動きと同時に、淫らな音が聞こえた。
ぬかるみに足を入れたような、そんな音だった。
「真紀、こんなに濡らして、感じてるんだろう」
膣内は濡れてうねっているのに、真紀は無表情だった。
「まったく、面白くねえ女だぜ」
少年は腰の動きを早めた。
「まあ、そこがおまえのいいとこだけどな、
おっと、そろそろ出すぜ」
(あいつ、姉さんの中に)
少年の腰の振るえと、眉間にしわを寄せる姉の顔を見て、
聡史は射精が膣内へなされたことを知った。
少年は真紀をうつ伏せにした。
「まあな、先週まで処女だった真紀をイカせるのは無理かもな、
そのぶん、尻の穴で楽しませてやるからよ」
すでに真紀は何をされるのか悟っているかように、
少年に尻たぶを押し開かれてもじっと目を閉じたまま動かなかった。
(あいつ、姉さんに何をするんだろう)
聡史にはよく見えなかったが、
少年は手にしたものを姉の臀部に押しつけた。
「っく、」
低いくぐもった呻き声と共に、
姉の尻たぶが痙攣したように見えた。
(姉さん、 、浣腸されたんだ、 、)
絨毯の上に転がるつぶれたプラスチック容器を見て、
聡史にも少年が何をしたか分った。
少年は転がっている容器を足先で払いながら移動し、
真紀の頭の前にあぐらを組んだ。
「効いてくるまで、フェラチオしてもらうぜ」
うつ伏せの真紀の髪をつかんで顔を起こし、少年はペニスを咥えさせた。
少年が背を向けているため、聡史には真紀の顔が見えなかった。
(邪魔だよ,姉さんの顔が見えないじゃないか)
もはや聡史は,狂気の中にいた。
少年が真紀を立ち上がらせた。
聡史が慌てて廊下の角に身を隠すと、
背の低い少年が、両腕を縛めた真紀を引き立てていった。
さすがに聡史もトイレまでのぞくことは出来なかったが、
扉が開け放たれてあるのか、
少年の声と、激しい排泄を想像させる破裂音がよく聞こえた。
「ひえー、やっぱり臭せや、
真紀、今日は硬いクソはでないのか」
少年の嘲る笑い声が聞こえた。
「なんだよ、もう終わりかよ、
んじゃ、拭いてやるから、尻をこっちに向けろよ」
ころころとトイレットペーパーを引きだす音がした後、真紀の声が聞こえた。
「私にさせて」
「ばかやろう、
おまえが嫌がるから、俺は面白いんだよ」
やがて、紙のこすれる音まで聡史には聞こえてきた。
(あの姉さんが、赤ちゃんみたいに、お尻まで拭かれてるんだ)
誇り高い姉がどれほどの屈辱に耐えているか想像すると、
聡史は残忍な疼きに酔いしれた。
少年に背中の縛めをつかまれ、深くうなだれて廊下をもどる真紀の姿に、
聡史の倒錯した性欲はさらに刺激された。
「じゃ、尻の穴で楽しませてもらうぜ」
ソファの肘掛に真紀の腹部をのせ臀部をつき出す格好にさせると、
少年は肛門にローションを塗りこんだ。
(嘘だろ、こいつ、姉さんのお尻まで犯すのか)
両手を使えない真紀は、ソファに顔を押しつけられていた。
このときも聡史には、少年の背中が邪魔になって姉のすべてを見れなかった。
その姉に、少年が中腰になってのしかかっていった。
「くっっ、 、」
ソファから真紀の顎が浮き上がり、
背筋をこわばらせて姉の上体が反り返った。
「っ、っぐ」
息を詰らせながら苦しみに呻く真紀の声が聡史を興奮させた。
聡史の目の前で、
少年の腰は、複雑に、荒々しく動いていた。
よほど辛いのか、真紀はソファと平行になるほど身を反らし、
宙に浮いた肩を左右によじった。
(凄い、犯される姉さん、凄いや)
聡史のブリーフの中は、精液であふれていた。
少年が雄叫びをあげて射精を果たした後、
真紀は力なくソファから崩れ落ち、絨毯の上に突っ伏した。
「よかったぜ、真紀」
少年は真紀の縛めをゆっくりと解いていった。
「へへっ、この身体なら、
結婚してもせいぜい旦那を悦ばすことができるぜ、 、
前も後ろもな」
そう言って少年は大きな声で笑った。
その手は、真紀の尻たぶを割り、股間を好き勝手に嬲っていた。
「もう満足したでしょう」
真紀の冷たい声が響いた。
「出て行って」
これ以上、少年の言い成りになるつもりはないと、
言わんばかりの冷たい声だった。
「けっ、分かったよ、出て行くよ」
服を着た少年が、うつ伏せのままじっとしている真紀に声をかけた。
「心配すんなよ、二度と姿は見せないよ、
白石さんの前にはね、それじゃ、あばよ」
聡史は廊下の隅に慌てて身を隠した。
その聡史が隠れて見送るなかを、少年は悠然と出て行った。
少年が肩にかけたリュックの中には、『つばさの会』の案内書が入っていた。
少年の次の獲物は、、真紀の母親、鏡子だった。
しばらく廊下の隅でじっとしていた聡史が、
リビングの様子を見に行こうと身を乗り出した時、全裸の真紀が廊下に出てきた。
(ああ、姉さん)
聡史は慌てて首を引いたが、その目は真紀の後姿をとらえて放さなかった。
無惨に汚されたはずの姉の後姿は、それでもなお美しかった。
(そうか、姉さんお風呂に行くんだ)
浴室に入っていく姉の姿を確かめて、聡史は足を踏み出した。
聡史はリビングに向かった。
目的は、そこにあるはずの姉の下着と、少年が置いていったビデオ。
聡史の目は、赤く濁っていた。
彼はすでに、狂気のなかにいた。
聡史はまず、姉の下着を手にとった。
ジーンズとサマーセーターの間に、隠すように忍ばせてあった二つの下着を、
聡史は震える指先でつまみあげた。
(姉さんのブラジャーとパンティー)
洗濯されたものではない、先ほどまで姉が身につけていた下着。
(姉さんの匂いだ)
ブラジャーのカップの内側を、聡史は指先でなぞり、そして匂いを嗅いだ。
ほのかな石鹸の香りに混じって、甘い汗の匂いがした。
そのブラジャーを肩にかけ、聡史はショーツを両手にした。
恐る恐る、ゆっくりと、その瞬間を楽しむように、
姉の股間を覆っていた部分を裏返した。
(あっ、シミだ、
あの姉さんが、パンティーにシミを付けてる)
薄っすらと縦についた、灰色がかったそのシミに、聡史は鼻を押しつけた。
(姉さんって、こんな匂いだったんだ)
何度も深く吸いこんだ。
聡史にとって、初めて嗅ぐ女の匂いだった。
その匂いに恍惚とする聡史は、
テーブルの上に置かれたままになっているビデオテープに手を伸ばした。
聡史は笑っていた。
と言うより、その顔は醜く歪んでいた。
リビングにある大型のテレビの画面に、
複数の男達によって押さえつけられる真紀の姿が映った。
姉の、男達を制止しようとする叱責の声がスピーカーからもれた。
(姉さんが、 、レイプされる)
聡史は、大きな画面に映る姉の姿にくぎ付けになった。
見たことのない二人の少年が姉の手足を押さえつけ、
さっきの少年が、姉の腰に馬乗りになっていた。
次々と服を脱がされ、素肌をさらしていく姉。
その姉は浴室に入ったきり、出てくる気配がなかった。
作り物ではない、本物のレイプシーンに、
聡史は浴室の姉を忘れ、画面に映る姉の姿を食い入るように見つめた。
真紀は何度も身体を洗い、熱いシャワーを浴びつづけた。
どんなに洗い流しても、健一によって刻み込まれた汚辱感は消えなかった。
消えないのは、汚辱感だけではなかった。
シャワーを冷水に切り替えても、気持ちは鎮らなかった。
(私は、 、 )
真紀は唇を噛みしめた。
(私の体は、 、 )
激しいシャワーの飛沫の中に、真紀はその身をさらした。
(あのとき私は、 感じていた)
体に残る熱い血が、否応もなくその事実を真紀につきつけた。
健一に犯されたとき、真紀はことさら無表情を装ったものの、
その体ははっきりと、女の反応を示していた。
どうして女は、こんなに弱いのか、 、
真紀は本当に口惜しかった。
どんなに心で拒絶しても、男を受け入れてしまう哀しい女の体。
女の体をもって生まれた自分が、口惜しくてならなかった。
バスタオルで身を包み、浴室から出た真紀は、
リビングに人の気配を感じた。
(あの子が戻って来たのでは、 、 )
玄関に鍵をかけなかったことを悔やみながら、真紀はリビングへ向かった。
リビングの入口に立った真紀は、信じられないものを見た。
そこでは弟の聡史がこちらに背を向けてテレビの画面を見つめていた。
画面には、
健一に犯される自分の姿が映っていた。
健一の卑しい笑い声がスピーカーから響く室内で、
弟の聡史が、ブラジャーを肩にかけ、ショーツを頭にかぶっていた。
真紀はあまりの光景に言葉を失った。
しかも聡史は、尻をむき出しにして股間に手をやり、
その腕はしきりと動いていた。
(聡史、 、どうしてあなたが)
がくっと、後ずさった真紀の足音で、聡史がふり向いた。
「あれえ、 、姉さん」
聡史の声は人間のものとは思えず、
あてもなく彷徨う鳥の鳴き声のようだった。
ショーツを頭から脱捨ると、
聡史はさっと立ち上がり、真紀に襲いかかった。
「聡史、やめなさいっ」
あっという間にリビングに引きずり込まれ、真紀はバスタオルをはぎ取られた。
真紀は思うように身体が動かなかった。
夢を見ているようだった。
襲いかかってくる弟の姿はスローモーションのようにはっきりと見えているのに、
弟の動きを遮ることが出来なかった。
それほど真紀は動転していた。
「聡史っ」
はっと気づいた時にはバスタオルが両手に巻きつき、
その端がソファの脚の一つに結び付けられていた。
両手を頭の上で固定されると、もはや真紀には抗う術がなかった。
聡史の指先が、乳房に食い込んだ。
「正気になりなさい、聡史っ」
「姉さん、僕の真紀姉さん」
聡史は、鳥のような甲高い声で、何度も姉の名を呼び、
真紀の閉じ合わせた太腿に手を差し込んだ。
両手の自由を奪われている真紀は、弟の力に勝てなかった。
「あなたまさか、 、聡史っ」
「姉さん、 、姉さんっ」
聡史のペニスはこれまで何度も射精したにもかかわらず、硬く勃起していた。
真紀の両脚を裂き、
その間に身体を割り込ませると、聡史は陰部にペニスを突きつけた。
しかし、膣への挿入は、童貞の聡史には難しかった。
「聡史っ、やめなさいっ」
要領を得ない聡史も、何度か腰を突き出すうちに、
ペニスの先端が膣口をとらえた。
「、 、 、聡史、正気になって」
「姉さんと、僕はするんだ」
「馬鹿っ、 、こんな、 、」
聡史の腰に、力が加わった。
「やめなさい聡史っ、 、やめなさ、 んっっ」
弟のペニスが入ってきた。
「さ、と、し、 、」
実の弟との交わりは、真紀に深い哀しみをもたらした。
膣を押し広げているのは、まぎれもなく弟の男性器だった。
「、 、なんて、ことを、 、」
その男性器が、律動を始めた。
優しさや、いたわりの欠片もない乱暴な律動だった。
「姉さんは、 、僕のものだ」
聡史は、姉の体にしがみついて腰を使った。
その目には狂気が宿り、視線が定まっていなかった。
腰の動きがいっそう荒々しくなり、
急激にペニスの体積が増した。
「聡史っ、だめ、もうやめて」
弟の射精が近づいたことに、真紀は恐怖を覚えた。
「私から離れなさい、 離れてっ、 、いやっ」
弟の熱い精液を、真紀は子宮口で感じた。
真紀の閉じた瞼から涙が流れ出た。
(お母さん、 、私、 、)
真紀の心に、優しい母の顔が浮かんだ。
(お母さん、 私、死にたい、 、)
大型テレビの画面は、
真紀が少年達の嬲りものになっている姿を映していた。
聡史は笑っていた。
赤く濁った目で笑いながら、真紀の手に巻きついているバスタオルを解いた。
狂人のものとしか思えない、奇妙な声で笑いながら、
ビデオデッキからテープを抜くと、
床に散っていた真紀のブラジャーとパンティーを拾い上げた。
そして彼は、それらを持って、二階の自分の部屋に上がって行った。
時刻は、午後の一時をすぎていた。
野坂健一は、家に帰るとベッドに寝転がり、
白石家から持ち帰った『つばさの会』の案内書を広げた。
真紀の母親のことが、気になって仕方なかった。
午前中、
真紀の身体を貪ったばかりなのに、早くも下半身が充血してきた。
(くそっ、我慢できねえ)
案内書の『局長 白石鏡子』という文字をじっと見つめた。
(やっぱり今日、犯りてえ)
駅で見た鏡子の姿が、健一の頭から離れなかった。
きちんとした家庭の主婦で、
しかも立派な仕事をもつ大人の女。
その、はるかに年の離れた美しい女を、自由にしてみたかった。
思う存分、嬲ってみたかった。
(犯ってやる、 、俺の女にしてやる)
健一は考えた。
真紀との約束は、とりあえず守るつもりだった。
それは今、気丈な真紀を追い詰めすぎると、
本当に告訴される危険を感じたからだった。
ダビングしたテープを真紀に渡した健一は、
枕もとに置いてあるマスターテープを大事そうに撫でた。
(へへっ、これさえあれば)
鏡子の体をたっぷり楽しんだ後、ふたたび真紀を呼び出すつもりだった。
(母親と娘をならべて、 、へっへへ)
『つばさの会』はこの地域の中でも、
役所や大学などが密集する場所にオフィスを構えていた。
大きなビルの三階、その全フロアを占めるオフィスには、
二十名以上のスタッフが献身的に活動していた。
ボランティアという性格上、
その運営費は寄付や公的援助によって支えられており、
会を維持していくための対外的な交渉も、
主宰者である鏡子の重要な役目だった。
その日も、
鏡子は午後から役所に出向き、
担当官と『つばさの会』の運営について協議した。
鏡子がオフィスに戻った時は、もう五時まえだった。
「局長、お客様がお待ちです」
若い女性スタッフが、席につきかけた鏡子を呼び止めた。
「中学生のようですが、野坂君という男の子が、
局長にお会いしたいと、 、
とりあえず二番の相談室にお連れしました」
「そう、分りました、ありがとう」
(以前お世話した方の息子さんかしら)
相談にのった女性達のことはすべて記憶している鏡子だったが、
『野坂』という苗字に覚えがなかった。
健一は案内された部屋の中を見回した。
無駄な装飾は一切なかったが、
清潔で、落ち着いた色合いの壁に囲まれた小空間だった。
角にはビデオデッキとテレビがあり、
それを見た健一はにやりと笑った。
健一は、真紀を襲った時のビデオテープで鏡子を脅し、
自分の言い成りにさせるつもりだった。
(やっぱ、画面が大きいほうがいいよな)
ビデオカメラの小さな液晶画面では、やはり迫力に欠けた。
AV機器の備えてある部屋に、健一は自分の運のよさを感じた。
(へへっ、たっぷり犯ってやるぜ)
軽いノックの音に続いて、ゆっくりとドアが開いた。
「お待たせしました、白石と申します」
