「気がついてもらえなかったな……」
月曜日の朝、夫の浩介を送り出した後、玄関の姿見鏡を見ながら麻由香はため息を吐く。麻由香は姿見鏡の前でクルッと半周周り、自らの後ろ姿を確認する。うなじが隠れる程度のショートカットの黒髪が、一瞬ふわっと乱れた後、綺麗にまとまった。昨日美容室で10cm近くカットしたのに、結局夫は気がついてくれなかった……。
(もう、私に興味なくなっちゃったのかな?)
麻由香はその優しげな美しい顔に、憂いの色を漂わせている。いつもは菩薩のような穏やかな笑みを浮かべている彼女だが、今は眉間に軽くしわを寄せ、泣き出しそうな表情をしている。
宮島麻由香は、先月35歳になったばかりの専業主婦だ。6つ年上の夫と大学在学中に知り合い、交際を始め、すぐに妊娠をしてしまった。予期せぬ妊娠に、当時は親族も含めて大騒動になったが、夫が当時すでに独立開業していたことと、収入的にも恵まれていたこともあり、結局麻由香は大学を中退して結婚する道を選んだ。それは、正解だったと言い切れると麻由香は今も考えている。息子の雅治は、すくすくと素直に伸びやかに育ってくれて、夫の仕事もますます順調で、夏休みと正月休みには家族3人で海外に行くのが恒例行事になっていた。
だが、今年の夏休みは息子の雅治が短期留学に行ってしまい、夫と二人の生活を送っていた。
(もう、半年は経つわよね……)
麻由香は、とっくに出て行ってしまった夫の名残を探すように、玄関のドアを見ながらそう思った。夫とは、交際が始まってすぐに妊娠してしまったため、出産して子育てが落ち着くまでの2年ほどセックスレスだった。その後は、週に1回程度は愛し合う時間を持てていたが、息子が育つにつれ、またセックスレスになって行った……。麻由香が最後に夫に抱いてもらったのは、まだ雪が降る夜だった。息子が実家に泊まりに行った夜、勇気を出して麻由香の方から夫のベッドに滑り込んだ。あの夜以来、一度も夫のぬくもりを知らずにそろそろ残暑と言われる時期まで来てしまった……。
麻由香は、身長162センチで体重は最近計ってはいないが、35歳にしては頑張っている方だと思う。二十代の頃と比べて、間違いなく脂は乗ってしまったが、肉感的でセクシーな身体になったと自負していた。
サマーニットを押し上げているその豊かな胸は、出産を経てEカップにまで成長していた。乳首や乳輪こそ、妊娠前と比べて多少色づいてしまったが、もともと色白で限りなくピンク色だったためか、今でも充分に綺麗だと思う。麻由香とすれ違う男は、誰でも麻由香の抱き心地の良さそうな身体を目で追ってしまうはずだ。
麻由香は姿見鏡を見て、スカートの裾を下に引き下げた。息子が留学に行って以来、部屋ではいつも短めのスカートを身にまとっている。今日も膝上20cm近くはある、淡い花柄のミニスカートをはいていた。
(もっと短いのはかないとダメかな?)
