僕はもともと若妻が犯されて堕ちちゃうみたいな筋の
フランス書院文庫なんかが好きで、自分ではちょっと変
態だオレ、ふふふ、とか思ってた。今で言う寝取られス
キーですね。高竜也先生の「兄嫁28歳」が愛読書で…。
そんな妄想一筋、生涯一童貞の道を突っ走ってた僕だ
が、社会人になって、ようやくカノジョができた!そり
ゃもう有頂天さ!だが、待っていたのは地獄だった…。
カノジョは、ウチの会社の外注さんで駆け出しグラフ
ィックデザイナー。身長は150cmあるかないかで、
顔や体型は島崎和歌子みたい。デブじゃないが、二の腕
や肩なんかの筋肉が逞しくて、ミッチリ詰まってる感じ。
でも肌は鼻に小さな雀斑が浮くくらい白く、たまらな
くセクシーに思えた。僕のお初は「注射しまーす、ハイ、
ハイ、ハイ、終りましたー」てな具合だったが、成功?
童貞と見破ったかどうか知らないが、後々もカノジョ
がリードしてくれた。胸をちょっと突き出して、僕に含
ませたり、頃合になると股を軽く開いて、僕のお尻に指
をかけたり、次に何をするべきかサインを出してくれた。
何気にセックスの上手な子だったと思う。でも4つ下。
カノジョと付き合うようになってから、エロビデオや、
フランス書院文庫のことも忘れ、ひたすらカノジョの体
を可愛がった。体毛が薄くて、アソコの毛もチョロッ。
体の割に大きなお尻もスベスベしてて、弾力のある肉は
ツルンとしてつかめないような感じ。気持ちよかったー。
アソコも抜くときチュルッとくっついてくるみたいで、
すぐ漏らしてしまいました。可愛くて可愛くて、どうに
かなってしまいそうだった。
二人で会うとき以外は、カノジョの友達二三人と、僕
の会社の友人Yを交えたグループで遊ぶことが多かった。
友人は、今まで会った誰よりも笑いのツボが似ていて、
僕とちがい流行に強く、イイヤツに出会えたと思ってた。
もともとカノジョとのきっかけを作ってくれたのも、
Yだった。少し軽い男で合コン大好き。入社した頃失恋
して、まあ出会いのチャンスづくりに頑張っており、僕
もアチコチひっぱり出された。カノジョとの合コンもY
の仕込み。友人歴はYの方が僕より長かった。
そうして幸せと快感いっぱいの1年が過ぎ、ある年のク
リスマス…バカと言わないで…いや言われても仕方ないか
…僕は一人三万円の高級フランス料理店でカノジョと過ご
すべく予約を取った。なんとならばー!結婚してほしい、
なんて言っちゃったりしてー!と思ったのだ。ああ、今思
うと恥ずかしさで転げまわりたい!でもあの時は本気だっ
た。かなり前から予約を入れた。僕にはバラ色の未来しか
見えなかった。
カノジョが突然変わってしまった。当日の三週間くら
い前、急に髪を真っキンキンに染めた。何の相談もなか
った。体も心もトロトロに溶けて一体になっているよう
に思い込んでいた僕は、はじめて違和感を感じた。
白すぎる肌で金髪にすると、全体がハレーションを起
こしているように見えて、印象が完全にちがう。初めて
見る真っ赤な口紅が似合ってたが、健康的な雰囲気が消
し飛んで娼婦みたいだった。ちっとも笑ってくれない。
急転直下、僕は対応できない。すごくぎこちなくなって
しまった。髪のことを聞くと、流行ってるからとか、なん
かうざったそうだし、顔が怖い。どうしたの、と聞いても、
ウチ以外から来た仕事が死ぬほど忙しいと言われては、あ
まり口出しもできない。グチも言わない。エッチに誘う空
気でもなし、ウソみたいに会話がなくなった。多忙を口実
にしてあまり会ってくれなくなり、電話もすぐに切ってし
まう。でも…でも…クリスマスさえくれば…。
最悪。あのクリスマスにぴったりの言葉だ。二人で過
ごす約束はしていた。当日驚かせようと例の高級レスト
ランに連れて行くと、こんな高い店に来るとは思わなか
った、帰ると言い出す。本気で迷惑そうだった。けんか
になった。しまいには「私から誘ってくれと頼んだわけ
じゃない」と言った。そりゃあない!OKしたくせに!