相手が少年とはいえ、鏡子の挨拶は丁寧だった。
「僕、野坂健一といいます、こんにちは」
二人は六人がけの会議用テーブルをはさんで椅子に座った。
(す、凄えや、なんて女だ)
まじかで見る鏡子の美しさは際立って見えたが、
それよりも健一を驚かせたのは、鏡子からにじみでる威厳だった。
直に対面すると、その威厳に圧倒されそうになった。
(やべえぞ、この女には負けるかもしれねえ)
中学三年の少年とはいえ、ずる賢い浩二は、
目の前の鏡子に、人としての格の違いを瞬時に見てとった。
(くそっ、この俺がびびるなんて)
「野坂君でしたね、
私に何かお話があるように伺いましたが」
「あの、僕は新聞記者の白石さんから、
いじめの取材を受けた者なんですけど」
声を出すことによって、健一はいくぶん落ち着きを取り戻した。
(負けてたまるかよ)
健一は、艶やかで品のある鏡子の口許を見つめた。
(あの小さめの口で、絶対フェラチオさせやる)
鏡子に圧倒され萎縮した健一だったが、
それだけにこの大人の女性を自分のものにしたかった。
(この女が、どんな声で悶えるのか、楽しみだぜ)
鏡子の威厳をひき剥がし、
快楽の極みにのぼりつめる姿を見てみたかった。
「そう、あなたが、
勇気のある立派なことだと思いますよ」
「はあ、それで、その時のことで、
ちょっと観てもらいたいものがあるんです」
(負けてたまるか)
健一は自らを叱咤し、立ち上がった。
そして部屋の角にあるビデオデッキに向かった。
いぶかしげに少年のすることを見ていた鏡子は、
テレビの画面に映し出されたシーンに息をのんだ。
鮮明で、衝撃的な映像だった。
一人の女性に、三人の少年達が群がっていた。
しかも必死に抵抗するその女性は、
まぎれもなく娘の真紀だった。
ビデオは編集してあるようで、
次々と場面が変わっていった。
服をはぎ取られ、両足を無残に割られた娘に、
少年がのしかかっていった。
さすがの鏡子もしばし呆然とした。
しかし、
娘の叫び声がスピーカーから聞こえた時、鏡子は我に返った。
さっとビデオデッキに歩みより、
その電源を切った。
(この少年が)
娘を襲った少年達の中に、
目の前で椅子に座っている野坂健一の顔があった。
(真紀、つらかったでしょう)
鏡子は今すぐにでも、娘を抱きしめてやりたかった。
何か悩みがあるのは分っていたが、
まさかこれほどの事とは、思いもよらなかった。
(なんてことに)
娘の苦しみを想うと胸が詰った。
「オバサン、勝手に止めるなよ、
これからが、いいとこなんだぜ」
健一が、卑猥に笑った。
「へへっ、あいつ処女だったぜ、
それによお、ついでだからケツの穴の処女も頂いたぜ」
へらへらと笑う健一に、
鏡子は素早く近づき、腕をふり上げた。
バシッ、
という大きな音が静かな室内に響いた。
鏡子は生まれて初めて、人の頬を叩いた。
「オバサン、やってくれるじゃねえか」
健一はその衝撃で逆に開き直り、本来のふてぶてしさを取り戻した。
「あんたの娘、いい味してたぜ、前も後も、へっへへ」
「お黙りなさいっ」
鏡子は怒りにふるえた。
レイプという暴力のみならず、
変質的な辱めまでも娘に加えた、目の前の少年が許せなかった。
なんとしても許せなかった。
「あなたは、男のクズだわっ」
鏡子はふたたび、少年の頬を平手打ちした。
「、 、痛てえなあ、何回もぶったたきやがって、
おいオバサン、この二発は、高くつくぜ」
(やはり、 、恐喝)
少年の目的が、ゆすりであることを鏡子も察していた。
鏡子はこれまで、卑劣な恐喝には毅然とした態度でのぞみ、
決して屈してはならないと信じてきた。
事実、その信念のもとに女性たちの問題を解決してきた。
鏡子は、目の前の少年に対しても、固い信念を貫くつもりだった。
「あなたはこの上、お金まで要求するの」
「えっへへ、それがさあ、金じゃないんだよね」
健一の顔が卑猥にゆがむ。
「あのさあ、
オバサンの身体で、払って欲しいんだよね」
鏡子は健一の言葉に、我が耳を疑った。
「なんですって」
「セックスさせろって、言ってるんだよ」
「、 、 、」
鏡子には、いまだ中学生の少年が、
はるか年上の自分を性の対象にしていることが信じられなかった。
「なんだよ、嫌なのかよ、
だったら、あいつを呼び出して、また一発やるしかねえな」
外見は少年でも、
健一の目は、男の欲望でぎらついていた。
その目が、鏡子の全身を露骨に舐めまわした。
これまで鏡子は、
寄付を募るために企業の経営者や、役職のある男たちと数多く会ってきた。
尊敬できる立派な男性がほとんどだったが、
なかには胸元や腰のあたりを、露骨に見つめる無礼な男がいた。
時には、寄付の見返りに体を要求する者さえいた。
そんな男を前にしたとき、
鏡子は、自分が女であることが堪らなく辛かった。
真剣な姿で相手に対する自分が、
男の卑下た性欲の対象となることが堪らなく悲しかった。
もちろん鏡子も、
女として美しくありたいと思う気持ちはあったが、
それは愛する夫のためであった。
学生時代に知り合い、卒業と同時に結婚した鏡子は、
男性を夫しか知らなかった。
優しく愛してくれる夫に『綺麗だ』と言われることが、
鏡子の誇りでもあり、喜びだった。
その鏡子に、
中学三年の少年が性欲をむき出しにしてきた。
自分の息子ほどに、歳のはなれた少年に素肌をさらすことなど、
まして性交などとは、
鏡子にとって想像すら出来ない事だった。
「へへっ、あいつ、親孝行な娘だぜ、
マジな顔して『両親には迷惑かけないで』なんてよお、
今日も、自分から服を脱いで、俺に抱かれたんだぜ」
鏡子は、言葉を失った。
(この子は、 、)
「駅で、あいつに声かけたらよう、
へっへへ、すぐにヤラせてくれたぜ」
(この子は、 、今日も真紀を、 、)
人一倍、正義感の強い娘だった。
その娘の、卑劣な脅しに屈しざるをえなかった心情を思うと、
鏡子は親として、また同じ女として、心で泣いた。
「まったく、笑っちまうぜ、
あいつ、いい歳こいて今日も血ながしてよお、
そのくせ、きっちり濡れてたりしてなあ、
へへっ、尻の穴のときゃあ、泣いて痛がってたぜ」
「、 、あなたという子は」
椅子に座って、ぺらぺらと喋る少年に、
鏡子は怒りの顔を向けた。
目の前の少年を、厳しく罰したかった。
告発し、罪の償いをさせたかった。
「なんだよオバサン、そんな恐い顔するなよ、
仲良くしようぜ、オ、バ、サ、ン、 、へっへへ」
鏡子は、少年に『出で行け』と言いたかった。
しかし、言えなかった。
苦しみ、悩んでいる娘の顔が浮かんだ。
鏡子の固い信念が、少しづつ、揺らぎ始めていた。
「駅でよお、あいつと一緒にいるオバサンを見てよお、
チンポが思いっきり立っちまってよお」
上目使いに淫靡な視線を向けてくる少年から、
鏡子は顔をそむけた。
少年の顔は、正視に耐えない醜悪な形相だった。
(こんな子供に、 、)
「なっ、いいだろ、セックスさせろよ、
あいつの代わりに、
オバンの体で我慢してやるって言ってるんだぜ」
健一の片手が
ぬっと伸びて、鏡子の腰をなでた。
全身を緊張させた鏡子は、無礼な少年の手を、さっと押さえつけた。
本当は、払いのけたかった。
しかし、それが出来ない鏡子は、
汚らわしい少年の手の動きを、押さえて封じるのが精一杯だった。
もはや鏡子には、はっきりとした拒絶が出来なかった。
「真紀には、 、二度と近づかないと、約束なさい」
「おや、俺とセックスする気になったのかよ」
「約束なさいっ」
鏡子が、血を吐く思いで口にした言葉すらも、健一は揶揄した。
「けっ、オバンのくせに、偉そうに言うなよ、
ほんとは若い男とセックスしたくて、うずうずしてんだろう」
健一は目をぎらつかせて、鏡子の唇と腰を、交互に見た。
「まあな、あんたが俺を、満足させてくれたら、
あいつには手を出さねえよ」
「本当、なのね」
「嘘じゃねえよ、
そのかわり、俺の女になってもらうぜ」
その約束には、何の保証もなかった。
健一のような男は、約束など平気で破りそうな気がした。
結局は娘の真紀を、護りきれないかも知れない。
それでも鏡子は、決心した。
女として、そして夫のある妻として、
堪えがたく、つらい道を鏡子は選んだ。
鏡子は、全身から力を抜いた。
自由になった健一の手が、いやらしく腰を這いまわった。
「へっへへ、覚悟はできたみてえだな」
鏡子は無言で、顔を伏せた。
「それにしてもよお、見た目はあいつより細い体してるくせに、
意外と、ここはむっちりしてるんだな」
スカートに包まれたヒップラインを、揉むように撫でられても、
鏡子はじっと耐えた。
「オバサン、パンティー、脱げよ」
さすがに鏡子は、はっとして顔を上げた。
「あなたは、 、ここで私を」
「なんだよ、気の利いたホテルで、
優しく抱いてもらえるとでも思ったのかよ、
馬鹿やろう、甘えるんじゃねえぞ、
さっさとパンティー脱げっ」
家庭の問題に悩む女性たちに、
心を尽くして接してきた神聖な場所で、少年は体を要求してきた。
無駄とは知りつつ、
鏡子は言わずにはいられなかった。
「仕事をもつ者にとって、
職場がどれほど大切な所か、わからないのっ」
「へっ、だから興奮するんじゃねえかよ、
ごちゃごちゃ言わねえで、さっさと脱げよ、鏡子っ」
「あなたに、名前を呼び捨てにされる覚えはないわ」
「なに気取ってんだよ、
俺に抱かれる気になったんじゃねえのかよ、
あいつの身代わりに、俺の言うことを聞くんじゃねえのかよ、
どうなんだよおっ」
鏡子はもう、少年に言葉を返すことが出来なかった。
少年は、年上の美しい女性に、冷たく命令した。
「鏡子、パンティーを脱げ」
深くうな垂れる鏡子だったが、
その顔は、きちんとセットされた黒髪では覆い隠せなかった。
苦渋に満ちた鏡子の表情を、
冷酷な目で楽しんだ健一は、もう一度、命令した。
「パンティーを脱げ」
鏡子は、
細い指先をスカートの裾にからめた。
セミタイトのスカートがまくれ上がるのを気遣いなが、
両手をその中に差し込んだ。
避けることの出来ない少年の視線から、わずかでも逃れようと、
鏡子は身をかがめて、可能な限り下半身の露出を防いだ。
「オバンのストリップか、
へっへへ、こいつは見ものだぜ」
スカートの中を覗きこんでくる悪辣な少年に、
鏡子は恨みのこもった目を向けた。
「はやく脱げよ」
刺さるような視線の中で、
鏡子は下着を脱いだ。
ストッキングを足先から抜き取る際、
一度は脱いだハイヒールを、
ふたたび履くように命じられた。
鏡子は、素足に黒い光沢のあるハイヒールを履いたまま、
微かに震える両手で、ショーツを下ろしていった。
健一は、かつてないほどに興奮していた。
ついさっき、折り目正しい挨拶をして、
この部屋に入ってきた美しい女が、目の前で下着を脱いでいた。
健一にとって、こんなタイプの女は初めてだった。
対するだけで圧倒され、萎縮させられてしまう女。
少しでも気を抜けば、
鏡子にすがりついて、自分の悪行のすべてを泣いて詫びそうになった。
健一は、そんな自分が不思議でならなかった。
勝てる、と思い、ふてぶてしさを取り戻した自分が、
次の瞬間には、目の前の女に恐れをなしていた。
だからこそ健一は、
ことさら乱暴な言葉を使い、鏡子の年齢を侮辱した。
そうでもしなければ、本当に負けてしまいそうだった。
だが、
弱気な心とは裏腹に、欲望だけは燃え続けていた。
心が萎縮すればするほど、卑劣な欲望がたぎった。
自分を恐怖させるほどの女を、徹底的に泣かせてみたかった。
健一は、
鏡子が隠すような仕草で後にまわしたショーツを、強引に奪い取った。
これまでの健一は、狙った女の体には執着したが、
女の身につけていた下着などには、一切の興味がなかった。
しかし、今度ばかりは違った。
健一は、鏡子のすべてが知りたかった。
下着はもちろん、足の爪の形さえも、
鏡子に関わるすべての事を、知りたいと思った。
「なにをするのっ」
下着を取り戻そうとする鏡子から、
飛び退くように椅子から立ち上がると、健一は奪った下着を広げた。
「オバンのくせに、シャレたパンティーはいてるじゃねえか」
上品な刺繍で縁取られた白いショーツを、目の前にかざした。
そして、見せつけるようにショーツを裏返した。
「やめてっ、 、」
あまりのことに大きな声を出した鏡子も、すぐに顔を伏せた。
顔を上げられなかった。
その日は、暑い一日だった。
外出の際、強い陽射しで、汗をかいた。
それに、何度かトイレにも行った。
日々、生活し、生きている女の証が、そこには記されているはずだった。
「へえ、 、あんたみたいな女でも、
やっぱり、パンティーはこうなるんだな、
しっかり付いてるぜ、あんたのシミがよお」
「やめてっ」
鏡子は顔を伏せたまま、
首すじまでも赤く染めて、少年に抗議した。
「なんだよこのシミは、
こんなパンティーはいて、偉そうに澄ました顔してたのかよ、
まったく笑わせるぜ」
程度の差こそあれ、
女性が下着に汚れをみせてしまうのは仕方のないことだった。
鏡子の微かなシミは、女性として慎ましいもので、
不潔な匂いなど皆無だったにもかかわらず、
健一はことさら大げさに騒ぎ立てた。
「へっへへ、鏡子、おまえは、こんな匂いだったのかよ」
匂いを嗅ぐ鼻音までさせる健一に、
鏡子の心は傷つけられていった。
目も眩むほどの羞恥に、鏡子は立っているのが精一杯だった。
その時、
ドアの側にある内線電話が鳴った。
はっとした鏡子は、
顔を赤らめたまま、その電話を見つめた。
「電話にでないと怪しまれるぜ、
さっさとでろよ、ノーパンのままでよお、へっへへ」
受話器をとった鏡子は、
事務連絡と、スタッフたちが帰宅する旨を受けているようだった。
「分かりました、
その書類は後で目を通しておきます」
健一は、鏡子のうしろ姿につい見とれた。
背すじをすっと伸ばしたその姿は、
今日の朝、駅で自分を魅了した美しい女そのものだった。
白いブラウスに、グレーのスカート。
地味な服装が、
鏡子を性的なものとは全く無縁な存在に見せていた。
だからこそ余計に、
手にした鏡子のショーツが、健一を興奮させた。
それは、鏡子のような女でも、
裸にむけば男を悦ばす性器をそなえた、生身の女であることを告げていた。
(この女のなにもかも、俺のものにしてやる)
健一はドアのすぐ側に椅子を置くと、
ズボンとブリーフをずり下げ、足を広げて座った。
「、 、そう、 、分かりました、 、お疲れさま」
鏡子が受話器をおいた時、