麻由香はすぐにずり上がってきてしまうスカートの丈を気にしながら、心の中で思った。息子がいない今、毎日でも夫に抱いてもらいたい……。そんな気持ちを持ちながら、はしたないと思われたくなくて言い出せない麻由香。健気に、ミニスカートと胸元が大きく開いたサマーニットで夫を誘惑してみるが、麻由香の秘めた欲望に気がついてさえもらえない……。35歳という女盛りの身体を持てあまし、麻由香は日々苦しみ悶えていた。
姿見鏡に映る自分……。伸びやかで優雅な曲線を描く脚が、麻由香の密かな自慢だ。麻由香は、朝から年齢不相応の格好をして夫を誘惑しているが、実は下着も身につけていない。夫が欲情してくれたら、すぐにその場で抱いてもらえるように、スカートの中には麻由香自身しかいない。そしてサマーニットの中には、ブラジャーはない。そんな事までしているのに、”行ってきます”のキスもなく夫は出て行ってしまった……。麻由香はドアを見つめたまま、自分の中の女としての自信がガラガラと音を立てて崩れていくような、やるせない喪失感を感じていた。
麻由香は、これまで自分からキスをしようと思ったことも何度かある。でも、夫しか男性を知らずに過ごしてきた麻由香は、極度の恥ずかしがりでもあった。自分からキスを求めること……ましてや、自分から抱いて欲しいと言い出すことなど、想像しただけで羞恥心で顔から火が出そうになる。
(私じゃもう興奮してもらえないのかな?)
姿見鏡に映る自分を見て、ついため息が漏れてしまう。サマーニットを盛り上げる柔らかな曲線は、子供を生んだ今もつんと上を向いたままだ。麻由香は少し前屈みになる。鏡には、ざっくりと開いた胸元から覗く、真っ白な餅のような二つの膨らみが映っている。磁器のように白い乳房には、所々に薄く青い血管が浮き出ている。これを見たら、どんな男でも夢中にならざるを得ないはずだ。そして麻由香は胸を両腕で挟むようにして、その谷間をさらに強調してみる。サマーニットからこぼれ落ちそうになる白い膨らみをみて、麻由香はそんな事をしている自分を自虐的に笑った……。
(バカみたい……)
麻由香は心の中でささやくと、姿勢を正す。すると、サマーニットを盛り上げる柔らかな曲線の頂きに、わずかに浮き出た蕾の形が見て取れた。(こんなにして……はしたない……)
麻由香は頬をほんのり桜色に染めて、その場から立ち去ろうとした。その時、ニットの布地が固くしこった蕾にわずかにこすれ、甘く痺れるような快感が広がっていく。
「あっ……」
思わず漏れてしまった甘い声に、麻由香自身も戸惑いながら、ふたたび姿見鏡に視線を戻した。そこには、母親でも妻でもない、牝の顔をしたオンナが映っていた。
(酷い顔してる……まるで盛りがついた牝猫みたいじゃない……)
麻由香は羞恥心でさらに顔を赤くし、耳まで熱を持ったように熱くなるのを感じた。
麻由香は、いつも夫が綺麗だと誉めてくれるその指で、そっとサマーニットの突起に触れた。触れた瞬間、そこを中心にじんわりと暖かくなるような快感が広がっていく。
「ンッ、あ……」
麻由香は、どうしても漏れてしまう甘い憂いを帯びた声に、胸が締めつけられそうだった。
(こんなの、ダメ……いくら抱いてもらえないからって……こんなの……)
思いとは裏腹に、その白く美しい指は、自然な動きで麻由香の蕾を優しく撫でていく。
「ふぅ、あっ、ンッ!」
思わず漏れてしまう淫らな声……。しかし麻由香は指を止めるどころか、もう片方の突起にも指をかけていく。サマーニットの布地が指で押され、幼児の指先のように柔ら固い蕾みとこすれると、多幸感で口がだらしなく開いていくのを止められない。
(こんなの、ダメ……自分でするなんて、みじめだわ……)
