蛇姫様のごりやく Ⅲ


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蛇姫様のごりやく Ⅲ

5 夢の続き

田崎の予定では、茸取りは一泊して早朝から出掛けるはずだったが、U市の渋滞が全く無くて午前中早く着いてしまった。今日の午後少し取って、また明日もと欲を出したのがいけなかった。確かに、山は豊作で沢山取れたし、妻が配る先を皮算用していたのを思い出しながらついつい引きずられてしまった。
 山の中で慣れた山を甘く見たつけが廻ってきて、どうも反対側へ下りてしまったと判ったとき野宿を決心した。里山だからどうせどこかの部落へは出るだろうが疲れも手伝って横着した。
「里山と山を侮ってはいけませんよ」
茸に病みつきになる原因を作ったカルチャーセンターの先生が云った言葉を思いだした。
清水を捜し、小さな火を起こし採った茸を二、三個焼いて食べたが大してうまくなかった。『明るくなるまでひと寝入りだ』と枯れ葉を集めて床を造り、横になった。遭難騒ぎを起こしているとは知らず、微睡んだ。頭の中は空腹のことを考えるとたまらなくなるので、セックスのことを考えていた。恋に身を窶した(やつした)蛇姫様かと思う白い女体に向かって射精せんばかりに勃起させていた。明日になって『したい』欲望を満たすための手順をあれこれ思い巡らしているうちに、地下足袋の中がほんのりと暖かくなってきた。朝の冷え込みで目を覚ますまで、音を消したTVのように夢の中を白い女体が動いていたように思えた。

 昨夜の夢の女体と亮子さんが混じり合った。抱いている亮子さんは宿の着物と紺の半羽織を纏っているのに、田崎には夢の中の白い裸体と思えて仕方なかった。
「さっきの冗談の続きみたいだけど、『私の部屋へ行きましょう』って誘ったら叱られるかなぁ」
真面目な青年のようにおそるおそる田崎は云ってみた。
 亮子さんも唇を離したそのままの姿勢でしばらくじっと見つめていた。今云った言葉を取り消そうかどうしようかと迷っていると、
「ちょっとお待ちになって。主人を見てきますわ」
亮子さんはもう一度キスをすると田崎の腕から立ち上がり隣の部屋へ消えて行った。田崎は亮子さんの戻らないうちに逃げ出したくなって立ち上がったが、不安定な気持ちのまま立ちつくしていた。
亮子さんは微睡んでいる健三の頬に軽く唇を寄せると
「田崎さんのお部屋に一人旅してきていいでしょう」
「うん、後で彼がいいと云ったら私も呼んでよ」
「はい、三十分ぐらいしたらお電話しますわ」
もう一度健三の唇にキスをすると部屋を出た。
「主人はぐっすりよ。きっと疲れたのね。お待たせしましたわ」
亮子さんは両袖で顔を隠すようにしながら、田崎の肩のところに顔を寄せてきた。田崎にも決心がついて、亮子さんの肩に手を掛けて引き寄せた。