壁に掛けてある時計は、五時半をしめしていた。
電話を終え、ふり向いた鏡子は、
少年の姿を見て後ずさった。
むきだしの股間にあるペニスは、天井を向いて勃起していた。
「あんた、たいした女だぜ、
ノーパンなのによう、よくあんな平気な声が出せるなあ」
「私が、どんな思いで、 、」
「へっ、そんなこと知るかよ、
それよりも、おい鏡子、 、」
横着な態度で、
足を広げた健一が、手前の床を指差した。
「あんたも人妻だろ、
一々言われなくても、わかるよな」
少年が何を要求しているのか、それは鏡子にも分った。
一度は覚悟を決めた鏡子でも、
だからといって、すぐにその行為ができるはずも無かった。
ドアを通して、
スタッフたちの声や、皆が帰り支度をしている様子が耳に届いた。
ここがどんなに大切な場所か思い出させるその音に、
健一の非情な声が重なった。
「早くしろよ」
「あなたは、 、どうしても私に」
「そうだよ、フェラチオさせたいんだよ、早くしろっ」
少年には逆らえなかった。
鏡子は、少年の前にひざまずいた。
(この子が、 、)
娘を犯した凶器を固く勃起させる少年に、あらためて怒りが募った。
そして子供のものとは思えない形状を目にして、
こんなもので初めての体を汚された、娘の苦しみに思いを馳せた。
(辛かったでしょう、真紀)
むっとする性臭に堪え、鏡子は上を向いてそそり立つペニスに近づいた。
(私が、あなたを護ってあげるわ)
前かがみになって、少年の股間に顔を寄せた。
そっと両手で口もとを隠し、
少年のペニスを口に含んだ。
「馬鹿やろう、手を放せ、
咥えた顔が見えねえじゃねえか」
少年は女の誇りをすべて、奪い取ろうとした。
鏡子はもう逆らわなかった。
みじめな横顔を覗きこんでくる少年に、
鏡子はペニスに歪められた口もとをさらした。
「いい顔してしゃぶるじゃねえか、
気持ちいいぜ、あんたのフェラチオ」
少年に命じられるまま、
鏡子は口もとを上下に動かし、
時には極端なまでに深く口に含み、そして舌を使った。
鏡子は心を捨てていた。
健一は、
狂おしいほど切望した鏡子のフェラチオに、ほとんど感動すら覚えていた。
ペニスに鏡子の舌がからむと、
そのあまりに強烈な快感で、一瞬、現実感を失うほどだった。
鏡子のような女に奉仕させていることが、嘘に思えた。
そんなとき健一は、
意地悪く腰を前に突き出し、
鏡子をがくっとのけぞらせて、夢ではないことを確かめた。
健一の射精を早めたのは、
肉体的な快楽よりも、異常なまでに昂ぶった精神だったのかも知れない。
「くそっ、もう出そうだ」
健一は両手で鏡子の頭を引寄せた。
「っっ、 」
くぐもった呻き洩らす鏡子の口内に、健一が容赦なく射精した。
少年から離れた鏡子は、床に青臭い精液を吐いた。
感情を捨てて口交した鏡子も、
口の中にあふれる精液だけは、どうしても飲み下せなかった。
「てめえ、俺のものを吐きやがったな」
それを見た健一が、鏡子の髪をつかんで顔を引き起こした。
「オバンのくせして、なめた真似してくれるじゃねえか」
髪をつかまれ、乱暴に頭を揺すられた鏡子は、
少年のあまりに非道な振る舞いにかっと目を見開いた。
「あんなもの、反吐がでるわっ」
「なんだとお、処女だった真紀でさえ全部飲んだのによお、
オバンのてめえが何いってやがる」
怒りに震える鏡子に、
健一は卑しい顔を向けた。
「服ぬげよ」
そして健一は、残忍な表情を見せた。
「素っ裸になって、オバンになった身体を見せてみろよ、
どうせ胸は垂れて、腹はぶよぶよに肉がついてるんだろう、
思いっきり笑ってやるから、見せてみろよ」
年齢を重ねた女性の、
身体の変化までも嘲笑しようとする少年に、鏡子は激しい憤り覚えた。
つい今しがた、
黙って少年に奉仕した鏡子とは別人のように、
その表情は怒りに満ちていた。
鏡子は本来の気丈さで、少年に対峙した。
「そんなに見たければ、 、」
最近、自分でも気になり始めた身体の崩れを、
鏡子は、あえて堂々と少年に見せるつもりだった。
「そんなに見たければ見なさい、そして笑えばいいわっ」
ブラウスのボタンを外して素早く脱ぐと、
躊躇いもせずに白いブラジャーを外した。
少年への激しい憤りが、羞恥心を忘れさせた。
それほど、野坂健一という少年を、鏡子は憎んだ。
健一は、
その白い素肌に惹きつけられ、乳房の形に目を見張った。
わずかに左右の形に違いはあるものの、
豊かな乳房は、まだ十分その形を保っていた。
スカートで締められたウエストには、
腹部の弛みは確かにあったが、しかしそれも微かで、
体のラインを損なうほどのものではなかった。
「けっ、調子こくんじゃねえぞ、オバンのくせによお」
言葉では強がった健一も、
鏡子の体の微妙な崩れに、若い性欲を揺さぶられた。
健一は、
まさに大人の女を鏡子に感じた。
成熟した美しさに、そして鏡子という人間に圧倒された。
(負けてたまるかよ)
なおも健一は強がり続けた。
「なんだよその乳首はよお、
真っ黒じゃねえか、
真紀のやつは、ピンク色だったぜ」
広がりの無い乳輪の上にある乳首は、
濃いめに色づき、小指の先ほどに膨らんでいた。
(オバンのくせに、いい身体しやがって)
健一は、鏡子の右の乳房を鷲づかんた。
「へっ、こっちのほうが垂れてるじゃねえか」
微妙な崩れを大げさにあげつらいながらも、
健一は夢中になって鏡子の乳房を揉んた。
「さんざん偉そうなこと言いやがって、このクソオバン」
何をしても抗わない鏡子を会議用テーブルの上に寝かせると、
健一は、鏡子の乳首に吸いついた。
「まったく、鈍い体だぜ、
真紀のやつはよお、吸ったらすぐに、乳首をおっ立てたぜ」
そう言って鏡子を侮辱する健一も、
次第に固くしこりをおびてきた鏡子の乳首に、心を躍らせた。
いつしか健一は、
鏡子の体を愛撫していた。
それまでの乱暴で、噛みつくような荒々しさは無くなり、
大切なものを慈しむように、鏡子の乳房に触れた。
健一自身、
そんな自分の変化に気付かずに、鏡子の乳房を愛撫し続けた。
「オバサン、けっこう敏感じゃねえか」
鏡子の乳首はさらに固さを増し、つんと尖ってきた。
それは必ずしも単なる刺激に対する反応だけではなかった。
夫の長期不在により、
眠っていた鏡子の官能が、目覚め始めていた。
「オバサン、ひょっとして、濡らしてるんじゃねえか」
スカートの奥にある女の裂目に、
潤いの蜜がしっとりと宿っているのを、鏡子は自覚していた。
「逆らうなよ鏡子、
体を見せるって、おまえが自分で言ったんだぞ」
スカートをまくり上げられ、
陰毛をさらした股間を開かれる時、鏡子は一瞬、健一に抗った。
しかし鏡子はすぐに、
恥ずかしい反応を知られることを承知の上で、力を緩めた。
会議用テーブルの上で、黒光りするハイヒールが滑っていった。
鏡子の両足は大きく、左右に開かれた。
「あんたが、
こんなに濡らしてるとは、思わなかったぜ」
陰毛が潤いの蜜で濡れて、股間で絡み合っていた。
鏡子の陰唇は充血してほころび、中身の爛れた肉を垣間見せていた。
そして、
濡れて光る女性器からは、少年を興奮させてやまない匂いが群れていた。
「それがどうしたの、
刺激を受ければ、女なら誰でもこうなるわ」
鏡子は感情を一切含めずに、静かな声で言った。
「かん違いしないで、
あなたに触られるたびに、私は吐き気がしてるのよ」
いつもの健一であれば、
その言葉に怒り狂い、乱暴に鏡子を犯したはずだった。
だが健一は、無言でテーブルに上がり、
ゆっくりと鏡子の股間にすり寄った。
「入れてもいいんだな、鏡子」
「好きになさい、
あなたが満足するまで、いらでも相手をしてあげるわ」
鏡子も、少年に負けるつもりなど全く無かった。
侮辱され、恥をかかされた恨みを、
ことさら平然と少年を受け入れることで晴らそうとした。
それは、娘の真紀のためでもあった。
黒いハイヒールの踵が真上に向くほど、
鏡子の両足は持ち上げられ、折りたたまれた。
「入れるぜ」
濡れそぼった鏡子の膣は、
絡みつくようにして少年のペニスを呑みこんだ。
「いいぜ鏡子、結構きついじゃねえか」
さすがにその瞬間は、鏡子も辛かった。
夫のある身を、憎むべき少年に貫かれ、
その哀しみと衝撃は、鏡子に地獄を思わせた。
それでも鏡子は、無表情で少年に立ち向かった。
「あなたに誉められても、少しもうれしくないわ」
鏡子には自信があった。
確かに、体には官能の炎がともっていた。
それは分かっていた。
分かっていたからこそ、その炎を封じる自信が鏡子にはあった。
夫の交わりで、女の悦びを知っている鏡子は、
逆に自分の体を抑える手立てを心得ていた。
それは、大人の女としての自信だった。
「おまえ、感じてるんじゃねえのか
おまんこの中が、ひくひくしてるぜ」
「冗談じゃないわ、自惚れるのもいい加減になさい」
野太い少年のペニスは、
深々と鏡子の膣に埋まり、ゆっくりと巧みな動きをみせた。
荒々しい性急な行為をじっと耐えればいいと思っていた鏡子は、
自分の考えの間違いを体で感じた。
しかし鏡子には、まだ自信があった。
「こんな気持ちのいいセックスは、初めてだぜ」
午前中は真紀の体で、
そしてついさっきは鏡子の口内に射精した健一には、余裕があった。
健一は、じっくりと鏡子の体を味わった。
「ほんと、気持ちいいぜ」
「あらそう、だったら好きなだけすれ、 、っ、 、」
その衝撃は、突然やってきた。
(そんな、 、)
一気に膨れあがった官能を、鏡子は抑えきれなかった。
(どうして、 、)
「っっ、 、」
声こそ洩らさなかったが、
脊髄を突き抜けた快楽の波に、鏡子は息を詰らせ、のけぞった。
「おい、おまえ今、いったんじゃないのか」
憎らしいほど平然と、
自分ペニスを受け入れていた鏡子の急な変化に、健一も驚いた。
「いま、いっただろう」
「、 、そんなこと、 、あるはずないわ」
「嘘つけ、俺に犯られて、今いっただろう」
絶対、認めるわけにはいかない事実に、
鏡子は戸惑い、うろたえた。
(どうして、 、)
自分の体の変化が、信じられなかった。
しかしすぐに、
今度は、はっきりとした兆しを鏡子は知覚した。
(そんな、 、また)
半年近くも、夫に抱かれていなかった鏡子の体は、
彼女が思っていた以上に、男性を欲していた。
鏡子は、決して淫乱な女ではない。
事実、夫の不在中、鏡子は一度も自慰をしなかった。
鏡子は、そういう女だった。
しかし早ければあと数年で、
女の仕組が閉じてしまうかも知れない彼女の体は、
女としての最後の炎を燃やそうと、懸命になっていた。
そういう年齢の女性を、
淫乱と呼ぶのは、あまりにも酷だった。
「おまえがいくなんて、信じられねえ」
健一も異常に気持ちが昂ぶったのか、
巧みなペニスの動きに、力強さが加わった。
そして健一は、
鏡子がふたたび兆していることを悟った。
「また、いくのか、
そんなに俺がいいのかよ」
「、 、冗談じゃないわ、 、誰があなたなんかに、 、」
口ではそう言っても、鏡子の呼吸は乱れていた。
女の悦びを知っているが故に、
迫りくる快楽の大きさに、鏡子は怯えた。
先ほどよりも、はるかに大きな官能の塊を、彼女は恐れた。
「正直に言えよ、いいんだろ、
俺に抱かれて、死ぬほど気持ちいいんだろ」
「誰が、 、あなたのような、男のクズに、 、」
もう、鏡子は耐え切れなかった。
息が詰まり、その息を吐くときに、声が出そうになった。
洩れそうになる淫らな声を、
折り曲げた人差し指を噛んで、必死に防いだ。
しかしそれすらも、
健一には許してもらえなかった。
手首をつかまれ、強い力でテーブルに押さえつけられた。
「ほんとなのか、おまえ、マジにいくのか」
健一はペニスの角度をさまざまに変えて、深く鏡子を突いた。
「そんな、 、嫌っ」
鏡子はもう、後戻りできなかった。
「嫌っ、 、ああっ」
「おまえが、そんな声を出すなんて」
健一は驚きをもって、自分が交わっている女を見た。
まさか、あの鏡子が、
こんなにも乱れるとは思ってもいなかった。
「あっ、 、もう、 、」
背骨が折れるほどに、鏡子の体がうねり、浮き上がった。
そのままぴたっと体を硬直させた鏡子が、
「あっ、ああっっ、 、」
淫らにかすれる声を上げて、絶頂を極めた。
同時に、健一も精液を放って果てた。
すべてが終わり、
服を身につける鏡子を、健一は黙って見つめた。
本当は今日、
夜中まで、鏡子を嬲るつもりでいた。
しかし健一には、そんな気力が残っていなかった。
ペニスなら、
まだ充分に勃起させる自信はあったが、気持ちが萎えていた。
さすがの健一も、妖艶ともいえる鏡子の姿に、毒気を抜かれた。
(どうかしてるぜ、この俺は)
このままふたたび交わっても、
自分が征服者ではなく、鏡子の下僕になってしまいそうだった。
(くそっ、)
鏡子によって腑抜けにされた自分を、健一は歯がゆく思った。
(しょうがねえ、明日にするか)
「おい、今日はもう帰ってやるけどよ、明日また来るぜ」
健一は、ブラウスのボタンを留めている鏡子に声をかけた。
「ここの奴らが帰るころに来るからよ、
待ってろよ、いいなっ」
「あなたは、明日もここで、 、」
鏡子は少年を非難したが、その声には力がこもっていなかった。
「なんだよ、嫌なのかよ、
おまえの家に行って、真紀の前で犯ってもいいんだぜ」
「ひどい子だわ、あなたは」
「へっ、俺に犯られて二回もいったくせに、なに言ってやがる」
少年に言われて、鏡子は顔を上げることが出来なかった。
鏡子は顔を赤らめた。
「じゃあな、明日はもっと楽しませてやるからよ」
卑しい笑い声を残して、
健一は悠然と出て行った。
部屋のドアを見つめて、鏡子は泣いた。
娘を犯した少年に抱かれて、
生々しい女の反応を示したことが哀しくて、口惜しかった。
(私は、きっとまた明日も)
少年に狂わされる自分が、情けなかった。
鏡子はふと、
生命力に満ちた若い精子の恐ろしさを思った。
四十歳を過ぎた自分がまさか妊娠するとは考えにくかった。
(でも、 、)
その可能性が全く無い訳ではない。
しかもこれから先、
あの少年は毎日のように現れ、そして精液を放っていくだろう。
鏡子は中年期の自分が、
息子と同い年の少年によって妊娠させられる現実に恐怖した。
そして鏡子は、若く健康な娘の体を気遣った。
(真紀はもう、 、)
娘の真紀が、その体に新しい命を宿しているのは、
間違いのないように思われた。
(可哀想に、 、)
母と娘が、同じ男によって妊娠させられる、