麻由香は理性を働かせようとするが、半年以上も夫に放置された熟れた身体は、蕾を刺激する指を止めることを拒んだ。
麻由香はサマーニットの上から撫でるだけでは飽き足らず、白魚のようなその指で、蕾をニットごと摘まみ始めた。すでにそれは、幼児の指の硬さではなく、大人の指ほどの固さと大きさになっており、麻由香の興奮を物語っていた。
「ンッ! ンふぅ、あっ」
甘い声を漏らしながら、摘まむ力を強くしていく麻由香。ついさっき夫を送り出した玄関で、鏡に映る自らのはしたない姿を見ながら、固くしこった蕾を摘まみ続ける麻由香。だらしなく口が半開きになり、発情した牝の顔になっていた。
(ダメ、ダメ……でも……あぁ……)
麻由香は胸の中で何度も逡巡しながら、ニットを押し上げる柔らかな曲線の頂きの蕾を摘まんでいた指を、スカートの中に差入れていった。麻由香は、自身の花弁があまりにも潤っていて、淫泉からあふれ出た秘蜜の雫があふれ出し、太ももまで濡らしていることに軽いショックを受けた。
(こ、こんなのって……まるで淫乱みたいじゃない……)
半年間放置された牝肉は、麻由香自身の想像を超えるほどに情交への期待に満ちあふれていた。麻由香は、戸惑い、ためらいながらもそのしとどに濡れた花弁に指を這わせていく。
麻由香の指が花弁に触れた瞬間、電撃でも流れたように痺れるような快感が体中を駆け抜け、思わず息が止まりそうになる。
「ヒィあぁ、ンあぁっ!」
乳首を刺激していた時とは違い、自分でもハッとするほどの大きな声を漏らしてしまっていた。玄関で、ドアにカギもかけずに自らを慰め続ける麻由香。我を忘れたように、スカートの中の手をうごめかす。そしてその顔は、自らの指がもたらす快感にとろけ、だらしなく弛緩してしまっている。
麻由香は、親戚、友人、知人と問わず、上品で清楚な女性と評されている。実際に、菩薩のような温和な顔と、艶やかで吸い込まれるような濡れ羽色の髪、そしておっとりとした優しい口調は、会う人すべてに清楚で上品な印象を与えるだろう。
それが今、鏡の前で立ったまま淫らに自慰をしている。夫にも見せたことのない、はしたない淫らな姿を鏡に晒し、快楽の花園へ一直線に高まっていく麻由香。
「はぁ、はぁ、だめ……ンッ! ンッ!」
麻由香はついには声まで発しながら、さらに花弁をまさぐる指の動きを早めていく。そして、意を決したような表情になると、その指を花弁の上にある小さな肉の芽に指を導いていく。
「ヒィッ! あ、ああぁ、すご、い……」
麻由香は、我知らず言葉を紡ぎ続ける。麻由香は、自らを慰めることなどほとんど経験がない。思春期から数えても、おそらく片手で余ってしまうはずだ。潔癖で、性に対して軽く嫌悪感すら持っていた麻由香にとって、自慰などははしたなさの象徴的な行為だと言える。
しかし、欲求不満の溜まりに溜まった麻由香の熟れた身体は、もう我慢の限界だった。麻由香は声が漏れるのもそのままに、固くしこった肉の芽を、身体の中に押し入れてしまうくらいの強さでまさぐり続ける。
「あっ! あーっ! あなた……あぁっ!」
麻由香は、半年も前の夫との情交を思い出しながら、さらに指の動きを強くする。激しい指の動きにあわせるように、麻由香の心臓も激しく脈打つ。次第にスカートの中から、クチュクチュと淫らな水音も響き始める。
「ダメ、ダメッ! く、来る……あぁ……」
麻由香は、頭の中が白くなり意識も混濁してきた。オーガズム直前の兆候に、泣きそうにも見える顔になる麻由香。麻由香は、鏡を見た。そこに映る自分は、左手で乳首をまさぐり、右手はスカートの中に差入れてはしたなく動かし続けている。麻由香は、それが自分だとはとても思えなかった。快感をむさぼる牝……それが自分だとは、どうしても思いたくなかった。そんな思いとは裏腹に、麻由香はもう限界寸前だった。