6 彼の部屋で

 田崎の部屋にはいると男臭い匂いが鼻をついた。山に入ったときの服がザックの側に丸めてあり、洒落た登山帽がザックの上にちょんと載せてあった。不釣り合いだが使い込んだ竹の背負い篭が茸取りのベテランであるのを物語っていた。
雨戸も障子も中途半端に開いており、部屋の中は明るく夕日が差し込んでいた。後ろ手に襖を閉めると、亮子さんを立ったままで抱き寄せた。亮子さんも了解の下にこの部屋にやってきたことを思うと、はじめから深いキスとなった。
唇を離してふっと息を吐くと、亮子さんが小声で
「お窓のお障子だけしめて」
障子は赤く染まったが、部屋は薄明かりのままであった。乱暴にまくったままになっていた掛け布団を直すと、亮子さんを誘った。
「うふゝ」
と恥ずかしげに微笑みながら
「先にお休みになっていて」
と田崎の脱ぎ捨てた宿の羽織をきれいに畳み、自分も羽織を取った。
片肘付いて掛け布団を持ち上げて待つ横に滑り込んだ。
「あまり強くしないでね」
腕枕をされるために髪ををかき上げながら、囁いた。田崎の唇の近付くのを感じて自然と瞳を閉じた。舌を絡ませながらも田崎の手が帯を解こうとする手を遮った。
「肌が出ちゃうからイヤ」
浴衣の襟元はゆるく、田崎の手はしっとりと手に吸い付くような肌の乳房に届いた。乳首が指先に硬さを伝えたときには、躰がピクンと震え、甘えるような仕草で躰を寄せると、やわらかい手が田崎の躰を探ってくる。田崎は自分で帯を解き、ブリーフを取った。亮子さんは唇を乳房に感じながらも的確に田崎の勃起したセックスを強く握りしめた。
 田崎の手が亮子さんのショーツの下に潜って若草に触れる頃には、田崎はさっき風呂場でみせた状態にまでなっていた。洋剣のように反り返りむしろ長めのそれは亮子さんの手に余った。田崎は亮子さんの陰裂に指が届いたときにそこの異常な濡れに気付くとうれしかった。躰を起こすと、今度は自信を持って亮子さんの帯を引き抜いた。シューッという鋭い音と共に紐が抜けると、亮子さんも袖を自分で脱いだ。その間も、ショーツを取られる腰を持ち上げている間も、まるで憑かれたように亮子さんの手は田崎の股間を擦っていた。田崎がショーツを脚の方に両手で下ろし、丁度躰が逆向きになったまま、顔を陰部に押しつけようとした。
「それは、だめ。ねえ、それはやめて」
思わぬ強い抵抗にあったが、単なる気恥ずかしさと思って田崎は力任せに太腿を開こうとした。
「だめ、お風呂使っていないから。だめぇ」
田崎の手を逃れうつ伏せになってしまった。
脂肪に包まれた臀肉が美しく盛り上がりを見せた。
「私にさせて。ね、横になって」
さっき小沢さんがしたばかりだと言った言葉を思い出し、素直に横になった。髪に覆われてはいるが、亮子さんの上手なオフェラに田崎は天井を眺めていた。横を向いたところに丸い尻が揃えたつま先の上にどっしりとのっていた。手を延ばしそれを引き寄せようとしたが、田崎を喰えたままのくごもった声で拒まれた。
「クニンはしないから、触らせて」
頭の方に延ばした脚を素直に開いて指先を迎えた。丹念に、滑らかな襞と皺とをなぜた。熱した女の部分がねっとりと厚ぼったく外に向けて開いた。でも、その中の潤いはもう既に亮子さんの愛液だけだった。田崎を喰えていられなくなって、田崎の手で布団に横にされるままになった。
田崎は慌ただしく躰を寄せて行った。浴衣や帯などの邪魔な物を放り出すと布団中央に亮子さんを横たえた。待ち受けて軽く折れて開いた膝に片手をすべらせ、右手を延ばしてバストからボディラインを愛おしむように撫でた。白い肌の下に発達した皮下脂肪に覆われた柔らかなトルソから太腿にかけてのラインは田崎手を吸い込むように柔らかった。
「オ・ク・サ・ン」
喉に詰まった声で呼びかけながら、差し出す誘いの手に田崎は躰を預けていった。深いキスをしながらのけぞって無防備になった下半身を久しぶりに自信を持って田崎は手を添えずに勃起で探った。ぬめりを探り当てたが亮子さんの迎え腰の助けでもすぐには入らなかった。田崎は腰を押し付けたがあらぬ所を圧迫し、亮子さんが瞼を固く閉じ田崎にしがみつく。
「ごめんネ」
「ううン」
もう一度上半身を密着させたままで腰だけでさぐり合った。まるで始めての時のように場所を間違えた。
「ああッン。待って・・マッテ」
田崎のそれを逆手に握ると二三度優しく撫で、亮子さんは恥毛を分けてそこを広げた。手を離すと首を持ち上げて二人の股間を覗き込みながら腰をもう一つ開いた。
「もう一度ゆっくりしてみて」
二人はそれを楽しむように大きく浮かせた田崎の腰を亮子さんの腰が追いかけた。ようやく亀頭が膣口を探り当てた。膣口が柔らかく開きさらに深い挿入を願っている。
「うふふ、入ったわ」
微笑みかけながら囁く亮子さんに田崎も笑みで答えた。二人のつまらぬ戯れが田崎の意識を淫らに集中した。勃起はきしみながらゆっくりと襞を分けていく。
「うっウツ」
亮子さんは激しくのけぞってシーツを掴んだ。
「痛かったの」
根元まで飲み込んだとき亮子さんはうっすらと目を開けて微笑んだ。
「あなた、元気良すぎるの。とってもイイワ。あたってるわ。わかる?」
「大丈夫だろう。そっとするから」
「イヤ、ソットだなんて」
熟れた人妻の肉壁は田崎の洋剣に潤いと締め付けで抽送を促した。密着した上半身の動きがバストを揉みしだき、下半身は別人格のようにピチャピチャと音を立てながら淫媚な争いをしていた。
「ああッ、いいわ…………イイ」
「そこ、そこ、そこよ。それ、いい」
「アハァーン。待って。急すぎる、ネェーッゆっくりよ」
亮子さんがだんだんただの淫らな牝になり、田崎も両手を延ばして上半身を起こしてリズミカルに腰を動かす牡牛になった。両足を蟹のように広げて律動する田崎の腰をはさみ、太い突っ張った腕に白い細い腕を絡ませ赤いマニキュアが鷲掴みにする。
「ワウッ、イイ。・・・ ……ィイッ」
「ワゥゥッ。イ・ク・ワ」
のけぞって首の血管を太くして悶える亮子さんを真下にみながら田崎は危うく引き込まれそうになるのを耐えた。額と胸に汗が滲むのが分かった。
亮子さんの腕が物憂げに髪をかきあげ、そのまま投げ出された。田崎が腋の下に唇を寄せると目を覚ましたばかりのような声の亮子さんが微笑んだ。
「スゴイわ、コツンと当たるでしょう。そして奥まで届いてる」
興奮の時に亮子の自然な流れで伸展位になりしっかりと太腿に挟まれた昂まりは鋼鉄のままだった。田崎は陰嚢に太腿の柔らかさを味わいつつ、またゆっくりと動きだした。
「スキン持ってないから最後は注意するからね」
「ううん、私は大丈夫なのよ。心配しないで可愛がって」
その言葉は田崎に昨夜から頭の中で渦巻いている欲望を妻の中でなく亮子さんの中に注ぎ込ませるに十分だった。
亮子さんを悶え狂わせ、自分も狂って最後を迎えた。
「イヤァーン。抜かないでそのままイテー」
萎えて退くそれが抜けないように太ももを割って腰を押しつける。亮子さんの腰もピクンピクンと間欠泉のように痙攣していた。擦りつけられた陰嚢が濡れを感じた。妻とでは感じたことのない感覚に酔っていた。
ヌルリと抜けでると
「イヤァーン。行っちゃイヤァーン」
甘えながらも亮子さんはシーツに敷いたタオルを二人の腰の下に当てると
「もう少し抱いていて。スゴかったわ」
片手で抱きつきながら片手はコンニャクのようになった分身をいつまでも揉んでいた。