その思いは、さらに鏡子を苦しめた。
鏡子が家に帰りついた時は、
すでに十時前だった。
娘の真紀をすぐにでも優しく抱きしめてやりたかったが、
健一に犯され、しかも快楽を極めてしまった自分では、躊躇いがあった。
その体を、一刻も早く洗い清めたかった。
オフィスを出るとき、
息子の夕食のことが気になったが、
さすがの鏡子も電話できる精神状態ではなかった。
鏡子は、
『つばさの会』の責任者として突発的な問題に対処したり、
関係者との打ち合わせで、時おり遅くなることがあった。
できる限り、家族には連絡するようにしていたが、
どうしても出来ない時もあった。
息子もそれと察してくれているはずだった。
鏡子はすぐに浴室に向かった。
二階にいるはずの娘と息子を気遣いながら、
鏡子は脱衣所で服を脱いだ。
聡史は母親の帰りが遅いため、
リビングで二度ほど、少年が置いてったビデオを繰り返して観た。
二度目のときは、
冷静に、姉が汚されていくさまを観察した。
八時を過ぎても母は戻らず、
大事な用事で遅くなるのだろうと、
聡史は冷凍してある惣菜を温めて、一人で夕食を済ませた。
部屋に戻ると机の上にビデオテープを置いた。
(姉さん、 、)
今日の朝からの出来事は、まるで夢のようだった。
特に、姉を犯した時のことを、聡史はよく覚えていなかった。
なんだかふわふわとした自分しか記憶になかった。
(でも僕は、姉さんとセックスした)
ビデオテープと、
ベッドの上に広げた姉の下着の存在が、
今日の朝からの出来事が、現実のものだったと聡史に教えていた。
(また、姉さんとしたい)
姉を犯したあと
夢遊病者のように二階へ上がり、
すぐに眠りこけてしまった聡史が目覚めた時は、もう夕暮れだった。
再びリビングに降りていくと、そこには誰もいなかった。
浴室や姉の部屋も見てみたが、
どこにも真紀の姿はなかった。
夜になっても、真紀は家に戻って来なかった。
誰もいない鎮まりかえった家の中で、
聡史は自分の部屋にこもり、姉の下着をじっと見つめた。
十時前になって、
階下で誰か帰ってきたような物音がした。
(きっと姉さんだ)
もし母なら、
連絡できずに遅く帰ったときは必ず、
すぐに二階に来て、声をかけてくれた。
(あれえ、 、)
誰も、二階へ上がってくる様子はなかった。
(そうか、姉さん、僕がいる二階になんか来たくないんだ)
そう思った聡史は、
自ら一階へ降りていった。
リビングに姉の姿はなく、
食堂をのぞくと、テーブルの上に母の鞄が置いてあった。
(あれ、お母さん、帰ってきたのかな)
聡史は、浴室から微かに響く、シャワーの音を耳にした。
(お母さん、いつも二階に来てくれるのに、
それにすぐお風呂に入るなんて、変だな)
廊下を見ると、
奥にある脱衣所の扉が、少し開いていた。
几帳面な、いつもの母らしくない珍しいことだった。
聡史は足音を忍ばせ、
脱衣所をのぞいた。
浴室のドアのすりガラスに、母の姿がぼやけて映っていた。
そのときの聡史は、
尊敬する母のことが気になっただけで、
姉に向けるような性欲は微塵も持っていなかった。
それは本当だった。
ただ、籐籠の中に、
朝見た母の服が折りたたまれて重なり、
その間に見える白い下着の片鱗を目にしたとき、
聡史は激しい誘惑にかられた。
(どんなパンティーなんだろう)
たまに母のあと風呂に入っても、
脱衣所に母の脱いだものは決してなかった。
常に自分の身の回りに気を配る母の下着を見る機会は、
これが唯一のものかもしれなかった。
(お母さんのパンティー)
昼間のことで気持ちが昂ぶり、
いまだ狂気の余韻がのこる聡史は、
その下着に手を伸ばした。
心臓の鼓動が早まり、
震える手で母の下着を広げた。
(これがお母さんのパンティー)
刺繍に縁取られた白い下着は、
子供の聡史から見ても、上品なものに思えた。
聡史は母の下着をじっと見つめた。
(だめだ、これ以上はいけない事だ)
そう思いつつも、結局、聡史は誘惑に負けた。
(お母さんの、アソコの匂い、 、)
下着に顔を近づけた聡史は、そこに精液の匂いを嗅いだ。
慌てて裏返してみると、
うっすらとした縦ジミの上に、ねっとりとしたものが付着していた。
それは紛れもなく、男の精液だった。
(お母さん、 、)
見てはならない母の秘密を知ってしまった恐ろしさで、
下着をもつ聡史の指先は、ぶるぶると震えた。
それでも聡史は、
なんとか下着を元通りに戻した。
(お母さん、浮気してるんだ、さっきまで、セックスしてたんだ)
聡史は階段を駆け上って自分の部屋に戻った。
(ちくしょう、 、)
信じたくなかったが、
自分の鼻で嗅ぎ、目で見たものは紛れもなく精液だった。
(いつも優しくて立派だったのは、あれは嘘なの、お母さん)
厳しさとあふれる愛情で自分を見守ってくれる母が、
下着に精液をつけて帰ってるなど、聡史には信じられなかった。
(でも、 、)
聡史は、精液の下に透けて見えた、縦ジミを思い出した。
それは姉の下着に付いていたものと、同じシミだった。
聡史は、実際に見た姉の性器を思い浮かべた。
(お母さんも、姉さんと同じなんだ)
聡史の耳に、姉の淫らな音が蘇えった。
あの少年に犯されて、姉の性器はぬかるんだ音をさせていた。
(お母さんも、あんな音をさせて、 、)
戸惑いながらも聡史は、
母親の鏡子を、初めて女として意識した。
裏切られたショックと悲しみとは別に、
セックスしてきたに違いない母が、
今どんな顔をしているのか見たくなった。
どんな顔をして、自分と向き合うのか確かめてみたかった。
もう聡史は、昨日までの聡史とは、別人になっていた。
聡史が一階に下りて行くと、母は食堂にいた。
すでに夜着を身につけ、椅子に座って、頭を抱えていた。
「お母さん」
聡史が呼びかけると、
はっとして鏡子は顔を上げた。
乾き切っていない黒髪が艶やかに光り、
湯上りで淡く火照る頬の色が、鏡子を美しく見せていた。
「聡史、ご免なさいね、遅くなって」
「いいんだよ、
あれ、お母さん、もうお風呂に入ったの」
「、 、ええ、 、今日は暑かったし、
少し疲れているから、それより聡史、ご飯食べたの」
聡史は食べたものを説明しながら母の正面に腰掛け、
鏡子の表情を見つめた。
(いつものお母さんじゃない、間違いない、誰かとセックスしてきたんだ)
風呂上りの母の瞳は、ことさら潤んで見えた。
確かに母は疲れているようだったが、
それが聡史には、
男と女の激しい行為による疲労に思えてならなかった。
「遅くまで、大変だったんね」
「、 、連絡できなくて、ご免なさい、聡史」
目の前の母が裸にされ、
その肌をいやらしい男の手が這いまわり、
淫らな体位で男に抱かれる母の姿を想像した。
聡史は母を前にして勃起した。
幼いとき一緒に風呂に入った記憶を探り、
母の乳房や股間の茂みを思い出した。
聡史の想像の中で
母の身体を弄ぶ男の手が、いつしか自分の手に代わっていた。
聡史のペニスは激しく充血し、硬く勃起した。
(この人と、セックスしたい)
湧きあがる性欲は、姉にたいするもの以上だった。
実の母親を欲望の目で見ても、
もう聡史は、罪悪感の欠片すらもたなかった。
「真紀は、二階にいるの」
「姉さん、どこかへ出かけたみたいだよ」
母の問いかけに、聡史は何食わぬ顔で答えた。
以前の聡史なら、
自分が犯した姉のことを尋ねられて平静さを保てる筈がなかった。
聡史は、人間としての心を失いつつあった。
その頃、
真紀は、家の玄関に佇んでいた。
玄関のドアを、どうしても開けることが出来なかった。
野坂健一の玩具にされ、
実の弟にまで犯された場所、
その家に、どうしても入ることが出来なかった。
午後、
家を出た真紀は、強い酒を求めてホテルのバーへ入った。
真紀はこれまで、
アルコールに逃げ道を求めたことは一度もなかった。
しかし、
心も体も打ちのめされた真紀は、無性にアルコールが欲しかった。
たとえ一時でも、酔ってすべてを忘れたかった。
酒は強いほうではあったが、
その日の真紀はいくら飲んでも酔えず、
逆に、最も忘れたかったことが何度も頭に蘇えった。
弟の聡史に襲われたことも、確かに辛かった。
近親相姦という忌わしい交わりは、人間の行為とは思えなかった。
しかし何よりも真紀を苦しめたのは、
健一に犯され、心ならずも淫らな反応をした自分の弱さだった。
快楽と呼ぶには、程遠いものであっても、
あの時、確かに真紀の体は、
健一のペニスに性感を刺激され、性器を潤いで満たしていた。
健一が動くたびに聞こえてきた、
粘り気のある湿った音は、今でも耳にこびり付いている。
憎んでも余りある、殺意すら抱く少年のペニスを、
逃がすまいと食い締めた自分の性器が、恨めしかった。
(死にたい、 、)
誇り高い真紀は死を望んだ。
もし、その時の真紀が、
心にしみる母の優しさを思い出さなかったら、
すぐにでも死を選んでいたかも知れない。
(お母さん、 、)
気力を奮い起こし、
真紀は母のいる家に向かった。
しばらく玄関に佇んでいた真紀は、
どうしてもドアをあけることが出来なかったが、
優しい母が待っている、
その思いが、真紀に力を与えた。
母がいるという安心感からか、
家に入った真紀は、足元に急激なアルコールの酔いを感じた。
壁に寄りかかり、廊下に片膝をついた。
その音で、食堂から鏡子が出てきた。
「真紀、 、あなた、大丈夫」
「お母さん、 、」
駆け寄って抱きしめてくれた母の胸で、真紀は泣いた。
酒に酔って足元を乱し、
しかも涙まで見せる自分を、
黙って受けとめてくれる母の優しさが、真紀には嬉しかった。
(お母さんは、 、何もかも、知っているのかもしれない)
真紀がそう感じるほど、
鏡子が娘をいたわる仕草は優しかった。
鏡子が膝をつく娘を抱き起こそうとした時、
いつのまにか現れた聡史が、真紀の腕に手を伸ばした。
「さわらないでっ」
真紀はその手をさっと払いのけた。
その勢いは、鏡子が驚くほどだった。
娘を抱き起こした鏡子は、聡史にふり向いた。
「真紀をゆるしてやって、きっとお酒で混乱してるのよ」
鏡子は、娘が勘違いしていると思った。
アルコールの酔いが、聡史をあの少年と同じに見せた、
そう鏡子は思った。
昼間、真紀に襲いかかった息子の姿を、
鏡子は知るはずもなかった。
「真紀、今日は二人で寝ましょうね」
自分の身代わりに、
鏡子が健一に犯されたことを知らない真紀は、
優しい母の肩へ、甘えるように寄りかかった。
聡史は、
二人の後姿を濁った目で追った。
その目は、母と姉の腰つきを見くらべていた。
翌朝、
聡史が食堂に降りていくと、すでに真紀は出勤したあとだった。
「ねえお母さん、昨日の夜、姉さん何か言ってた」
「いいえ何も、 、聡史、昨日の真紀を許してやってね、
あなたに怒鳴ったりして、
お酒に酔っていたのも、きっと疲れてたのね」
「でも珍しいね、姉さんがあんなに酔っ払うなんて」
その理由をすべて知っているにもかかわらず、
聡史は平然と、姉を心配する弟を演じた。
そして聡史は、
朝食の世話をしてくれる鏡子の胸元や腰に淫らな視線をあてた。
(お母さんって、体は細いのに、オッパイ大きいんだ)
聡史は、ブラウスを盛上げる母の胸元を目で追った。
(どうして今まで、気がつかなかったのかな)
その日の鏡子の服装は、
いつものように地味ではあったが、
よく見ると、白いブラウスのデザインと布地は、
聡史にも分かるほど、洒落た雰囲気のものだった。
それに、黒いスカートは、昨日よりもタイトな感じだった。
(この人は、僕のものだ)
今夜、聡史は母を犯すつもりだった。
「お母さん、今日は早く帰れるの」
食器を片付ける鏡子の手が止まった。
「、 、ご免なさい、 、今日も、遅くなりそうなの」
鏡子がどれだけ苦しい想いでその言葉を口にしたか、
本当の理由を知らない聡史は、
今日もまた、母が浮気をするに違いないと確信した。
(お母さん、あの服を誰かの前で脱ぐんだ)
一体どんな男が、
常に自らを厳しく律している母の心を惑わせたのか知りたくなった。
鏡子が家を出たあと、
物音一つしない食堂の椅子に座って、
聡史は母の秘密を探り出してやろうと心に決めた。
夏の夕暮れにはまだ間があったが、
週末の官庁街は、仕事を終えた人々の姿が目立ち始めていた。
聡史は、
『つばさの会』のオフィスがあるビルと通りをはさんだ、
向かいの街路樹に身を潜めて、その出入り口をじっと見つめた。
五時半を過ぎると、
聡史も知っている女性スタッフたちが出てきた。
日曜日など、鏡子が彼女たちを家に招き、昼食を振舞ったことが何度かあった。
その女性たちを目で追いながら、
聡史は、いつ鏡子が出で来るかと緊張した。
母を女として意識し、股間を熱くする聡史でも、
母の不倫相手を突き止めることに、知ってはならない恐怖を感じた。
今になって聡史は、母の浮気が嘘であって欲しいと、本気で願った。
(あっ、 、)
母への思いに耽っていた聡史は、
人の流れがふっと途切れたビルの入り口に、一人の少年の姿を見た。
小柄な体格と横顔、そしてリュックの色と形、
それらを、聡史が忘れるはずもなかった。
(あいつだ、間違いない)
半ズボンのポケットに手を入れ、
肩を揺らしてビルに入っていく少年の後姿を、聡史は睨みつけた。
(、 、あいつが、 、僕のお母さんを)
聡史は思い出した。
確かにあの少年は、『つばさの会』の案内書を見ていた。
その案内書をリュックに入れたも、聡史は思い出した。
(ちくしょう、あいつ、 、)
激しい怒りで、
視界が暗くなるほど頭に血を昇らせながらも、聡史はすべてを理解した。
母の下着に付着していた精液、
疲れきった哀しそうな顔、
いつも以上に姉をいたわる母の姿、
それらの意味の、すべてを悟った。
(あいつ、お母さんを脅して、 、)
昨日、一日のうちに、
姉と母をレイプした少年に、聡史は殺意を覚えた。
自分の大切な人を汚し、
すべて奪い取っていく少年が許せなかった。
(あいつ、無理やりお母さんを)
何度もビデオで観た、少年に犯される姉の姿が、母と重なっていった。
(お母さんも、レイプされたんだ)
怒りとは別に、
聡史を熱くさせるものがあった。
強さと優しさを、ともにそなえた美しい母。
その母が少年に犯される姿を想像すると、聡史は、むしょうに興奮した。
大人の男性に抱かれる母の姿よりも、その想像は、遥かに聡史を刺激した。
(また三人がかりで、お母さんを押さえつけて、 、)