ギュッと足の指を内側に曲げ、太ももをピンと突っ張るようにして、この後訪れるであろう大きなオーガズムに備えていた。
「イ、イク……イッちゃう!」
麻由香が白い霧の向こうに踏み出そうとした刹那、ピンポーンと、間の抜けた音が響いた。麻由香は、バネ仕掛けのオモチャのように体を跳ねさせると、慌ててリビングのインターホンの前に駆け寄った。麻由香がモニターの通話スイッチを押す寸前に、もう一度インターホンが鳴る。
(だ、誰かしら? こんな朝早くに……もう少しだったのに……)
麻由香は心の中で軽く舌打ちをしながら、モニターの通話スイッチを押した。そこには、見慣れた制服の宅配便業者の男性が映った。
「はい」
麻由香は、肝心なところで邪魔された苛立ちをおくびにも出さず、いつもの温和な声で返事をした。
「あ、お届け物で〜す!」
宅配便の彼は、砕けた口調でそう言った。
「あ、今開けますね。お疲れ様です」
麻由香はそう言って、オートロックを解除した。宅配便の男性は、いつもの彼だった。まだ20代中頃の、少し茶色の髪の毛が軽薄に見える若者だ。口調も見た目も今時の若者という感じだが、さりげなく麻由香のことを誉めてくれるので、麻由香は密かに彼が荷物を届けに来るのを楽しみにしていた。
(オートロックでよかった……)
麻由香はオートロックを解除しながら、そんな事を思う。オートロックでなかったら、いきなりドアを開けられた可能性もあったはずだ。それを想像すると、自らの浅はかな行いに、後悔と恐怖を感じた。
しかし同時に、もしそうだったなら……自らを慰めている姿を、彼に見られていたら……。
(バ、バカ! 私ったら、なんてことを……あなた、ゴメンなさい……)
麻由香は、自分が一瞬でも浮気を肯定するような想像をしてしまったことを、心の中で夫に詫びた。オーガズム寸前に邪魔されたことで、欲求不満が行き場を失い、許されない妄想に変わってしまったのだと思う。
麻由香は、夫に半年も抱いてもらえていないが、夫のことを海よりも深く愛していた。夫と初めて出会い、一目惚れして恋に落ちて以来、ずっと変わらず夫だけを愛し続けてきた。浮気なんて、想像もしたこともなかったし、別世界の話だと思っていた。そんな自分が、一瞬でもそんな考えに捕らわれたことが、麻由香の苦悩の深さを物語っているようだ。夫に抱いてもらえない……たったそれだけの事でと言われるかもしれないが、パートもせず、カルチャースクールにも通っていない麻由香にとっては、夫は自分の世界のすべてだった。その夫に求められないということは、すなわち自らの存在を否定されているようなもの……けして大げさではなく、麻由香はそう思っていた。
そんな事を考えていると、ガチャッ! とドアが開く音が響いた。思索の檻から現実に引き戻され、慌てて玄関に駆け寄る麻由香。
「宮島さん、こんちわっす」
宅配便の彼が、人なつっこい笑顔で挨拶をする。日に焼けた顔に、真っ白な歯のコントラストが強烈で、ハレーションでも起こしそうだ。半袖をさらに腕まくりした腕は、見た目の軽薄さからは違和感を感じるくらいに太く逞しい。日々の荷物の積み込みで、鍛えられているのかもしれない。
「こんにちは。今日は早いのね。お疲れ様」
人見知りな麻由香は、最近では服も通販で買うようになっていた。店で店員に色々と勧められるのが、麻由香にとっては試練に感じるからだ。それなので、必然的に宅配便業者の彼が訪ねてくることが増えた。そして、軽く雑談をするようにまでなっていた。毎日の生活で、夫以外と会話をすることが極端に少ない麻由香にとっては、そんなたわいもない会話でも楽しかった。
「今日も綺麗っすね。ここにサインお願いします!」
軽いノリで麻由香を誉めながら、事務的にサインを求める彼。そのギャップが妙にシュールだ。
