フェスティバルでの悪夢


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五年以上前の話ですが、転勤で海外のボルドーに赴任した秋に、同僚のs子から、パンプキンランに出てほしいと言われました。
何それ?と聞き返すと、がぼちゃをくりぬいたマスクをかぶり、全裸でストリートを走る催し物とのこと。
’無理、絶対無理’と断りましたが、’夜だから大丈夫よ、私はこの2年間出てるけど絶対バレない’としつこいのです。
いっしょに出る予定の人の身内に不幸があり人を探しているとのことでした。実際に写真を見せてもらったら、確かに、目と口の部分が開いているだけで、これなら大丈夫のような気もしました。数日悩んだ後、’s子には借りもあるし出るわ’。

当日、学校の教室のようなところで、一糸まとわぬ裸になりました。教室の出口で、かぼちゃを受け取り出発する段取りです。悪夢はここから始まりました。その年は女性の参加者が例年より多く、女性用のがぼちゃが少なくなり、背の高い私には男性用のがぼちゃが支給されたのです。被ってみて愕然としました。おでこからアゴの下まで続けて大きく切り取られた物だったのです。これでは顔が丸見えです。そうこうしている間に、’go'という声とともに、押し出されるように外へ出てしまったのです。暗い路地を抜け、メインストリートに入ると皆が歓声とともに走り出しました。その時になって気づいたのですが、このマスクは大きく、両手でしっかりと抑えていないと、ずり落ちてしまう代物だったのです。胸や下腹部を隠すこともできずに走り出しました。いっせいのフラッシュ。私はできるだけ顔を下に向け走り出しましたが、皆若い人が多く、走るのが早い。私の胸は恥ずかしいほど上下左右に揺れるのです。明るいメインストリートを抜け、やっとのことで裏路地に着き、私は放心状態。そして何人かがマスクを大きなダストシュートに捨てているので、終わったと思った私も、重くて疲れたせいもあるのですが、破棄してしまったのです。細い暗い路地を抜けると頭が真っ白になりました。また明るいストリートで出たのです。女性の本能でしょうか、私はとっさに胸と下腹部を手で押さえ走り始めました。数百メートル走ったところで、顔が見えているほうがマズイという常識的なことに気づいたのです。慌てて今度は両手で顔を抑えながら、そういえば会社の男性陣が、この催し物に来るらしいという噂を思い出しました。撮られたかもです。

悪夢のような夜が過ぎ、次の日に会社に行くといつもとまったく変わらぬ日常。
異変に気付いたのは3日後のこと。男性陣の私を見る目がおかしいのです。
帰宅するなり、着替えもせずにpcを立ち上げ、検索してみると30分ぐらいして、私の写真が見つかりました。
胸を揺らして走っている写真。ほぼ顔が丸見えのマスクを被ったアップ写真。そしてお尻が写った後ろ姿。マスクを取り顔が丸見えの写真。両手で顔を隠し、以外は丸見えの写真。
私の膝はガクガクと震え始まました。
会社のだれがが、たぶんですが、ピンクの3本線が入った白いアディダスのスニーカーでネット上から集めて作ったのです。会社の男性陣(後輩、同僚、上司のオジさん)が、これを見ているのは確実です。
死ぬほど恥ずかしいとはこのことです。

後悔が絶えない、あの日の晩の出来事です。

 

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