少年への憎悪が増していく一方で、
服をむしり取られてレイプされる母を想像すると、
聡史はかきむしられる興奮で、その股間を固くした。
(どこに行くんだろう)
ビデオに映っていた汚くて、古い倉庫、
そんな場所で辱しめを受ける母の姿を、聡史は見たいと思った。
(お母さんも、大きな声で叫ぶのかな)
少年と母が、二人で出てくるのを聡史はじっと待った。
聡史も、
まさかその行為がオフィスの中でなされているとは、思ってもいなかった。
辺りが薄暗くなり始めた。
(あれ、変だぞ)
いくら待っても、二人は現れなかった。
ずっと興奮状態にあった聡史は、時間の感覚を失っていた。
腕時計をみると、あれから三十分以上が過ぎていた。
(どうしよう、見失ったのかな)
ビルの正面を見ていたつもりでも、
残忍な想像に夢中だった聡史は、自分の目に自信がなくなった。
(でも、ちゃんと見てた気もするし)
ビルの三階を見上げた。
(まだ、あそこにいるのかな)
少年の迎えを、母が頑なに拒み、
厳しい表情で、あの少年を叱っているのかな、と思った。
いつもの強い母であって欲しい、
その願いは、確かに本物だった。
しかし、少年にどこかへ連れ去られ、
犯される母の姿を目にしたいと望む劣情も、また本物だった。
それらは、聡史の心の中で同時に存在した。
聡史は、少年への呪いの言葉を呟きながら、
それでも股間を熱くして、通りを渡った。
三階にある『つばさの会』のオフィスは、薄暗かった。
室内を覗きこんだ聡史は、
その中に誰の姿も見なかった。
(もしかしたら、 、)
二台あるエレベーターの一つと、すれ違ったのかと不安になった。
ただ、広いオフィスの奥まった所だけに、明りが灯っていた。
そこは、
何度かここへ来て記憶にある、母のデスクがある場所だった。
(お母さんは、まだいる)
冷房のひんやりとした空気の残る室内に、聡史は足を踏み入れた。
見渡しても、誰もいなかった。
遠くにある母のデスクに向かおうとした時、人の声を聞いた。
(あいつだ、 、)
小さくても、怒鳴り声とわかるその音は、
聡史の右側に沿って、いくつかあるドアの一つから聞こえたようだった。
整然と並んだドアに、聡史は顔を向けた。
それらが、相談室と呼ばれているのを聡史も知っていた。
以前、
その小部屋の中で、コーヒーを飲んだ。
母とスタッフの人たちを交えて、楽しいひと時を過ごした。
若いスタッフの皆から、
尊敬の眼差しを受ける母を、誇らしく思った記憶が蘇えった。
(お母さんっ、 、)
すぐにでもドアを突き破り、母を救おうとする衝動を抑えたのは、
張り裂けそうに勃起したペニスの痛みだった。
すぐそこに母と少年がいる、
その現実は、聡史を狂おしいばかりに興奮させた。
オフィスに敷きつめられた、
青いカーペットをそっと踏みながら、聡史は近づいた。
どんなにゆっくり歩いても、
足がもつれて、つまずきそうになるほど体が緊張した。
また、少年の声が聞こえた。
その声は、『相談室 3番』と書かれたプレートのある、
白いドアから聞こえたようだった。
やはり何を言っているのか分からなかった。
そのドアの前に立った聡史が下を見ると、
カーペットとドアのわずかな隙間から、明かりが漏れていた。
(この中にいるんだ)
その漏れる明りが目立つほど、オフィスは薄暗くなっていた。
手のひらにびっしょり汗をかいた聡史が、
ドアに耳を当てると、少年の喋る声が聞えた。
何を言っているのか、
ドアを通したその声は、聞き取れそうで、よく聞こえなかった。
高鳴る気持ちをおさえて、
意識を集中した聡史が、もっと強くドアに耳を押し当てようとした時、
【おらっ、 、】
少年の怒鳴り声が、鼓膜に響いた。
ビクッとした聡史は、それでも耳を強く押し当てた。
しかし、怒鳴り声に続いて少年がぶつぶつ言っている中味は、
やはり聞き取れなかった。
(お母さん、やっぱりあいつが迎えに来ても、拒んでるんだ)
少年の言い成りになど、
決してならない強い母に安堵する一方で、
それでも聡史は、そんな母の痴態を、母の無惨な姿を、見てみたかった。
(でも、なんか変だ)
母の声は一切、聞えてこなかった。
部屋の中に母がいるのかどうか、その気配さえ感じられなかった。
音を立てないようにしゃがみこんで、
聡史は、カーペットとドアの隙間に顔を近づけた。
明りの漏れる、そのわずかな隙間に片目をこすりつけて、中を覗いた。
(あっ、 、)
せまく限られた視界でも、はっきりと分かった。
ドアのすぐ側で、
黒いストッキングに包まれた母の膝が、床についていた。
母の膝の前には、
少年の履くスニーカーがあって、そしてそのスニーカーへかぶさるように
半ズボンとブリーフが下ろされていた。
それ以上の光景を見ることはできなくとも、
ドアの向こうでどんな行為がなされているのか、
一瞬にして聡史は、その全体像を頭に浮かべた。
(あいつ、 、お母さんにフェラチオさせてるんだ)
少年の足元にひざまずいて、ペニスを口に含む母の姿。
昨日の朝、
家のリビングでみた姉の姿を、聡史は思い起こした。
(あのお母さんが、フェラチオするなんて、 、)
その隙間からは、
直に空気の振動が伝わるのか、
意外なくらいはっきりと声を聞き取ることが出来た。
【、 、もっと舌を使えよ、 、何度も言わせるなよ】
母に命令する少年の声が聞えた。
その声はいかにも偉そうで、生意気なものに聞えた。
【おらっ、 、】
また少年が怒鳴った。
そして、母をなじった。
【手抜きするなよ、そうじゃねえだろ、 、舌をれろれろするんだよ】
その声は、母を侮辱して、楽しんでいるようにも聞えた。
【まったく、下手くそなフェラだぜ、
あんたも人妻だろ、なんでもっと巧くできねえんだよ、
昨日は我慢してやったけどよお、今日は許さねえぞ】
聡史には、
ひざまずいてフェラチオする母の姿はイメージできても、
ペニスを口にした母の顔だけは、どうしても想像できなかった。
昨日見た少年のペニスは、
自分のものより、ひとまわり大きなものだった。
母が、口を大きくこじ開けられているのは想像がついた。
しかしその様子を、頭に思い描くことはできなかった。
食事の時も、はしたなく口を開けるような母ではなかった。
母の顔の中にあって小さく見える唇が、
どんな形で開いているのか、聡史にはどうしても想像できなかった。
【そうじゃねえよ、チンポ吸いながら頭を引けよ、
、 、そうだよ、 、ほんでまた、根元まで咥えりゃいいんだよ、
バカ、 、咥えるまえに、先っぽ舐めろって言っただろう】
人を小ばかにしたような少年の声に、
聡史は激しい憎悪を燃やしながら、
それでも、息苦しいほどの興奮に酔いしれた。
【なんだよ、息ができねえのかよ、そんなこと知るかっ、
おら、もっと奥まで咥えろよ、
、 、だから何べん言ったら分かるんだよ、 、舌を使えよ、舌をよお】
男にひれ伏し、男に奉仕する姿は、
もっとも母に似つかわしくないものだった。
その母が、現実にフェラチオをしていた。
【へっ、やりゃあできるじゃねえか、
そうだよ、それでいいんだよ、 、気持ちいいぜ】
淫らな動きを事細かに教えこまれ、それを忠実に実践する母。
口を開いて、懸命に舌をからめる哀しい努力。
目には見えない現実が、
聡史を、興奮の極みへと導いた。
しばらくの間、部屋の中から音が消えた。
野坂健一も無言で、
フェラチオの心地良さに浸っていた。
聡史がアダルトビデオで見知っている音は、まったく聞えなかった。
唾液の粘る音や、
ペニスを吸い上げる下品な音など、鏡子は一切その口から洩らさなかった。
健一が満足するほどの奉仕をしながら、
卑猥な音を一切させない鏡子に、聡史は唯一、いつもの母を感じていた。
【、 、少し、休ませて、 、】
そのとき初めて、聡史は母の声を聞いた。
鏡子の声は苦しげにかすれていた。
あいつがまた怒鳴る、 、そう思った聡史は身構えた。
しかし健一は、聡史の予想とは違う言葉を口にした。
【そうだな、えらく長いことしゃぶらせたもんな、 、もういいぜ、
どうせ、
一発目の濃いやつは、あんたのおまんこに出すつもりだったしよお】
聡史は驚いた。
その驚きは、健一の意図に対してではなかった。
フェラチオを中断されても平気でいる少年の神経と、
あれほど長いあいだ刺激されても、射精の気配さえ見せず、
なおも母に挑もうとする少年の持続力に、聡史は驚いた。
(僕なら、 、僕だったら)
もし自分なら、射精するまで母の頭をつかんで放さないのに、と思った。
余裕のある少年が、聡史には憎らしく思えてならなかった。
ただ、聡史は知らなかった。
少年も、年上の女性に負けまいと懸命になっていることを、知らなかった。
健一は、鏡子の魅力に圧倒されそうな自分と闘っていた。
【ほら立てよ、 、可愛がってやるからよお】
少年の足が、急にドアへ向かってきた。
(わあっ、 、)
聡史は慌てて後ずさった。
もう遅かった。
首をすくめる聡史は観念して目を閉じた。
しかし、そのドアは開かなかった。
(あれ、 、)
不思議に思った聡史は、恐る恐るドアの隙間を覗いた。
【、 、 、から決めてたんだぜ、
服を着たままのあんたを、バックで犯るってな】
すぐ目の前に、母の黒いハイヒールがあった。
そのつま先は、聡史の方に向いていた。
はっきりと服のこすれる音が聞えた。
後から少年にスカートをまくられた母の姿を、聡史は思い描いた。
今日の朝、
母はいつもよりタイトに見える黒いスカートを身につけていた。
いくぶん窮屈そうに見えたそのスカートが、
強引にまくり上げられた光景を、聡史は想像した。
【待って、 、】
なにか必死な響きのある、母の声だった。
やはり母も、セックスだけは拒み通すのだろうと聡史は思った。
【、 、これを、】
【なんだおまえ、そんな物もって来たのかよ、準備がいいじゃねえか】
少年の笑い声が聞えた。
【なんか、セックスを催促されてるみてえだなあ】
【ふざけないで、 、お願い、今日はこれを、つけて、 、】
(えっ、コンドーム、 、)
聡史は、そんな母が意外だった。
避妊を求めるのは当然だとしても、
少年とのセックスを、最初から受け入れていることに驚いた。
しかも、恥ずかしい姿勢での交わりに、母は抗議すらしなかった。
たとえ脅されていたとしても、
セックスの時だけは、少年を拒む母だと信じていた。
また、そんな母が犯される姿を見たかった。
【へっ、しょうがねえなあ、つけてやるよ、
ただし、
あんたがおまんこを濡らしてなかったら、だけどな】
こいつは馬鹿だ、と聡史は思った。
何もされていない女性が、まして母のような女性が、
男を前にしただけで性器を濡らすとは、聡史には考えられなかった。
【そんな恐い顔するなよ、
今日はまだ、俺はなんにもしてないぜ、
なのに濡らしてるなんてことは、まさかないよな、 、そうだろ】
【、 、 】
【おや、顔が赤くなったぜ、
ひょっとしたら、自分でしっかり分かるくれえ、濡らしてるのか】
嘘だ、と聡史は叫びたかった。
その聡史が、繊維のこすれる音を耳にした。
(、 、お母さんが、 、脱がされる)
【股ひらいて、尻をつきだせよ、
、 、もっとだよ、 、もっと股ひろげて、尻をつきだすんだよ】
二つの黒いハイヒールが、ドアの幅ほどに左右へ分かれていった。
スカートをまくられ、下着を引き下ろされた母。
(きっと、パンティーは)
両膝で伸びきっている、と思った。
ドアに両手をついてもたれかかり、
足を広げて、お尻を突きだす母。
いやでも目に浮かぶその姿は、聡史を苦しめた。
(お母さん、なんで抵抗しないんだよ)
【恥ずかしくねえのかよ、こんなにべっとり濡らしてよお】
【、 、 】
少年が何かしたのか、
ねばり気のある音が聞えてきた。
(嘘だ、 、嘘だっ)
聡史は心の中で叫んだ。
【何とか言えよ、
フェラチオしながら、早くセックスしたくてうずうずしてたんだろう、
まったく、あきれた女だぜ】
【そんな、 、ひどいわ、 、】
母の恨みの言葉すら、聡史には虚しく聞えた。
(お母さん、なんで濡れてるんだよ、どうしてなんだよ、 、)
幼い聡史には、理解できなかった。
(なんで、そんな恥ずかしい格好のままいるんだよ、 、)
鏡子の年齢と、その体の仕組を、幼い知識では理解できなかった。
(いつものお母さんは、どこに行ったんだよ、 、)
また、
聡史の耳に、ねばった音が聞えた。
【そんなに欲しいなら、いま入れてやるぜ】
【待って、その前に、 、んっ、】
黒いハイヒールの踵が、浮き上がった。
聡史は、
息を詰らせる母のうめき声を、その耳ではっきりと聞いた。
(あっ、入れられたんだ)
聡史には信じられなかった。
それはレイプではなく、少年と母のセックスだった。
(どうして、 、もっと逆らわないんだよ)
本当に嫌なら、拒み通せるはずだ、と聡史は思った。
(あいつ、まだつけてないのに)
もし、ドアが無ければ、
少年にうしろから挿入される母の姿を、
聡史は、すぐ目の前で見たはずだった。
【おまんこが、もうひくひくしてるじゃねえか、
変だぜ、今日のあんた、なんか変だぜ】
健一の声が、
それまで鏡子をからかっていた口調から、真剣なものに変わった。
【昨日よりシャレた服きてるし、
化粧も、なんだか濃いみてえじゃねえか、
それに、コンドームなんかもって来やがって】
少年の言葉に重なって、時おり、ぬかるんだ音が聞えた。
それは、姉の真紀のものより、はるかに淫靡な音だった。
【一日じゅう、待ってたのか、
昨日、二回もいかせてやった俺を、ずっと待ってたのか】
聡史は耳を疑った。
二回、 、いく、 、
(そんな、あのお母さんが、 、)
聡史には、
とても母のものとは思えない淫靡な音が、たて続けに聞え始めた。
(嘘だ、 、なにもかも嘘だっ)
その音と共に、
母の吐息が、はっきりと聞えて来た。
【はっ、 、はっ、 、】
【いいんだぜ、何回いっても、いいんだぜ、
今日は笑ったりしねえから、思いっきりいっても、いいんだぜ】
【、嫌っ、 、嫌ぁっ、 、】
『いや』と口にする母ではあっても、
黒いハイヒールを履いたその足は、しっかり床を踏みしめていた。
聡史には、それが少年のペニスを悦んで受け入れる、
母の意志のように思えてならなかった。
それに、
その声は、聡史が聞いたこともない、すねて甘えたものだった。
(嘘だ、みんな嘘だっ)
いつも姿勢がよくて、だらしない姿など、
一度も見せたことのない母とは、まるで別人のようだった。
【嫌っ、 、もう、 、】