「何も出ないわよ。こんなおばちゃん捕まえて、からかわないの」
麻由香は口ではそんな事を言いながらも、ほんのりと頬を桜色に染め、内心猛烈に照れていた。そして同時に、心底嬉しいと思っていた。30歳を過ぎると、夫も含めて誰も誉めてくれなくなった。それは、仕方のないことだと頭では理解していても、胸の中のオンナノコは、いつも悲しみに沈んでいた。それが、たとえお世辞であったとしても、誉めてもらうことで、顔がほころぶのを抑えることが出来なくなるほどに嬉しいと思ってしまう麻由香がいた。
「いやいや、マジですって。俺、宮島さんと会うのが楽しみでこの仕事続けてるようなもんですもん」
あくまで軽いノリで、冗談を言うような感じで言う彼。それでも麻由香は嬉しかった。
彼から伝票を受け取り、サインをしようとした瞬間、麻由香は彼の視線を感じた。そして同時に、自分の姿を思いだした……慌てて下を向くと、サマーニットの豊かな膨らみの頂きには、左右それぞれに固くしこった蕾の形が確認出来た……。
はしたない姿を見られて、麻由香はどうしていいのかわらなくなってしまった。今さら隠すことも出来ず、何もないような顔でサインを続ける麻由香。ドクン……心臓が脈打ち、子宮の奥がかすかにうずくのを感じた。
(こんなのって……どうして?)
麻由香は自分の身体の反応に、酷く戸惑った。愛する夫以外に、ニット越しとはいえ乳首を見られてしまった……それなのに、夫を裏切ったような気持ちを持ちながら、牝のうずきを覚えてしまう自分が、酷く薄汚いモノのように思えた……。
「みんなにそう言ってるんでしょ? ママ友の噂になってるわよ」
麻由香は、自分の胸から彼の視線をそらそうと、有りもしないことを言ってしまった。そもそも息子が中学生になったあたりから、ママ友との交流もすっかり少なくなっていた。
「えぇ〜? マジですか? そんなこと言ってないのにな……噂って怖いっすね」
少し悲しそうに言う彼。麻由香は、作り話で彼を傷つけてしまったのかな? と、罪悪感を感じた。
「そうよ。気をつけなさない」
麻由香は、お姉さん風を吹かせてそう言った。
「了解っす。じゃあ、また来ますね! ありがとうございました!」
彼は、爽やかに笑顔で去って行った。彼が去って行くと、麻由香は慌ててドアのカギをかけ、リビングに入るとソファに座った。
そしてテーブルに通販の箱を置くと、思い詰めた顔でそれを見つめた。
(あんな事考えちゃったのも、あの人が抱いてくれないからだ……)
麻由香は、ついさっき宅配業者の彼に持ってしまったごくわずかな浮気願望を、夫のせいにすり替えていた。開き直ったわけでもなく、それは目の前の箱を開けるための決意のようなものだったのかもしれない。
麻由香は軽くうなずくと、段ボールの小箱に手をかけた。最近の通販の段ボールの小箱には、ミシン目がついていて容易に開封が出来る。ピリピリピリと小気味よい音を響かせながら、ミシン目が開かれていく。そして、少しためらいながら箱を開けると、麻由香の両目は大きく見開かれた。
箱の中には、剥き出しの男性器がビニールで固定されていた。と言ってもそれは、シリコンで出来たまがい物の男性器で、ディルドとか張り型と呼ばれるたぐいの大人のおもちゃだ。麻由香は毎月購読している女性誌のセックス特集を読み、大人のおもちゃの記事に好奇心と欲求不満を刺激され、抑えきれなくなりとうとう購入してしまった。
まさかこんな剥き出しの固定で送られてくるとは、想像もしていなかった麻由香は、夫がいる時に届かなくて本当に良かったと胸をなで下ろした。
(こんなの……変態みたいじゃない……)
