かなり昔、平成初期の頃の話。
高校時代を男子校で過ごした後、僕は東京の大学に出てきて下宿生活を始めた。
男子校で過ごしているから、女子のことなんてほぼ何も分からない。中学校までで雨の日に少しだけやった保健体育の知識ぐらいのもの。その中学時代の林間学校でコンドームが見つかって先生が激怒してたり、僕の親友のいとこの女の子(学校の番長だった)が3年生の時に2か月ぐらい休んでいて担任が理由を濁していた(妊娠の発覚だった)ことはあったが、その根本原因を作る行為を具体的には知らなかった。
さて、下宿生活は自由だ。夜まで好きなテレビを気兼ねなく見られる。家も比較的自由だったけど、さすがに音は気にしていたし、音がすれば「早く寝なさい」と言われる。夜にふとテレビを見ていると、関西系の番組をテレビ神奈川が買って放送していた、アダルトな番組を見つけた。詳しい内容はすぐには理解できなかったけど、風俗の情報だったり、AV女優の告白する最高のエッチ、さらにその中でAV女優が上だけとはいえ脱いでるのも電波に乗っていた。(今のコンプライアンスでは考えられないが。昭和ではなく平成ですよ)。
免疫のない僕にとっては当然その裸体が「おかず」になったのだが、同時にもう一つ、ある好奇心が頭をよぎってしまった。好奇心は性的なものに関わらず強い方だ。その好奇心・・
「女子が使っているトイレを覗いてみたい」
画面の向こうにいる、僕と体の構造が違う女性が使っている、僕の知らない場所をシンプルに見たかったのだ。
場所は通っている大学が手っ取り早かった。とはいえトイレに侵入するのは悪いことであるとは分かっている。大学に通いながら、バレない場所を調査する日々。1か所見つけた。少しキャンパスの奥まった所にあるトイレで、午前中は授業で使われるが午後になると人通りが減る。自習で使ったり友達同士で集まるにしても、もっと便利な場所があるからだ。
建物は3階建て。3階のトイレの脇の教室で自習をする体で、午後に授業の休講のタイミングなどを使い、人通りを観察した。何日か曜日を変えてやってみたが、やはり午後は人が来ない。決めた。次の時にトイレに入る。
初めて女子トイレに入った日は、午後一の休講だった。お昼を食べて、本来なら授業が始まるタイミングですぐに行った。トイレの入口にはドアが無く、入口から曲がるとトイレの個室だ。
好奇心から始まっている。なにが男子トイレと違うのだろう。
男性用の小便便器が無い以外は、最初そこまで違いを感じなかった。ただ見渡すと、入口に近い壁(入口からは見えない)に生理用ナプキンの自販機があった。大学の男性用トイレにはティッシュの自販機はないが、駅だとあるので最初は違和感なかったが、売っているものが違うことに気が付いた。
「そうか、女の子だから生理があるのか・・ん。使い終わったらどうしてるんだろう?」
勘の鋭い好奇心。トイレの個室に行ってみた。個室で唯一違うのは、ゴミ箱があることだ(今だと男性用トイレにも置かれていたりするが)。ゴミ箱の中には、大量のトイレットペーパーで包まれた物体が捨ててあった。
「???」
一番上にあるものを拾って中を見た。男子トイレだと手を洗った後のペーパータオルとかは洗面台脇に捨てられていたりするが、大きさがまるで違う。大きくて重みがあり、心なし温かい。開くと大きな厚いモノが一面赤黒く汚れていて、鼻血出した後に出てくるような、ぬめっとした黒い塊も付いていた。顔を近づけると生臭かった。
見たことが無いものだったが、直感的にそれが何かは分かった。女性の生殖器から出たもので、ついさっきまで女子大生の大事な所に付いていたものだと。あのテレビのAV女優のパンツにそれが付いている姿が浮かんでしまった。その瞬間・・僕はズボンの中で射精していた。
慌てた。その物体を持ったまま(ゴミ箱の蓋は閉じてなかったと思う)慌てて男子トイレに駆け込んで処理をした。ズボンにも染みていて、しばらくトイレを出られなかった。