【いいんだぜ、俺は出さねえから、
あんたはいっても、いいんだぜ、 、】
ハイヒールの形が変わるほど、母の足先が内によじれた。
【、 、嫌っ、 、あっ】
さらに母の足先がよじれた。
【っっ、 、 】
そして悶えるように声を上げた。
【、 、嫌ぁっ、 、 、ああっっ】
がくがくと震える母の足先から、
片方のハイヒールが脱げて転がった。
このオフィスに入ってから、
マスターベーションをすることすら忘れていた聡史は、
母の切ない声を耳にした時、その意識がないままに射精した。
ブリーフの中のぬめりによって、
初めて聡史は、自分が射精したことを知った。
(ああ、お母さん、 、)
なかば呆けていた聡史が現実に目を向けると、
部屋の中では、その行為がなおも続いていた。
少年が、本気で腰を使い始めたのか、
そのたびに、少年と母の肉がぶつかり合う音がしていた。
少年の息は荒く、
母の声は、さらに甘みを増していた。
【今日のあんた、ほんとに変だぜ】
【ああっ、 、あっ、あっ】
聡史は、何もかも許せなくなった。
母を狂わせる少年の力強さに嫉妬し、
少年のペニスで、淫らに燃え上がる母を憎んだ。
【すまねえ、もう出そうだ】
【あっ、 、そんな、 、嫌っ、嫌ぁっ】
膣内での射精を母が拒んでいるのか、
それとも、性交の終わりを惜しんでいるのか、
聡史には分からなかったが、そんなことは、もうどうでもよかった。
聡史は、二人を憎んだ。
射精にむかう少年と、
ふたたび絶頂へ駆け上がろうとする母が、許せなかった。
(そんなこと、させるもんか)
なんとしてもその前に、二人を引き離そうと思った。
聡史は、
暗いオフィスの中で、小さく光るものに歩み寄った。
赤く光るランプの下を押すと、
けたたましい非常ベルがオフィスに響き渡った。
急いでオフィスから出た聡史は、
エレベーターを使わずに、通路の奥にある階段に身を潜めた。
ビル全体が、非常ベルの音に包まれていた。
すぐにエレベーターの扉が開いて、
制服姿の守衛が、急ぎ足で『つばさの会』のオフィスに入っていった。
聡史が階段を降りていく途中で、
非常ベルは鳴り止み、ビルが急に静かになった。
聡史は、
自分の行為にどれほどの効果があったのか、
少し不安だったが、とりあえず外に出てビルの出口を見張ることにした。
待つ間もなく、少年が一人で出てきた。
特に慌てた様子はなかったが、
ビルを見上げた少年の顔は、どこか名残惜しそうだった。
(やった、成功したんだ)
聡史がそう思ったとき、
少年がふっと笑ったように見えた。
街灯に照らされたその顔に、聡史は激しい憎悪をかき立てられた。
(そうか、これからまた、お母さんとする気なんだ)
そこで母を待つのかと思えば、
少年は向きを変えて、歩き始めた。
(あいつ、どこか別の所で)
聡史は、少年のあとをつけた。
(許さないぞ、そんなこと、絶対許さないぞ)
一瞬、その姿を見失い、
慌てた聡史も、歩道橋の階段を昇る少年の姿を見つけた。
(おまえは、悪いやつだ)
聡史はこの時、すでに狂気の中にいた。
歩道橋の手すりにもたれて、少年が口笛を吹いていた。
(おまえは、悪いやつだ)
聡史は躊躇わなかった。
人の途切れたところで、少年の真後ろに近づいた。
誰か後ろにいるのを、少年は気にする素振りも見せなかった。
そんな少年の、
足元をすくい上げるのは簡単だった。
ほとんど力はいらなかった。
手すりにもたれた少年の体が、くるっと回った。
聡史は何事もなかったように、
少年が残したリュックを肩にかけ、歩道橋を下りていった。
家に帰った聡史は、
自分の部屋で、母が戻ってくるのをじっと待った。
不思議と、
人を殺した罪の意識も、恐ろしさもなかった。
道路へ落ちていく少年の悲鳴と、
車に轢かれて半分無くなった少年の頭を、はっきり覚えていた。
(もっと苦しめて殺してやればよかった)
死に際して、
あの少年の恐怖と苦痛が、ほんの一瞬だったこが心残りだった。
聡史は、少年が残したリュックを開けた。
その中から、
さまざまな淫具が出てきた。
(こんなもので、僕のお母さんをいじめる気だったんだ)
それらを手に取り、
形や機能を確かめる聡史の顔には、いびつな笑いが浮かんでいた。
(悪者のくせに、恋人きどりで僕のお母さんを)
あの相談室で、
少年が口にした言葉を、聡史はせせら笑った。
聡史はもう、完全に狂っていた。
(今度は僕の番だ、お母さんは僕のものだ)
バイブレーターのスイッチを入れ、
その動きをじっと見ていた聡史は、
隣りの部屋で、ドアが閉まる音を聞いた。
(姉さんも、僕のものだ)
机の上に並べた淫具をリュックに戻すと、聡史は椅子から立ち上がった。
その手には、
何本かのロープが握られていた。
真紀は、家を出て行くつもりだった。
健一によって刻まれた辛い記憶と、
弟との忌わしい出来事を、思い出させる家から出て行くつもりだった。
すでに手頃なアパートを見つけていた。
引越しは来週になる予定だったが、
それまでは友人のところに泊めてもらうことにした。
今日も、
本当は帰ってくるつもりなど無かった。
着替えや、身のまわりの物が必要だったのと、
それと何より、母に説明しなければという思いが強かった。
母には、無用な心配をさせたくなかった。
本当の理由を隠して、
真紀は、社会人として自立したいと、母に言うつもりだった。
真紀が旅行鞄に衣類をつめていると、
ノックもなしに突然、ドアが開いた。
ふり向くと、弟の聡史が立っていた。
「姉さん、どこか行くの」
聡史は笑いながら、旅行鞄を見た。
「この家から、逃げ出すつもりじゃないよね」
その笑い顔は、正常な人間のものとは思えなかった。
「姉さん、服を脱いで裸を見せてよ、またセックスしようよ」
「聡史、あなた気でも狂ったの」
聡史は、平然と性交を要求した。
「姉さんだってセックスが好きだろ、
僕知ってるんだ、
姉さん、アソコからエッチな音、させてたじゃないか」
真紀は、弟の真正面に歩み寄ると、その頬を叩いた。
聡史は一瞬よろけたが、
後ろに隠したロープの束を落とさないように強く握りしめた。
真紀の顔は紅潮し、
その声は怒りに震えた。
「私が、どんな思いでいたか、 、聡史に分かるはずないわっ」
聡史は、姉をにらみ返した。
「姉さんのせいだぞ」
聡史は、自分よりも背の高い姉を、下からにらみ上げた。
「姉さんのせいで、 、お母さん、あいつとセックスしたんだぞ」
「何ですって、 、」
「嘘じゃないぞ、 、昨日も、今日も、姉さんの代わりに、 、」
昨日の夜、
足元がふらつくほどアルコールに酔った自分を叱りもせず、
黙って抱きしめてくれた母の優しさを、真紀はあらためて思い返した。
(お母さん、 、私のために、 、)
健一にその身を自由にされ、母も辛いはずなのに、
そんな素振りは一切見せず、優しくいたわってくれた母だった。
真紀は心の中で、母に詫びた。
そして自分の愚かさを悔いた。
自分がもっと早く、
しかるべき手段を取っていたならと、悔やんでも悔やみきれなかった。
あまりのことに、
呆然としていた真紀は、手首に何か絡まるものを感じた。
(なに、 、)
突然、腕に抜けるような痛みが走った。
「痛っ、 、聡史っ」
左の手首に巻きつけられたロープを、弟が力強く引いていた。
肩の関節が外れるほどの勢いで引きつけられ、真紀は一気に重心を崩された。
そして真紀は、
腹部の激痛で息をつまらせた。
情け容赦のない聡史の足蹴りが、真紀の脇腹を強打した。
その痛みは、
少年たちに襲われた、辛い記憶を真紀に蘇えらせた。
真紀は、ベッドに引きずり上げられた。
両方の手首に巻きついたロープは、
それぞれ左右のベッドの脚に、きつく結ばれた。
「聡史っ、 、」
その声を無視して、
聡史は、姉の足首をつかんだ。
真紀は腰をひねり、
膝を曲げて両足の自由を守ろうとしたが、聡史から逃れられなかった。
ベッドの四隅に、
両手、両足を縛りつけられた真紀は、弟の前に無防備な姿をさらした。
長身の真紀が、
手足を広げて拘束されると、セミダブルのベッドも小さく見えた。
真紀の白いシャツがまくれあがり、腹部の白い肌を見せていた。
張りつめたジーンズの硬い生地は、下半身の緊張をそのまま伝えた。
「聡史っ、これを、いますぐ解きなさいっ」
「そんなふうに、僕に命令するな」
「何ですって」
「偉そうに命令するなって言ったんだよ、姉さん」
聡史は、姉のシャツをたくし上げた。
「聡史っ」
聡史は、ことさら平然と白いブラジャーを押しあげた。
「昨日は僕もよく覚えていなかったけど、
あいつが言ってた通り、
姉さんらしくない、可愛いオッパイだね」
真紀の乳房を、聡史は無造作につかんだ。
「やめてっ」
「本当だ、固いオッパイだ、
やっぱり姉さん、レイプされるまで処女だったんだね」
「そんな、 、痛っ」
聡史は機械のような手つきで乳房をもみ、乳首をひねり上げた。
強い姉を、
自分の手で苦しめている実感が、聡史をさらに狂気へ向かわせた。
聡史は、異常な振舞いをした。
自分のズボンのベルトを引き抜くと、それを姉の素肌へ打ち下ろした。
ロープを持って姉の部屋に入ったとき、
実際そんなことをするつもりは聡史には無かった。
しかし聡史は平気な顔をして、
それが自然なことのように、ベルトで姉を打ちすえた。
聡史は、
力強くベルトを振り下ろしながら、冷静に姉を見つめた。
聡史のベルトは、
真紀の腹部に幾すじもの腫れをつくり、
乳房にまで血が滲むほどの跡を残した。
そしてベルトの先端が桜色の乳首をとらえ、
ひときわ大きな絶叫と共に、姉の身体がベッドの上で弾んだとき、
聡史は満足そうに笑った。
「ごめんね姉さん、こんな事するつもりじゃなかったんだけど」
姉に詫びながらも、聡史は残忍な笑みを浮かべて、
真紀の赤く腫れた肌に口をつけ、舌を這わせていった。
「、 、ひどいわ、 、」
あまりの苦痛とショックで、
真紀はそれだけ言うのが精一杯だった。
弟が、口紅をうすく引いた唇に迫ってきた時、真紀は顔をそむけた。
「やめて、私たち姉弟なのよ」
顔をそむける姉を、聡史はあえて追わなかった。
「ふうん、姉さん、僕とキスするのそんなに嫌なの」
聡史はさっと立ち上がった。
「なんだよ、もう処女じゃないのに、もったいつけるな」
「そんな」
「もっと姉さんをいじめてやる、ちょっと待ってなよ」
部屋から出て行った聡史は、
青色のリュックを持って戻ってきた。
真紀は、
そのリュックを見て自分の目を疑った。
色と形、それにぶら下がっている人形のキャラクターには覚えがあった。
記憶にしっかりと残っていた。
「聡史、どうして、あなたがそれを」
「やっぱり分かったの、
だけど、もうあいつのことは気にしなくていいんだよ、姉さん」
リュックの中から飛び出しナイフを取り出した。
「あいつ、この中に色々なもの入れてるんだよ、
後で見せてあげるけど、まずはこれでね、 、」
真紀が何を言っても、
聡史はそれを無視した。
「今日はじっくり見せてもらうよ、姉さん」
聡史の持つ鋭利なナイフは、
真紀のジーンズすらも、薄紙を切るように滑っていった。
曝け出されていく姉の素肌を、聡史は手のひらで撫でた。
特に真紀の下半身を、執拗に撫でた。
ふくらはぎの柔らかさを楽しみ、
瑞々しい太腿の感触を味わいながら、ジーンズを切断していった。
「、 、やめて、 、聡史」
弟の手を素肌に感じるたびに、真紀は鳥肌を立てた。
「姉さん、やっぱり今日も、白いパンティーなんだね」
ベッドに上がった聡史は
腰をかがめて姉の股間に顔を寄せた。
真紀の下着は白い布地が張りつめて、
あからさまに恥丘の盛り上がりを見せていた。
「一度、こうしてみたかったんだ」
聡史は姉の腹部から手を滑らせ、
ショーツの中にその手を差し込んだ。
「やめなさいっ、聡史、」
「そんなふうに、僕に命令すなって言っただろう」
下着ごしに浮かび上がる手の動きを目で追いながら、
聡史は薄い陰毛の柔らかさを指にからめて確かめ、
その下に刻みこまれた裂目の始まりを指先で探った。
「パンティーの中に手を入れるのって、すごくエッチな感じがするね」
真下に切れこむ溝をなぞるように、聡史は指先を這わせた。
「いやっ、」
下着の中で、しっかり閉合わさった陰唇に、
聡史の指先が割り込んでいき、真紀の性器をいじりまわした。
優しさのかけらもない、
無造作な指先の動きは、真紀の粘膜に微細な傷をつけた。
「ちぇっ、ちっとも濡れてこないじゃないか」
いったん下着から手を抜くと、
聡史は、張りつめた下着の底をつまんで横にめくった。
「昨日見てるはずなのに、なんだか初めて見るような気がするよ」
「聡史っ、 、」
「あれえ、ちょっぴり匂うよ、姉さんいつもこんな匂いさせてたんだね」
真紀の股間に息がかかるほど顔を寄せた聡史は、
横にめくった下着の底を、さらに引き伸ばした。
「やっぱりパンティーにシミが付いてる、
綺麗な姉さんでも、股の間はこうなるんだね」
聡史は露骨に鼻音をさせて、
真紀の心を踏みにじる言葉を口にした。
一日中仕事に追われて汗をかき、
何度かトイレに行った真紀の股間には、
ほのかに若い女性特有の匂いが漂っていた。
「あれ、エッチな本に書いてあった通りだ、
ねえ姉さん、これって恥垢って言うんだろ」
むき上げた陰核の根元に、
ほんの少しだけ溜まっているものを、聡史は指先でつついた。
生きている女の、
恥ずかしい秘密を弟に暴かれ、真紀は顔を赤らめた。
「もうこんな汚いパンティーいらないよね」
聡史はナイフで下着を切り取ると、全裸の真紀を見下ろした。
「さてと、もうお母さん帰ってきたかな、
ちょっと見てくるから、待っててね」
部屋を出て行きかけた聡史が、その足をとめた。
「あっそうだ、あれを使わなきゃ」
リュックの中から小さなチューブを取りだした。
「あいつ、とんでもない奴だよ、
こんな物まで持ってたんだから、
どれくらい効くのか知らないけど、姉さんで試してみるよ」
「んっ、 、な、何をしたの」
真紀は冷たいクリームが、
自分の性器に塗りこめられる感触にぞっとした。
それは、真紀も知識としては知っている媚薬だった。
「安物かもしれないし、たいして効かないかもね、
だけど楽しみだな、
ひょっとしたら姉さんのエッチな声を聞けるかな、
あいつも知らない姉さんの声を、僕が初めて聞けるのかもね、
なんだかわくわくしてきたよ」
笑い声を残して、聡史は一階へ降りていった。
鏡子は、
聡史が食堂に下りて来る少し前に帰宅していた。