麻由香は、こんなモノを購入してしまった自分を、酷く恥ずかしく思った。しかし、宅配業者の彼に刺激された熟れた肉体は、そのビニールに固定されたまがい物の淫棒を見て、激しく心臓が脈打ち反応していた。
(……みんな持ってるって書いてあったもの……変態なんかじゃないわ)
麻由香は、女性誌に書かれた飛ばし記事を拠り所に、自分の行為を正当化しようとした。そして、その淫棒をビニールから取りだし始める麻由香。そのビニールは、軽く爪を立てるとあっけなく引き裂かれた。そして淫棒自体に巻付けられたビニールも剥がし、”みちのく”と書かれた帯も外すと、麻由香は思わずそれを握っていた。
(こんなに太いなんて……それに、あの人のより長い……)
麻由香は、その淫棒の太さと長さに畏怖の念を抱いていた。小さなパソコンの画面で見たそれは、可愛らしいサイズに思えた。サイズの表記を見てある程度の想像は付けていたはずだったが、それを上回るサイズ感に麻由香は戸惑った。それもそのはずで、麻由香が見ていた商品はJr.と言う姉妹品だった。いま麻由香が握っているそれは、麻由香が見ていた商品よりも一回り以上も太く長い。麻由香が握っている淫棒は、日本人の標準から見ても大きいと言える。夫の浩介と比べても、間違いなく太く長いシロモノだった。
これが麻由香が平常時に届いたならば、そのあまりの大きさに尻込みをしてお蔵入りしたかもしれない。しかし、朝からの自慰と宅配便業者の彼に乳首を見られた興奮で、麻由香は普通ではなかった。麻由香はその淫棒をキッチンに運び、中性洗剤で綺麗に洗い始める。素手で洗うと、その淫棒の形がよくわかる。
(固い……それにこんなにくびれてる……)
麻由香は洗う手つきではなく、まるで愛撫でもするような手つきでその淫棒のカリ首のくびれを触り続ける。
(こんなの……ダメ……)
麻由香は、思いとは裏腹に目が期待に光っている。
そして麻由香は寝室に移動した。部屋に入るとすぐにサマーニットとスカートを脱ぎ、全裸になる。麻由香の裸体は、菩薩のような優しげな顔と同じで、柔らかな曲線で構成されていた。白くたわわな二つの果実は、出産を経てEカップにまで成長していて、20代の頃と比べると多少垂れているかもしれないが、それでもまだ充分に重力に抵抗していた。
くびれたウエストにはわずかに脂も乗っているが、痩せすぎの鶏ガラのような女性にはない妖艶な色気を醸し出している。そしてその頂きの蕾は、子育てのために多少大きくなり色素沈着もしていたが、まだ充分ピンク色と言えるレベルで、大きさも子供の指程度だ。
淡いへア、キュッと持ち上がったお尻。そこから伸びやかに優雅な曲線で突き出る二本の脚は、細すぎず、太すぎず、健康的な色気を感じさせるものだ。
優香と床を共にした男はまだ夫の浩介しかいないが、他の男が優香のこの裸体を見たら、夢中にならざるを得ないと思う。
優香はベッドの上に寝そべると、その淫棒をまじまじと見つめた。すでに火がついてしまっている麻由香の肉体は、その淫棒がもたらすであろう快感への期待に、かすかに震えていた。
麻由香は、気がつくとその淫棒を口にくわえていた。そうしようとしたわけでもなく、気がつくと麻由香は自然にそうしていた。麻由香は夫との情交で、まだフェラチオをしたことがない。この歳までその経験がないことに、麻由香自身いいのかな? と思っている。夫は、不満に思っていないだろうか? 常々麻由香は気にしていた。でも、夫は麻由香がフェラチオをしようとすると、いつも優しくそれを止めさせる。優しい夫は、麻由香にそんな事をさせるのに抵抗があるようだ。でも、その優しさが麻由香にとっては寂しくもある。時には荒々しく求められたい……女としてそう思う夜もある。
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