僕はこの言葉が許せないと思った。非常識だと思った。
カノジョがこんなことを言うなんて信じられなかった。
結局、カノジョはまさに渋々テーブルに着き、仏頂面
でフルコースを食べた。なんも言えるわけねーよ!
僕は頭に来て、というより愕然として、どうしたらい
いかわからず、その後なかなかカノジョに連絡できなか
った。正月休みには二人とも帰省するのだが、僕は一人
アパートで悩んでいた。しかしカノジョが帰ってくるだ
ろう日に会いに行く決心をした。
電話で沈黙の間ができるのがイヤで、直接カノジョの
アパートに車を飛ばした。とにかく会いたかった。マジ
で激しい筋肉痛みたいに胸が痛かった。
ショックで全身の毛が逆立った。アパートの前、いつ
も僕が路駐している場所には、Yの中古ゴルフ(メチャ
安)が収まっていた。最初のショックが過ぎると、頭が
ボゥっとして、夢の中にいるみたいだった。僕は感情と
かないまま車を止めて、ぼんやりカノジョの部屋の窓を
眺めてた。あたりが暗くなったので、7、8時間そうし
てたのだろう。やがて、窓に明かりが灯った。
気がつくと、僕は当てもなく車を走らせていた。
Yが出てくる姿はとうとう見ることができなかった。
明け方、車の中で寝た。現実感が全くなかった。
会社が始まって、ある日の定時後、“友人”Yに僕は
腹を割って話をしてほしいと頼んだ。Yは逃げ腰でとり
合おうとしない。しまった、という感じで一瞬目をむい
たが、後は本当に面倒くさそうだった。
らちがあかないので、Yの腕をつかんで無理に会議室
に引っぱっていった。僕の方が二回りほど大柄だ。座ら
せると、ふてくされたような顔をして…言った
「見たんやろ。見たとおりや。正月ずっと一緒や。別れ
た言うとったで。そうやろ。今、オレら付き合うてるつ
もりやから、お前、全然関係ないんちゃうん?」
あっ、うっ、ぐっ。その時の僕の頭に中を表現すれば
こんな感じ。なんにも考えられなかった。お前、友達の
くせに!などという言葉も出なかった。そう、僕は友達
ではなかったのだ。コイツから見れば。
僕が間抜けにフリーズしているのを見透かして、Yは
さっさと逃げてしまった。Yの口ぶりからして、この弁
解が即興のデマカセだとわかった。しかし、もう、追う
気力は欠片もなかった。
足元がガラガラと崩れていくようなショックだった。
Yは捨て台詞に、余計なこと言いふらすなよ、と言っ
た。一瞬カッときたが…しねーよ、そんなこと!だが、
一週間もしないうちに、Yは自分に都合の良い話、オレ
もツレーが、カノジョがオレ(Y)を選んでしまったん
だ、というストーリーを広めてしまった。二枚目だ。事
実関係上ウソはない。僕は別れた認識はなかったけど、
カノジョはそう思ったのかもしれんし…。
でも、一言、僕にスジを通してくれよ!なんて言えな
かった。あきらめの悪い、逆恨みの負け犬っぽいから…。
しかも、わざわざ僕に口止めしといて…何も言わない
けどさ…Yは見た目も喋り口調も西田俊之っぽいイイ人
キャラだったのに。僕は怒りより、もー、おったまげ。
その後、Yとカノジョは大っぴらに付き合いだし、Y
は社内でも二三年したら結婚すると吹聴して回っていた。
仕事上のことでさえ僕を無視しようとするYが、まるっ
きり別人に見えた。僕は惨めな男として陰口を叩かれる
ようになった。のた打ち回りたいような苦しみをかくし
て、僕は自分のちっぽけなプライドを守るためにポーカ
ーフェイスを貫いた。だが、一人で寝ていて、今この時
にYがカノジョの体をいじり回し、舐めまわし、ハメ狂
っているのだと思うと嫉妬で気が狂いそうだった。カノ
ジョはあのやさしいボディサインでYを胎内に導く…。
カノジョの汗の匂い、ショッパイ肌の味、あのメチャ
メチャ気持ちいいヌルヌルの肉の穴…。全部Yのものだ。
しかし、あきれたことに春を待たずに二人は別れた。
するとYは、ずっと無視してたくせに、わざわざ僕
の机に「オレら別れたから」と言いに来た。知るか!
