それから…遅い春が巡りきて、とうとう小学校の卒業式を迎えた。玲子は学校を欠席したまま、卒業式にも姿を見せることはなかった。
桜が舞う季節、僕は都内の男子校に通い始めた。帰りは品川から京浜東北線だが、青い車輌の中に玲子がいるような気がしてならなかった。玲子は川崎に越すといっていたので、玲子が親しくしていた女子に、それとなく川崎のどのあたりなんだろうね?とか聞いてみたが、そこはまだ子供で、○○線の△駅とか✕✕中学などの固有名詞を聞き取れることはなかった。唯一あったのは、川崎球場が見えるとかその低度。
それから1年、休日をみつけては川崎東口のあたりで、玲子の姿を探し始めた。半ズボンをはいていたら玲子に再会できる気がした。
結局、今日に至るまで、玲子は消息不明のままだ。誰も知らないし、1年しかいなかったから、皆の記憶も薄い方だ。あれだけ人気があったのに。