万葉の頃から男はせっせと女の許へ通ったといいます
「通い婚」とか「妻問婚」とよばれていますが
男が女を選ぶのではありません
最後は女が男を選ぶのでした
「かぐや姫」もそうでしたね
5人の男たちそして
最後は帝まで含めたかぐや姫争奪戦。
最後は姫は誰も選ばず
月に帰っていきます
さて4500首以上ある万葉集の歌ですが
その1巻1番最初の歌が雄略天皇の長歌です
《 籠(こも)よみ籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよみ掘串(ふくし)持ち
この岳(をか)に 菜摘(なつ)ます児(こ)家告(の)らせ 名告(の)らさね
そらみつ大和(やまと)の国は おしなべて われこそ居(お)れ
しきなべて われこそ座(ま)せ われにこそは 告(の)らめ
家をも名をも
[現代語訳]
美しい籠を持ち美しい箆(へら)を手に持ち
この丘で菜を摘む乙女よ
きみはどこの家の娘なの
名はなんと言うの
この 大和の国は すべて僕が治めているんだよ
僕こそ名乗ろう家柄も名も
果たしてこの歌が本当に雄略天皇の歌だったのかどうかは
別にして何と微笑ましい平和な歌でしょうか
どんな歌かといえば要略すると
《私は名告ります、あなたの名前は何と言うのですか》
この歌の隠されてテーマは「名告り」なんです
実はこの時代 男もそうなんですが特に女性の名前は
家族以外に知られることはまずなかったと言われています
名前は基本的には秘密だったのです
あの源氏物語の紫式部も枕草子の清少納言も本名ではありません
ですから男が自らを名告り相手の女性の名前を聞くと言うことは
普通ではなくまさしく《プロポーズ》そのもの だったのです
そして 女性がそれに応えて名前を言えば婚姻成立です
こんな万葉集の歌もあります
《たらちねの母がよぶ名を申さめど、道行く人を誰と知りてか》
12-3102 読み人知らず
[現代語訳]
通りすがりのあなたが自分の名前を名告らないのであれば
母がつけた私の本名をお教えできるはずなどありません
お互いの名前を呼び合う行為呼合う(よびあう)は求愛の行為です
よばいと転化してその後この国の最近まであったという
〈夜這い〉と言う習俗になったと言われています
もっと古く文字がなかった頃には〈歌垣〉といって
特定の日時と場所に老若男女が集まり共同飲食しながら
歌を掛け合う神事がありましたここでカップルが決まります
プロポーズの始まりはデュエットからだったのです
自ら「名告り」女性の名を問い、呼合う(よびあう)は「よばう」へ転化
5文字数:1404
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