何だったんだろ?交替!次は君の番だよ、てことか?
Yはちょっと周囲にあきれられた。こんなことがあ
る前は、若い連中仲のよい会社だったんだが、以来、
お互いちょっと距離をおくようになったと思う。警戒
心が漂ってるように見えた。Yが合コンを企画しても、
あまり人が集まらなくなった。
Yはその後も社内の巨乳ブス(年上)を後輩二人と
三つ巴で取り合ったり、支店の若い子を誘って、その
彼氏(支店内カップル)ともめたり、お盛んだった。
寝取りスキーだったかも。見境ないだけかもしれんが。
僕は、カノジョの友達の一人とメールのやりとりをし
ていた。カノジョに遠慮して、Yとくっついている間は
何も教えてくれなかったけど、破局後、なぜカノジョが
変わってしまったのか明かしてくれた。
例のクリスマスに婚約を申し込む計画を、僕はYに打
ち明けていた。Yはあっさりカノジョにリーク…クッ!
ちょうどその時、カノジョが昔、大失恋した相手がヨ
リを戻そうと言ってきた…とよっ!まだ気持ちが残って
たためか、僕の先走った気持ちを、カノジョは急に重く
感じてしまったのだそうだ。髪を染めたのもジレンマに
苦しみ、思い切って気分を変えたかったんだと。
カノジョ悩んでたって。僕の顔をマトモに見れないと
その友達に言ってたそうだ。急に冷たく無愛想に見えた
は、そのせいだったらしい。僕のことは好きだけど結婚
は早すぎる…(同意…)。クリスマス当日は、僕の意図
が分かっているものだから、極度にパニクってたらしい。
そして僕から逃避して、元カレと会ってみたのだが、
そいつはその時オンナがいなくて、とにかくヤリテーっ
てだけなのがミエミエで幻滅。後悔して狂乱に陥り、Y
に相談。とにかく誰かにすがりたい状態で、やさしくさ
れた上に告白されて、誘われるままにYに体を開いてし
まった…。正月休みは、毎日、朝から晩までYと体を貪
り合ってたらしい。きっと、僕が買ってカノジョの部屋
に置いてあったコンドームがお役にたったことだろうな!
しまいには、Yはセックスばっかり、とこぼしてたそ
うだが…。
別に結婚がイヤなら、まだ早いし考えてないと言って
くれればよかったのになあ。頭でそういうシュミレーシ
ョンもしてたし。やっぱり、Yのクソがペラペラ情報も
らすからつ! ぐおおおおおおーーー!!!
…それはそれとして、当時、僕は周囲の誰も信用でき
なくなってたので、カノジョの事情も眉にツバをつけて
受け止めてた。その情報をもらってすぐ、案の定、カノ
ジョから会ってほしいと連絡があった。ナメんなよ!と
しか思えなかったが、ムキになるとよけいにバカにされ
ると思い、一度会った。カノジョは昔のノリを再現しよ
うと頑張っていたが、僕の全力のポーカーフェイスに耐
え切れなくなり、ポロポロ涙をこぼした。
笑わんでください…僕はこの時心の中で「鬼になれ!」
って何回も唱えてました。鬼だ!鬼になるんだ!…マジ。
付き合う前みたいに、友達でもいいから…とカノジョ
は言った。僕は、やっぱりウンと言えなかった。
勝手に口がパクパク「いいよ」と言ってしまいそうな
ほど、超ド級の未練が湧いて来たがー、我慢…バカです
か?お互い平静を装ってした最初の世間話がねえ…楽し
いのなんのって!でもやっぱりこれもウソかも、とか思
ってしまって…。
今はカノジョも僕も転職してしまい、なにもかもが遠
くなりました。Yをはじめ、会社の連中とも音信不通。
こうして書いてみて、僕はスッキリしましたが、萌え
られそうもない暗い話でスイマセン。
僕は寝取られスキーの才能がなかったんですね。妄想
は今でも好きだし、書いていて彼女のセックスを思い出
して勃起してましたけど、その時はツライだけでした。
寝取られスキーは選ばれた天才だけに許された道だと
思うので、やはり凡人は、自分の恋人をけしかけたりし
ないほうがいいんではないかと…余計なお世話スマン。
これにて失礼いたします。読んでくれた人、どうもど
うも有難う。