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「あたしの弟」小学校時代Pato4


前回:  「あたしの弟」小学校時代Pato3

1文字数:2079

あーあ、まだ帰りたくないよ。
今日でおばあちゃんちから家に帰らなきゃいけない。
普段の生活で「1週間」っていったら、学校はあるし、
見たいアニメもあるし、図書室で借りた本を読んだりで
長く感じるけど、夏休み、それもこうやって田舎へ遊びに
来たときなんかもうあっと言う間。
まるで、昨日やおとといに泊まりに来たばかりのような気分なんだ。
どうして楽しいときほど時間がさっと過ぎちゃって、
反対にやなとき(お姉ちゃんにいじわるされるときとか)ほど
時間はなかなか過ぎない。
なんで逆にならないんだろう。人間ってそういうふうに
できてるのかな。もし、神様が人間を作ったんだとしたら、
絶対にお姉ちゃんみたいにひねくれ者だよ。

そんなことをぼんやり考えていると、お父さんが、裏に止めて
あった車を、道路側へ回して来た。
帰らなきゃいけないんだ。やだな。
お姉ちゃんは、むだなのがわかりきっているのに、
お母さんにもっと泊まりたいとおねだりしている。
あんなことしたってかっこ悪いだけじゃない。
おねだりっていうのは、聞いてもらえるのとそうでないのが
あるんだから、だめなときはあきらめをつけた方がいいのに。

カレンは、顔では笑ってるけど、どこかさびしそうに見える。
ぼくがカレンと同じ立場だったら、絶対帰ってほしくない。
家にいる人数が半分近くに減るし、自分と同じ子供はいなくなるもの。
(まあ、近所の子がいるんだけれど)
だから、幹姉ちゃんがいてくれることがせめてもの救いだよ。

「また来るからね、カレン。
 ぼくの大親友のさくらちゃんも今度は連れてくるから」

幹姉ちゃんが伝えると、カレンはにっこり笑った。

「カレンが言ってるよ。『その子、ガールフレンドなの?』って」
「そん…そんなの違うよっ。全然違うよっ。
 友達だよ。普通の友達なんだってばぁ」

なんで、カレンも幹姉ちゃんもにやにやしてるんだよぉ。
ぼく、なんですぐに顔が赤くなるんだろう。
これじゃカン違いされちゃうよ。さくらちゃんは単なる友達なのに。
きちんと説明しとこうと思ったのに、お父さんが早く乗って、って言った。
誤解してなきゃいいけど…。

「元気でねー、カレーン」
「Bye-bye. Ringo, Mikan」

車の窓から手を振ってお別れをした。
スピードは徐々に速くなって、みるみるうちにカレンの顔が、
みんなの姿が、おじいちゃんちが小さくなっていく。
いつものガタガタ道にさしかかる頃には、田舎の景色は
竹と木に囲まれて完全に見えなくなった。
これであと2週間ぐらいカレンに会えないよ。
さびしいなぁ。
カレン……。

ぼく、もしかしてカレンのことが………って、また変なことを
考えちゃった。
だいいち、カレンはいとこなんだから結婚なんかできないよ。

……結婚?

な、何考えてるんだ、ぼくはいったい全体。
やっぱり、頭がおかしいのかな、ぼく。
気晴らしにゲームのスイッチを入れると、例によってお姉ちゃんが
ちょっかいを出してきた。

「そんなにゲームばっかりやってて楽しいの?」
「ほっといてよ。じゃましないで」
「あんたまだ口のききかたがなってないようね。
 あっ……と、ごめーん。手がすべっちゃった」

お姉ちゃんはわざとらしく、車にゆらされた振りをして、
ゲームの電源を切った。
むっとしたけれど、あることを思い出して気を静めた。
そして、ゆっくりお姉ちゃんの頭の方に手を伸ばした。

「何よ。やる気?」

反げきのポーズを取るお姉ちゃんに、ぼくは頭をなでなで
してあげた。

「遊んでほしいならちゃんと口で言おうね」

ぼんっ。

「いたあーいっ!」
「後ろで何やってんだい!」
「こら、未甘ー」

思いっ切りお腹をけられて、おまけに後ろに飛ばされたときに、
車内の固いところで頭の後ろをぶつけて、ぼくは思わず泣いてしまった。

「だって、こいつマジでムカつくことするもん」
「ちょっと、お父さん。車を止めてくれないかい」
「やだっ、おかーさん。
 だって倫悟がね、生意気なのよ。あたしの…」

山道の途中で車が止まって、助手席から下りて来たお母さんが、
後部座席のお姉ちゃんを引きずり出した。

「この子は、こうされないとわからないのかい!」
「や、やだあっ! いたいっ、いたぁいっ!
 ごめんなさい、もうしないからあーっ」

パシン、パシンって音が聞こえてくる。
いい気味だよっ、ふんっだ。
ぼくは涙をごしごし拭いて、もう一度ゲームの電源を入れ直した。
お姉ちゃんがお尻をぶたれてるところを想像して、
ちんちんが立ってしまったことは内緒だからね。

 

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