二階にいるはずの娘が気になったが、
鏡子は心と体を鎮めるために、熱いお茶を淹れた。
夕方からの、
オフィスでの出来事が忘れられなかった。
(どうして私は、 、)
娘を辱しめた憎いはずの少年を、
自分の体は悦んで迎え入れた、その事実が鏡子を苦しめた。
だが、もっと鏡子を辛くさせたのは、
満たされなかった体が、なおも火照っていることだった。
あの時、
非常ベルによって中断されたのは、行為そのものだけではなく、
快楽の極みに昇りつめようとしていた鏡子の熱い血潮も、せき止められた。
昨日よりも、
これまでの夫との性交などよりも、
遥かに高いところへ昇りつめようとする、鏡子の体がそこにいた。
行為を差し止める非常ベルを呪って、
鏡子は、あばずれ女のように下品な声で罵りそうになった。
そういう女の業を、自分も体の奥に秘めていることが、たまらなく辛かった。
鏡子は、
ビルの守衛の目を思い出し、赤面した。
ビル全体に鳴り響く非常ベルの発信源に、
その守衛が駆けつけて来たとき、ちょうど二人が相談室から出たところだった。
非常ベルの処置をおえた守衛は、不審の目で、自分たち二人を見た。
健一は、耳元で落合う場所を告げるとさっさと出て行き、
一人残された鏡子は、事後の対応に、その年老いた守衛と向き合った。
誤報ということで話は済んでも、
室内の照明をすべてつけた明るさの中で、
『異常は無いですか、本当に無いですか』と、しつこく問いただされた。
鏡子には、
守衛の視線が、自分の口もとに注がれているような気がしてならなかった。
フェラチオによって、
口紅が剥がれているはずだった。
それに、
きちんとセットしてあった髪も、乱れているように思えた。
そんな自分を見られることが、たまらなく恥ずかしかった。
守衛が淫らな想像をしていると思えば、なおさら羞恥はつのった。
それが事実なだけに、
いつも折り目正しい挨拶をしてくれる守衛の前から、逃げ出したかった。
鏡子は、健一のことを思った。
少年は、約束の場所にいなかった。
通りをJRの駅に向かって、
最初の歩道橋の上で待っているという言葉に従い、
急いで行ってみると、そこに少年はいなかった。
何かの事故があったらしく、
路上では人だかりの中を救急車が発進するところだった。
場所を間違えたはずもなく、
いっこうに現れない少年を、恨めしい思いで待ちわびる自分が哀しかった。
いくら待っても、少年は姿を見せなかった。
鏡子は、まだ濡れていた。
JRの駅で、トイレに入った鏡子は、ショーツを下ろしてそれを拭った。
その際、
たまらなく自慰の誘惑にかられた。
長い間、そんなことはしなかった鏡子も、火照る体を指で慰めたかった。
だが、その指先を押しとどめたのは、
掃除の行届いていない個室の汚れだった。
そんな場所で自慰ができるほど、鏡子の自尊心は麻痺していなかった。
湯飲みを両手で包み、鏡子は目を閉じた。
自分を置き去りにした少年のことを、
そしてその少年に辱しめられた娘のことを、鏡子は思った。
(私は、なんという母親、 、)
心で泣く鏡子だったが、
その股間には、いまだ淫靡な蜜があふれていた。
「お母さん、お帰りなさい」
その声で顔を上げると、息子の聡史が立っていた。
「、 、ご免なさい、今日も遅くなって」
「お母さん大丈夫、なんだかすごく疲れてるみたいだよ」
鏡子は、息子の顔をまともに見れなかった。
「、 、今日も、忙しかったから、 、」
「へえ、そうなの」
聡史は母の口もとを見つめた。
オフィスを出るときに鏡子が引き直した口紅は、
食堂の蛍光灯に照らされて、赤い光沢を放っていた。
(あの口で、フェラチオしたんだ)
「遅くまで大変なんだね」
「ご免なさい聡史、ご飯も作ってあげられなくて」
(なに言ってんだよ、エッチな声を出してたくせに)
聡史は後ろに持ったロープを固く握りしめた。
「ねえ、お母さん、」
鏡子の後ろにまわりこんだ聡史は、甘えた声を出した。
「ちょっと立ってみてよ、渡したい物があるんだ、
、 、そうじゃないよ、違うよ、こっち見ないでよ」
じゃれつくように甘えてくる息子につき合える気持ちではなかったが、
毎日、寂しい思いをさせている罪滅ぼしにと、鏡子は椅子から立ち上がった。
「まだ内緒だよ、
じゃあ今度は両手を後ろにまわして、 、ねえ早くしてよ」
言われるままに両手を後ろにまわすと、
突然、手首に引き絞られる痛みを感じた。
その直後、
肩をねじられる苦痛の中で、前のめりに食卓へ押さえつけられた。
「聡史っ」
鏡子は、突然の暴挙に混乱した。
何が起きているのか、分からなかった。
「痛っ、」
さらに腕をねじり上げられ、食卓に顔を強く押しつけられた。
その衝撃で湯飲みが転げ落ち、
大きな音をたてて割れた瞬間、鏡子は息子の手をはっきりと感じた。
「何をするのっ」
その手は、スカートの中に差し込まれ、太腿を這っていた。
なんとか息子の手を避けようと、鏡子は腰をひねり、足を前後させた。
「やめなさいっ」
「そんなふうに腰を振って、あいつとセックスしてたんだろう」
「何ですって、 、」
すべてが突然のことだった。
息子の暴挙も、その言葉も、鏡子を戦慄させた。
「僕は全部知ってるんだ、今日もあいつとセックスしてただろう」
「聡史、 、どうして、 、」
「姉さんの部屋で教えてやる、来いっ、」
聡史は母を追い立てるように廊下に連れ出し、
後ろに縛った両腕をねじり上げて、無理やり階段を昇らせた。
「あなたまさか、 、真紀はどうしてるの、痛っ、」
鏡子は、混乱した意識のなかで恐ろしい予感に慄いた。
「正気になりなさい、聡史、 、聡史っ、」
鏡子は何度も息子にふり向いた。
ふり向くたびに、恐ろしい予感が増していった。
鏡子は、薄ら笑いを浮かべる息子の目に、狂気の光を見た。
真紀は、
階段を昇ってくる不規則に乱れた足音と、母の声を聞いた。
その足音は次第に大きくなり、
母が弟を叱る言葉もはっきりと聞こえてきた。
(まさか、聡史はお母さんまで)
いつになく厳しい口調で、
真に迫った必死さが伝わる母の声は、ただならぬ事態を感じさせた。
しかし真紀には、
母を気遣う余裕は、もう無かった。
聡史に塗りこめられた薬が、真紀を苦しめていた。
最初の冷やりとした感覚が消えると、
ざわざわと陰毛が逆立つような不快感が湧き起ってきた。
しだいに股間が熱を帯び始め、
経験したことのない甘い痒みが襲ってきた。
その痒みは急速に増していき、我慢できないほど苛烈になっていった。
鏡子と聡史が二階に上がってくる頃には、
真紀の全身は汗ばみ、手足がこまかく震え始めていた。
足音がせまり、真紀が母の声をはっきり聞いたとき、ドアが開いた。
部屋の入り口に向かって股間を広げる真紀は、
前のめりになって入ってきた鏡子と目が合った。
「お母さんっ、 、」
「、 、真紀っ」
鏡子は娘の姿に驚き、
真紀はスカートをまくられた母から目をそらした。
思ってもいなかった娘の姿に鏡子は驚きながらも、
さっと部屋中に視線を走らせて、あの少年の姿を探した。
慄き、混乱した頭の片隅で、
この事態を生み出したのは、健一に違いないと思った。
自分よりも先にこの家に乗り込み、
娘の自由を奪い、息子をけしかけて言い成りにさせたと思った。
、 、私より、真紀のほうがいいの、 、
ふと、鏡子の心にそんな想いがよぎった。
(私は、なんてことを)
たとえ一瞬でも、そんなことを想った自分を、鏡子は恥じた。
両腕をねじ曲げられた痛みの中で、鏡子は自らを誡めた。
誰かを探す素振りの母に、
それと察した聡史は、鏡子をフローリングの床に突き飛ばした。
「あいつはいないよ、もうあいつは来ないよ」
床に倒された母が、
スカートのまくれを直そうと後ずさり、足を斜めにしてすり合わせた。
(この人は、僕のものだ)
その女性らしい仕草に、聡史は新鮮な欲望を感じた。
「さがしても無駄だよ、あいつならもうとっくに、 、
まあいいや、 、あいつの事はもう忘れていいよ、
あいつは二度と、お母さんや姉さんに手出しできないんだから」
聡史は股間を熱くして、
黒いストッキングに包まれた母の太腿を見つめた。
「だからさあ、今度は僕がするんだ
僕が、お母さんと姉さんをいじめるんだ」
「何てことを、 、」
聡史は、ベッドの上で汗ばむ姉に目を移した。
「さっきからやけに大人しいと思ったら、あれ結構効いてるみたいだね」
鏡子は、娘の素肌を見て息を飲んだ。
腹部や乳房に、無数のみみず腫れができていた。
真赤に腫れた生々しさは、今この場で刻まれたことを示していた。
「聡史っ、あなた真紀に、何をしたのっ」
「えっ、ああこれ、ちょっと叩いただけだよ」
「どうしてそんな」
鏡子には理解できなかった。
息子の為すことすべてが、信じられなかった。
「でもね、これだけじゃないんだ」
聡史は姉に近づき、股間をのぞきこんだ。
そして大きな声ではしゃいだ。
「うわっ、凄いや、 、こんなに濡らして、
シーツにまでシミができてる、何だよ姉さん、だらしないなあ」
事実、
真紀の陰唇は充血してほころび、
膣口からは透明な雫が溢れ出ていた。
年齢は大人の真紀でも、
性的には無垢なその体が、淫らな効目をもつ薬に勝てるはずがなかった。
真紀は助けを求めるように、母を見た。
「お母さん、 、」
「真紀、どうしたの、 、何をされたの」
息を乱して汗ばむ娘の異常に、
鏡子はかっとなって息子を諌めた。
「聡史っ、真紀に何をしたの」
「ちょっとね、エッチな薬を姉さんのアソコに塗ったんだ、
あいつが持ってたものだけど、かなり効いてるみたいだなあ」
こともなげに言う息子に鋭い一瞥を与えると、
鏡子は娘が気になって優しく声をかけた。
「真紀、 、」
顔をこちらに向けて、
必死に歯を食いしばる娘の姿が哀れだった。
大人の女性として鏡子も、媚薬の存在と効果を知っていた。
強い薬にいたっては、
女性の精神にも影響を及ぼしかねない。
娘に使われたものがどの程度のものか分からなかったが、
その苦しみようから見て、かなり強い薬に間違いないと思われた。
健一の持ち物だったと聞かされ、
今さらながらにあの少年の恐ろしさを思い知った。
それになぜ、
息子が健一のものを持っているのか不思議だった。
しかし、鏡子はそんな疑念よりも、娘の体を心配した。
「聡史、真紀を自由にしてやって」
「そんなのやだよ」
「どうして、このままでは真紀が」
「分かってるよ、僕だってエッチな本を読んで知ってるんだ、
このまま放っとくと姉さん、狂っちゃうかもね」
聡史は姉の乳首を、人差し指で弾いた。
「ッッ、 、」
真紀の体が、びくっと震えた。
声こそ出さなかったものの、真紀の口から苦悶の呻きが洩れた。
「真紀っ、 、 、やめなさい聡史」
母の声を無視して、
聡史は自分の指で敏感に反応する姉を面白がり、
今度はその固く尖った乳首をつまみ上げた。
「ンッ、 、」
また、真紀の体が震えた。
聡史は小さな子供のようにはしゃいだ。
「わあ、ほんと面白いや、
ねえ、姉さん、ひょっとして気持ちいいの」
おどけた口調でからかわれ、真紀は口惜しさのあまり弟を睨みつけた。
噛みしめた唇は紫色になり、
首すじを引きつらせて弟に怒りの顔を向けた。
「もう、いやだなあ姉さん、そんな恐い顔しないでよ、
感じてるんだろう、 、ねえ、エッチな声を聞かせてよ」
真紀は全身の熱い血を、怒りに変えようとした。
そうでもしなければ、自分を保つことが出来なかった。
狂ってしまいそうだった。
弟にほんの少し乳首を嬲られただけで、体に衝撃が走った。
その衝撃で、
性器の形が変わったのではないかと錯覚するほど、陰部の肉がよじれた。
真紀は、性器に刺激を欲した。
強くて、逞しい刺激を求めた。
しかしそれを、弟の前では絶対に口にしたくなかった。
あの少年と同様、
卑劣な手段で女性を辱める弟が許せなかった。
熱くなった血を怒りに変えて、
いまは凌辱者と化した弟を、必死の表情で睨みつけた。
そんな姉弟の間に、
割り込むように鏡子は膝でにじり寄った。
「聡史、もうやめなさいっ、」
母親の叱責に、聡史はむくれた顔をした。
「そんなふうに、僕に命令するなよ」
「いいえ言うわ、
こんな酷いこと、 、真紀がどれほど苦しんでいるか、分からないのっ」
母の凄まじい怒りの声にも、聡史は笑って答えた。
「偉そうに言わないでよ、そんなにお母さんって立派なの、
今日、あいつと何をしてたか言ってみなよ、その口で言ってみなよ」
「、 、 」
鏡子は顔を伏せた。
それを、自ら口にできるはずがなかった。
「今日、非常ベルを鳴らしたのは僕なんだ、
僕は、何もかも、みんな知ってるんだぞ、 、」
はっと顔を上げた鏡子は、
怯えるように息子を見た。
あのオフィスに息子がいたとは、思いもよらなかった。
「みんな知ってるんだ、
あいつと、気持ち良さそうにセックスしてたじゃないか」
聡史は一気に喋った。
「あいつとセックスしながら、
あん、あん、なんてエッチな声を出して、
、 、あいつは姉さんの仇だろう、
どうしてそんな奴の前で、あんなみっともない声が出せるんだよ」
聡史は、姉の真紀に目を向けた。
「僕たちのお母さんは、姉さんをいじめたあいつとセックスして、
昨日は、二回もいったんだよ、 、ほんと、信じられないよ、 、」
弟が口にする言葉を、
真紀は狂いそうな意識の中で聞いた。
その言葉は、真紀を深く哀しませた。
母を軽蔑するのではなく、同じ女として、母に同情した。
そしてあの健一を憎んだ。
その憎しみは、弟の聡史にも向けられた。
「、 、聡史、 、あなたも、 、卑劣な男だわっ、 、」
「あれ、姉さんは、お母さんに味方するの、
そうだよね、姉さんもあの時、エッチな音させてたもんね」
聡史はリュックの中から陰具を取り出した。
それは露骨なまで男根に似た玩具だった。
「そんなに汗かいて、
姉さん、もう我慢できないんだろ、いま僕が慰めてあげるからね」
弟が手にする陰具を見た真紀は、
最期の気力をふり絞って拒んだ。
「そんな汚らわしいもの、私に使わないでっ」
真紀は恐かった。
自分の体が、それを狂おしいほどに望んでいた。
だからこそ、弟が持つ陰具の威力に、真紀は怯えた。
事実を暴かれ、打ちひしがれた鏡子は、
息子が手にした物から、目をそらすしかなかった。
酷いことだと分かっていても、娘を癒すものはそれしかないと諦めた。
聡史は、姉の股間に玩具を近づけた。
「やめて、そんなもの使わないでっ、 、ンッッ」