その興奮が忘れられず、同じようなことをする日々。授業がたまたまない時間、休講の案内を見るとそのトイレに直行して、好奇心はいつしか変態的かつ犯罪的な性欲の発散に変わっていた。
そんなある日、いつものようにトイレに入ると、個室が一つ閉まっているのが見えた。人がいるようだ。
「しまった!」
急いで出ようとすると、個室の様子が少しおかしい。体と体を打ち付けるような間歇的な音がしていた。女の子が「あーん」という声。入口にいたから詳しくは分からない。その後体を打ち付ける音が止まり、トイレットペーパーをカラカラと取る音がした。普通なら、その後個室を出てくるはず。急いでその場を立ち去り、個室の中の人が出るのを隣の教室で待った。(もちろん、誰もいないトイレでいつもの行為をするため)
しかし・・出てくるはずが10分15分待っても出てこない。もう一度覗きに行った。
相変わらず個室は閉まっていた・・が、様子が違う。また体を打ち付ける音がしていて、それに呼応するかのように女の子の喘ぐ声。僕は個室に近づく。耳をそばだてると男性の荒い息も聞こえた。具体的な行為の様子は知らない(今みたいにネットもないし)が、それが「男女のセックス」の最中であることは理解できた。個室の中で二人の男女が快楽を求めあっている。興奮した。
さらに聞いていると、男性の声がどんどん荒くなる。「いい?」と言っている。女性の声もどんどんテンポが上がる。体を打ち付けている間に、クチュクチュというような音も聞こえた。その音がいやらしかった。
「出る・・・アアッ」
男性の声がして、徐々に体を打ち付ける音が弱くなっていった。またトイレットペーパーを取る音。僕はそこでいったんトイレを出て、前と同じように教室で待つことに。ただ、同じように待っても待っても出てこない。結局、30分近く待って物音がした。
何やら話しながら男女が階段を下りていく後姿を上から見た。体を寄せ合ってラブラブでうらやましかった。
ただ、僕はいつものルーチンだ。
その男女がいた個室に入り、ゴミ箱を見た。一番上には、小さめのナプキンと思われる包み。開くと黒いウンコみたいな筋がいくつか付いていた。その頃にはナプキンの汚れにも詳しくなっていて、恐らく終わりかけのモノだろうと解った。その下には、いつもと違う、ティッシュに包まれた小さな包みが3個。触ると柔らかく温かい。開くと、ゴムのようなものの口が閉じられ、の中に液体が入っている。その液体が精子であることは男なら解る。
1個はかなり多くの精子が出ていた。最初僕が耳にした時のだろう。2個目、3個目と量は減っているが、3回セックスしたのはその物体からも待った時間からも想像ができた。一番多い精子を包んでいたティッシュはほんのりオレンジ色というか、ピンク色というか、そんな色に汚れていた。その意味は当時分からなかったが、恐らく女の子の生理期間中禁欲していたカップルが、終わりかけの日に我慢できず・・・という流れだろう。一番上にあったナプキンは、最後トイレを出る前に彼女が交換したものだ。
僕と同じで、そのトイレは人気が無いのを知っていて、そのカップルもまた、よく使っていたのだと思う。
僕は黒い筋の入ったナプキンにコンドームの中の精子を掛けて、いつものように一番汚れたナプキンを取り出して、耳にした男女の姿を想像しながらオナニーをして、汚れたナプキンに僕の精子を含ませた。
目の前には、男女が愛し合って気持ちよくなった結果出された精子と、一人の快楽で発射された精子。
僕は冷静になった。僕は一体何をしているのだろう。
このコンドームを使った人のように、男女で愛し合える人にならないといけないはずだ。
カップルの精子、僕の精子を吸った2個のナプキンをゴミ箱に捨てなおして、僕はトイレを出た。
以後、そのトイレに入ることは無くなった。
捕まる前に思い直せて、よかったなとw