田崎の腕枕に火照った頬を置いて荒い息を吹きかけ、だんだん動悸がおさまった。
男の乳首を指で輪を描きながら甘え声で亮子さんは田崎に云った。
「私達夫婦おかしいと思う?」
「えっ? ええ」
突然の質問にとまどったが、田崎は最初からの疑問が頭に浮かんだ。
「スワッピングってご存じ?」
「ええ、言葉くらいは」
「私達少し変なの。なん人もで楽しむことがあるのよ」
「ご主人とあなたとほかの人とですか?」
「そうよ。あるいは女性のこともあるし、ご夫婦のこともあるのよ。今日は実は・・・」
山下さんとの約束の日だったことを亮子さんは問わず語りに話していた。話しながら、田崎を柔らかい手掌で撫で廻していた。腕枕している亮子さんの髪を撫で、頬に唇を寄せ、背をやさしく撫でていた。
二人の話が一段落して
「今日はありがとう。素晴らしかったよ」
「私でよろこんで頂けてうれしいわ」
二人はすべての思いを振り払うようにあつい口づけをしていた。
「健三さんは起きたかしら? お電話してみて」
電話をすると帳場から応答があった。
「小沢様ですね。お客様が見えられてご一緒に温泉を使われています。お呼びしましょうか?」
田崎の混乱はいろいろなことを想像させた。亮子さんが訝しげに顔を上げた。
「どうなさったの? 何か云っていました?」
「お客さんが来られて温泉に行ったって。帳場が云っていたよ」
「じゃ、山下さんが来られたのかな。私達も温泉に行きませんか」
田崎には今までこんな経験はなかったが、夢の続きを見続けるのも悪くないかと思った。
「山下さん、スタイル良くて、とてもすてきな奥様なのよ。早く行きましょう」

田崎が先に浴室に入るのを躊躇して亮子さんを待った。ご主人が居るところに田崎と二人で入るのもまるで家族と入るかのように田崎のことを押さんばかりにぴったりと身を寄せてきた。田崎は思い切って浴室の戸を開けた。
「あら、亮子さん遅くなってごめんなさい。こちら、デートのお相手?」
「やっぱり、純子さんね。部屋に電話したらお客様だって云うから、多分あなただろうと思って来たのよ。ご主人はもう出たの?」
「私、独りできたの。今まで健三さんとご一緒させて頂いていたの。健三さんはたった今、先に上がられたわ。主人は結局、休日出勤になったわ。ねぇ、ねぇ、デートのお相手の方、私にも早く紹介してよ。素敵な方じゃなぁい」
女同志のおしゃべりがはじまったので田崎は独りだけ離れたところで湯に浸かっていた。“紹介”という言葉の出たところで田崎はチョンと首を下げて挨拶した。田崎は見るともなしに純子さんを観察していた。歳の頃は田崎のちょっと上の亮子さんと同じくらいで亮子さんの丸い感じとは違ってどちらかと云うと細身の体格をしている。
「それじゃ、先に上がりますから」
女同志の世間話に花が咲いている内に田崎は退散しようとして立ちがった。
「あら、ごめんなさい。すっかり話しに夢中になって、折角のお二人を邪魔しちゃいましたわ。健三さんが待っていらっしゃるから私が先に出ますわ」
純子さんが前かがみになって前とバストを押さえながら湯から立ち上がった。
「こっちへ、いらっしゃいよ」
亮子さんに手を引かれるように湯をかき分けて岩陰にもう一度腰を下ろした。洗い場の隅の方で小さく躰を隠しながら体を拭いている純子さんの姿が合わせ鏡で背を向けている田崎の目に飛び込んできた。細身の躰に不釣り合いな豊かなバストが美しい。フト亮子さんを忘れて見とれていると
「ねっ、魅力的な方でしょう。純子さんって」
「えーッ、いいえ亮子さんもどちらも魅力的ですよ」
「いいのよ。そんなムリを云わなくても」
純子さんの出ていくドアの音を聞くと亮子さんを湯の中で抱き寄せた。

続く

 

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