夏休みの女


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 夏休みも終わりに近づいた今日この頃。
 今年の夏は何もなかったな。ぼんやりと考えていました。 
 女性の三角地帯で、股の角度が30度の時、左右の足先の開いた距離は何センチになるのかな。
 ブルブルブルと首を横に振りました。
 「いかんなあ。またこんな妄想ばかりですよ」
 来年は受験というのに、高3の大事な夏を無為に過ごそうとしていました。
 そして、確実に終了に向かっていた今日、近所に昔からいて、いろいろとお世話になっている恭子さんが、
 「えむおくん、寮に帰るんでしょ。車に乗せていってあげるわ」
といってくれたんです。
 両親がいるところでのことだったので、
 「そうしてくれる。助かるわ」
 母が言うと
 「はい、助かります。よろしくお願いします」
 と少し過度なリアクションをしてしまいました。
 それというのも、先日花火大会の人ごみのなかで、ゆかた姿の恭子さんを見かけたんです。
 年齢は10以上離れていたのですが、とても落ち着いたたたずまいと清楚な雰囲気に、実は危うく告白してしまいそうになっていたのです。
 
 「えむおくんは彼女いるの」
 「あ、いや、へへへ」
 定番の質問になぜかにやけてごまかそうとしました。
 「あ、何か勘違いしていない。わたし、結婚しているんだよ」
 がびーん。
 
 寮に戻っても、実は、寮生は私一人なんです。
 寮母さんが作ってくれるお味噌汁と思い出せない料理。
 「私でよかったら乳揉んでもらっていいんだよ」
 「あ、いや、へへへ」
 大変なご厚情にはひと方ならぬ感謝いたしているものの、丁重にお断りさせていただいています。

 「夫はね。聞いたら腰抜かすほど年上でね」

 「あ、眠いの」

 「あ、いえ。それより行き先から遠く離れてしまってないですか」

 誰もいない河川敷の藪の中に車は停車されました。

 「えむおくんて素直でかわいいよね」

 「むかし、カブトムシ取りに行ったことあるよね」
 
 「樹液をいただけないかしら。ほんの、ほんの少しでいいの」

 サインシータ、コサインシータだったかな。

 「うえになる、それともした」
 
 無理な態勢で上になりました。

 「おおう」
 獣のような太い声を発声しました。

 最後は希望でお口に出しました。
  
 「これ、これよう」
 口元から滴る若い樹液に恭子さんは満足したのか、深いため息をつきました。

 
 「よよ、今日はまた何かあったのか。背中が哀愁を帯びてるぞ。乳なら揉んでいいんだぞ」
 お誘いは丁重にお断りし、部屋で横になるとたちまち深い眠りに落ちました。

 

 

 

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