冷たい陰具の先端を押しつけられ、真紀はのけぞった。
「いつもかっこいい姉さんが、どうなるのか楽しみだな、
じゃ、入れるよ、姉さん」
充血して膨れ上がった陰唇を巻き込み、
玩具が真紀の膣にめり込んでいった。
「ンッ、 、ンッッ」
押し込まれる玩具が、真紀を一人の女にした。
心でどんなに拒んでも、体が待ち望んでいた玩具に、真紀は負けた。
癒される痒みと襲ってくる快楽の波で、
真紀はすぐに、その自覚の無いまま絶頂に達した。
「姉さん、 、」
息を止めて弓なりにのけぞる姉を、聡史は感動の思いで見つめた。
その顔からは、もう薄ら笑いが消えていた。
聡史は真剣な表情で、その玩具を操り続けた。
真紀の体はふたたび快楽へと燃え始め、
やるせない痒みが癒されていく中で、身を焼かれるような官能に支配された。
食い縛った口もとがゆるみ、声が出そうになった。
「、 、ハッ」
一度ゆるむと、もう真紀には止められなかった。
「、 、アッ、 、アッ」
誰も聞いたことのない、
姉の淫らな声に、聡史は惹きつけられた。
つい先ほどまで、爽やかな化粧品の香りをさせていた姉が、
身をくねらせ、膣から女の匂いをさせていた。
姉の体が、また大きくのけぞった。
「ッッ、 、アアッ」
腰をはね上げて悶える姉の姿は、
苦しみにもがいているようにも見えた。
聡史は、
自分の手にしたものがナイフではないかと錯覚した。
ナイフで突き刺すたびに、姉が死の苦しみにもがいているように思えた。
ただ、姉の口から洩れるのは、
苦痛の絶叫ではなく、官能に焼かれる女の声だった。
「、 、アンッ 、 、アンッッ」
鏡子は顔をそむけて、目を閉じた。
しかし、聞くまいとしても、
ベットが激しくきしむ音と、娘の淫らな声が、耳に響いた。
それらの音に混じって、
性器の淫靡な音も、はっきりと耳に届いてきた。
フローリングの床に、横に座って身を固くする鏡子は、
自分と娘に起きたすべて不幸を、ただ呪うばかりであった。
しばらくすると、娘のすすり泣きが聞えてきた。
鏡子が目を開くと、
息子が前に立っていた。
「今度は、お母さんの番だよ」
息子の顔には表情がなく、
その目は焦点が定まっていなかった。
「僕の姉さんは、とっても綺麗だったよ、
ねえ、だから、今度は、お母さんの番なんだよ」
鏡子は、息子の目にガラス玉のような冷たい光を見た。
斜めに閉じた足を、さらにきつく閉じ合わせて、鏡子は後ずさった。
何をされるのか、その恐ろしい不安に鏡子は身を固くした。
「それでね、僕は今、すごく気になってることがあるんだ」
いきなりだった。
息子に肩を足蹴りにされた鏡子は、その衝撃でうしろに倒された。
頭こそ打ちつけなかったものの、
両手を後ろに縛られた、不自由な体のバランスを崩された。
スカートの中へ差し込まれる息子の手を、防ごうとしても間に合わなかった。
鏡子は、下着を奪われた。
「、 、やったぞ、僕は成功したんだ、
ざまあみろ、 、あいつ、やっぱりお母さんの中に出せなかったんだ」
下着に顔を埋めて匂いを嗅ぐ息子に、鏡子は何も言えなかった。
その下着がどれほど汚れているか、
知っているからこそ鏡子は、顔を伏せて頬を赤らめた。
「でもなあ、僕はショックだよ、
お母さんのパンティーがこんなに濡れて、
エッチな匂いをさせてるなんて、 、 、」
母親として、
息子にだけは知られてはならない女の秘密だった。
鏡子は身を隠すように体を折まげて、その残酷な言葉に耐えた。
「お母さんのオおまんこって、どうなってるのかな、
姉さんと一緒で、綺麗な色してるのかな、
そうだよね、きっとそうだよね、 、ねえ見せてよ、セックスしようよ」
足首をつかまれた鏡子は、膝をきつく閉じ合わせた。
それだけは、何があっても拒み通さねばならない事だった。
「聡史っ、やめなさいっ」
思った以上に、その手は強かった。
鏡子がさらに力を込めた時、ふっと息子の手が離れていった。
聡史はベッドに向き直った。
そしてふたたび、ズボンのベルトを引き抜いた。
「姉さん、さっきは痛いことしてごめんね、
でもね、お母さんが、僕を嫌がるんだ、
姉さんは昨日、セックスさせてくれたのに、お母さんは嫌がるんだ」
聡史はベルトを持って身構えた。
「だから、お母さんがうんって言うまで、
また痛いことするけど、ごめんね、 、」
腕をふり上げる息子を見て、鏡子が「聡史っ」と叫んだ。
その叫びは、
残忍な行為を諌めるのと同時に、
姉弟の許されない交わりを悲しむものだった。
この部屋に入ったときから、鏡子はそれを最も気にしていた。
聞くのが恐ろしくて、これまで問いただせなかった。
「聡史、 、あなた真紀と、 、」
「したよ、セックスしたよ、 、
あんまりよく覚えてないんだけど、でも、したよ、 、ねえ姉さん」
鏡子の声で、上げた腕を一度は止めた聡史も、
「、 、ねえ姉さん」と呼びかけながら、力強くその腕をふり下ろした。
先ほどの醜態で、
心が深く傷ついた真紀は、弟のすることを虚ろな目で見つめていた。
その真紀の体が跳ね上がり、
また新たな赤い筋が刻まれた。
「聡史っ、 、なんてことを、 、」
肉の弾ける音と、娘の絶叫は、鏡子を限りなく哀しませた。
地獄だと、鏡子は思った。
そして鏡子は、自らも地獄に向かう決心をした。
また、
腕をふり上げた息子に、鏡子は叫んだ。
「やめなさいっ、 、聡史の言う通りにするわ、だからもうやめて」
打ちすえられた苦痛で、
意識を取り戻したかのように、真紀が母に叫んだ。
「お母さんっ」
真紀は、弟に顔を向けた。
「聡史、したいのなら、 、私にして、
でもお母さんはだめ、私たちのお母さんなのよ、
だから聡史、 、したいのなら、 、私に、 、」
鏡子が、娘の言葉をさえぎった。
「真紀、あなたは黙ってなさい、私があなたを護ってあげるわ」
「だめ、お母さんっ」
聡史は無表情で、母と姉の声を聞いていた。
「もう、うるさいなあ、
姉さん、お母さんがいいって言うんだ、
僕はお母さんとする、 、
お母さんに飽きたら、姉さんとしてあげる」
もはや何を言っても無駄と諦める鏡子も、
一つだけ、どうしても拒絶しなければならない事があった。
もし拒むことができなければ、その先には本当の地獄が待っていた。
「聡史、 、あなたの言う通りにしてあげるわ、だから、
もし、あなたに、少しでも優しい心が残っているのなら、お願い、 、」
母親として、
子供たちの前で口にできる言葉ではなかった。
まして息子に向かって言うのは尚更だった。
しかし鏡子は、一度は言いかけてやめた言葉を、あえて口にした。
「お願い、 、 、避妊を、して、 、」
「うん、分かったよ」
思いがけず、
素直に頷いてくれた息子に、鏡子は少なからず救われる思いがした。
ただ、そんなことに安堵する自分が哀しくもあった。
「どうすればいいの、お母さん」
「それは、 、
、 、食堂のテーブルに、私の鞄があるわ、それを持って来て」
聡史は部屋を出る前に、「一応こうしないとね」と、
鏡子の両手を縛ったロープの余りを、ベッドの脚に結わいつけた。
部屋に残された母娘は、ともに無言だった。
聡史が一階から持ってきた鞄は、
仕事をもつ女性にふさわしい、実用的でしっかりとした造りの皮製品だった。
息子にその鞄を開けられる時は、やはり鏡子も恥ずかしかった。
あの少年との性交のために、
今日の午後、外出先で買い求めたものが、その中に入っていた。
なるべく目立たない、小さな薬局に入っても、
レジでお金を払うときは、顔が赤らんだ。
「あれ、こんなものが入ってる」
鞄には花柄の小物入れが忍ばせてあり、
その中には、鏡子の生理用品が納められていた。
聡史はそれを取り出して、袋を破いた。
「ふうん、お母さんって、
こういうの使ってるんだ、 、ねえお母さん、いま生理なの」
聡史には、
いずれ母の股間にはさまれて、
そこから流れ出る生理の血を吸うはずの綿製品が、
ことさら淫靡なものに思えた。
聡史は目を近づけて観察したり、
鼻を押しつけては、匂うはずのない匂いを楽しんだ。
「聡史、そんなことやめて」
そう言ったのは、鏡子ではなく、真紀だった。
母のものを、そして女性を侮辱する弟の下劣さが許せなかった。
「うるさいなあ、姉さんは黙ってろよ、
、 、ねえお母さん、いま生理なの」
「、 、 、いまは、違うわ」
真紀にはとても耐えられなかった。
男の醜悪さをさらけ出す弟に、虫酸が走った。
そして母の辛さを思うと、心が痛んだ。
「あ、これかあ、 、これってさあ、今日買ったの、あいつのために」
小さく頷く母を見て、
聡史はその箱を放り投げた。
「あいつのために買ったものなんか、僕はいやだ」
「そんな、聡史」
「だいたい、今日のお母さん変だよ、
服も、なんだかお洒落だし、 、それにあいつも言ってたけど、
お化粧も少し濃いじゃないか、 、お母さん本当は、 、 、
今日の朝から、あいつとセックスするの楽しみにしてたんだろう」
息子の言葉のすべてを、鏡子は否定できなかった。
あの少年を憎む気持ちは本当だった。
ただ、健一に女として向かい合う自分を意識した時、
鏡子はいつもより化粧に時間をかけ、着て行く服も少し迷ってしまった。
下着は、新しいものを身につけた。
そんな自分を愚かだとも、そして浅はかだとも思った。
分かっていても、鏡子はあの少年と会うために、今朝、身支度を整えた。
「信じられないよ、
お母さんのような人が、 、あんなエッチな声を出して、
それに、あいつとセックスして感じるなんて、どうしてなんだよ」
「聡史、 、 、それは、 、」
鏡子は小さく呟いた。
「私も、 、女なの」
「言い訳しないでよ、あいつの命令通りにフェラチオしたくせに、
あとで僕にも、あのフェラチオをたっぷりしてもらうけど、
だけど、 、あいつのために買ったものを使うのはいやだ、 、」
服を脱ぎ始めた息子に、鏡子は怯えた。
近親相姦という忌わしい行為の果てにある自分の姿。
すでに昨日、
あの少年との交わりで、受精したかも知れない、
その思いは確かにあったが、もしそうでなかったらと、鏡子は怯えた。
今となっては、
憎い健一の子を宿すほうが、まだ救われる思いがした。
実の息子に妊娠させられる母親。
それは、鏡子にとって本当の地獄だった。
「ねえお母さん、まだあるんじゃないの、うちの家には」
着ているものをすべて脱ぎ捨てた聡史が、鏡子に体を向けた。
聡史のペニスは、なかば包皮をかぶり、青白かった。
ひよわさを感じさせるペニスだったが、
勃起したものは紛れもなく、男の性器だった。
「聡史、 、」
鏡子は迷った。
しかし、息子のペニスを見て、心を決めた。
(でも、まさかこの子は)
ふと、鏡子は息子を疑った。
(私をからかって、楽しんでいる、 、 、)
まさか、と思った。
そこまで、息子の心が腐っているとは、思いたくなかった。
息子を信じて、鏡子は自分たち夫婦の秘密を口にした。
「、 、私のドレッサーの」
鏡子は、夫婦の寝室に秘めてある場所を息子に告げた。
たまらなく恥ずかしかった。
そして、夫に詫びた。
そこには半年前、最後の夜に使った、その残りが納められていた。
真紀はもう泣くしかなかった。
精一杯、顔を壁に向けて、目を閉じるしかなかった。
母と弟の声は、真紀をただ哀しませるばかりだった。
「途中で数えたら、はっはは、
六つ無くなってるよ、お母さん、
この箱のコンドームで六回、 、わあ、なんだか生々しいなあ」
戻ってきた聡史が笑っていた。
ただ鏡子には、やはり聡史の目が、ガラス玉に思えた。
「ねえお母さん、足を広げてよ、
僕、もう我慢ができなくなってきたよ」
息子に足首をつかまれた鏡子は、すぐに力を入れた。
「聡史、約束でしょ、 、いま、つけて、 、」
「うん、 、でも入れる前につけるよ、
本当だよ、僕はお母さんとの約束は、破らないよ」
鏡子は息子を信じて、力を抜いた。
「わあっ、 、なんだよこのオおまんこ、
びらびらが、真っ黒じゃないか、
色の白いお母さんが、どうしてこんな色になるんだよっ」
堪えがたい恥ずかしさで、鏡子は足を閉じようと力をこめた。
それを、聡史は許さなかった。
「あの野郎のせいだ、
あの野郎のせいで、お母さんがこんな色にされたんだ」
聡史は急に立ち上がると、
使うはずの箱を、部屋の隅にあるゴミ入れに叩き込んだ。
「あの野郎、僕のお母さんをこんなにしやがって、
いつもお母さんのここに入れて、楽しんでたんだ、
だからなんだ、 、 、
あの野郎、いつも威張りやがって、大嫌いだっ、 、」
鏡子も、聡史の言う相手が誰か分かった。
「いつも僕を馬鹿にして、
あの野郎なんか、
もう帰ってこなくていいんだ、向こうで死ねばいいんだ」
「聡史、 、あなたは」
「はっはは、お母さんも馬鹿だね、
僕が本気で、あの野郎のコンドームなんか使うと思ったの、
冗談じゃないよ、 、今度は僕の番なんだ、お母さんは僕のものだ」
また、
真紀のすすり泣きが部屋に小さく響いた。
鏡子には、怒りが湧いてこなかった。
その代りに、自分自身を責めた。
(あんな子に、 、)
息子を腐った男に育てた自分を、鏡子は悔いた。
「真紀、聞いていたでしょう、
ご免なさい、聡史がこうなったのは、みんな私のせいだわ、
あなたは辛い経験をしたのに、その上、聡史にまで、 、 、」
鏡子は、聡史を見た。
「聡史、 、あなたが腐った男で、私も気が楽になったわ、
私は、悪い女なのよ、
非常ベルを鳴らしたのが聡史だと知った時、 、あなたを少し恨んだわ」
鏡子も、聡史の狂気に呑み込まれていた。
「いいえ嘘ね、 、少しではないわ、
あなたを、怒鳴ってやろうかと、 、本気で思ったわ」
鏡子は自ら、足を広げた。
膝を折たたみ、腰を真上に向けて、浅ましい姿をさらした。
「あなたの言う通り、まだ私は、濡れているわ、
来なさい聡史、 、私の悦びを邪魔した償いをして」
言われるままに、聡史は腰を落とした。
聡史のペニスが入ったとき、
鏡子は、「ああっ、」と、のけぞった。
「、 、聡史がどんなに、悪い子でも、
やっぱり私は、あなたが可愛くてしかたないわ、 、あっ、あっっ」
幼稚なペニスだった。
固くはあっても、鏡子を充分に満たすことはなかった。
「、 、嫌っ、 、そんな、 、嫌っ」
鏡子は、聡史の腰に両足を巻きつけた。
からめた足を強く締めつけて、聡史をいざなった。
届いてこない深いところへ、聡史のペニスを導いた。
「嫌ぁっ、 、あっ」
聡史が射精しても、
鏡子は巻きつけた足を、決して、解こうとはしなかった。