『田嶋のおばちゃん』
「木ノ下ァ、きょう田嶋のおばちゃん送って行ってよ」
5時少し前、新沼さんが現場からもどってきた。
「きょうは病院に寄る日なんでね・・」
何かというと内勤で平社員の俺に雑用がまわってくる。
きょうは帰りに飲もうと思ったのに。
田嶋さんというのは会社の古株でボインのおばちゃんです。
うちは建築会社で、入社した時に田嶋さんが算盤や書類の書き方を教えてくれました。
新沼さんとは方向が同じなのでいつもの車で送ってもらっているそうです。
「沼チャンたら車に乗せてもらうとすぐおっぱい触るんだから・・」と苦情を言って喜んでます。
年齢は、60くらいかな?ぜったい本人は言わないけど。
「よかったわぁ、タケオちゃんに送ってもらえて」(※俺、木ノ下タケオといいます)
田嶋さんに腕を引っぱられてガレージへ。
「まず大通りに出たら左に曲って・・」
俺もそうだけど、みんな5時を過ぎると元気になるから不思議だ。
「悪かったわね、沼チャン病院にクスリ貰いに行くんですって」
「どこか悪いんですかね?」
「さぁ?血圧か糖尿でしょ、沼チャンいつもおっぱい触るのよ」
「それはもう聞き飽きました、僕にも触らせてくださいよ」
「タケオちゃんだったらいいわよ、どうぞ」
「どうぞって言われてもねえ」
下らないお喋りをしていたら、あっという間に着いた。
田嶋さんの家は平家の一戸建てでかなり古い。
「タケオちゃん、お茶でも飲んで行きなさいよ」
「そうですかあ」
「いつも煎れて貰ってるからたまにはね、どうぞ上がって」
会社では事務所に田嶋さんと二人の時が多く、いつの間にか俺がコーヒーの係になっていた。
だいたい3時ころになって「コーヒー入れましょうか?」って言うと
「入れてェ〜ン」と変な声で返事が返ってくる。
自分では色気のある女のつもりのようです。全然ないけどね。
色気といえば入社したての頃
田嶋さんの後ろのファスナーが開いてて、スカートがずり落ちたことがあって
えらいお洒落なパンティーからお尻が透けて見えてトラウマになりました。
「タケオちゃん、お茶どうぞ!なにぼんやりしちゃって」
「いや、田嶋さん色っぽいなと思って」
「えー?やだ、からかわないでよ、本当?!」
「正確には色っぽかったな、と思って」
「なんで過去形なのよ」
「入社したての頃だけど、田嶋さんのスカートが・・」
「えー!あれ?あれ言わないでよ、死にそうなくらい恥ずかしかったんだから」
「もう一回見たいですけどね」
「ダメよぜったい!」
「写真撮りましたけどね」
「えーッ!本当?!」
「嘘ですけどね」
「ヤダー、もうッ!」
そう言ってよく叩かれるんです。
「では僕はこれで、失礼します」
「あら、もうこんな時間?!」
「お茶ごちそうさまでした」
「帰っちゃうの〜?」
「帰りますよ」
「ご飯食べて行きなさいよ、どうせ外食でしょ?」
「晩ご飯って何ですか?献立」
「タケオちゃんの好きなもの作るからさ、何がいい?」
「何でもいいですよ、美味しければ」
「ああ、帰りに買物してくればよかったなぁ、何でもいい?」
「だから、何でもいいですって」
たしか田嶋さんは料理が苦手だって言ってたのを思い出しました。
しばらくすると餃子の匂いがしてきた。
「餃子ですか?」
「有り合わせで、冷凍だけど、いい?」
「まあ、餃子好きですから」
「よかったぁ」
餃子の匂いを嗅ぎながら部屋を見回したら
この家は独り住まいにしてはでかいような気がした。
「田嶋さん、ここ、独りで住んでるんですか?」
「妹と二人よ、なんで?」
「妹さん、帰り遅いんですか?」
「我々でいう定時にはまず帰ることないわね」
「俺が居てまずくないですか」
「気にしなくていいわよ、帰ってくると自分の部屋行っちゃうから」
妹って何歳くらいなんだろう?田嶋さんの年から考えると妹もいい年じゃないかな?
「ご飯まだ炊けないんだけど、食べてて」
テーブルの上に餃子と小皿とポン酢と箸が並んだ・・だけ。
「餃子だけですか?夕食」
「いまご飯炊いてるから、ビールあるわよ飲む?」
「いや、俺、車ですから」
「そうね、私いただくわ、悪いわね」
「・・・・じつは今日、飲みに行こうと思ってたんです」
「あら、悪かったわね、じゃ飲んだら?」
「いや、車ですから」
「一杯くらいすぐさめるわよ、ほら」
「じゃ一杯だけ」
「あー美味しいッ!タケオちゃんは?」
「美味しいですけど」
「じゃ、ほら、もう一杯どうぞ」
「だから困りますって」
「いいから、泊まってけばいいじゃない」
「ガーン!田嶋さん、酔ってないですか?」
「酔うわけないでしょ、一杯しか飲んでないんだから」
もういいやと思いました。
結局10時ころまで飲んで、泊まっていくことになりました。
「妹さん遅いですね」
「ほんとね、ま、いつものことだけど」
「いいのかな、お邪魔していて」
「いいんだってば、待ってて片付けるから」
田嶋さんが席を立ったので考えたら、この調子だと多分やることになるだろうな・・と。
冷静に考えたらそうなるな、そこに妹が帰って来て・・
「お姉ちゃん!なにやってるの!?その人誰?」って。
俺、どうすりゃいんだよ。
「タケオちゃん!大丈夫?」
「え?あの俺、やっぱり帰ります」
「何言ってんの、さ、私の部屋行きましょう」
部屋に行ったらベッドがひとつ。
「どうぞ、ここに座って、テレビ観る?」
「いやいいです、あの田嶋さん、一緒に寝るんですか?俺たち」
咽がカラカラになって声が掠れてしまった。
「ああ、嫌だったら私下で寝るけど」
「嫌じゃないです、けど一緒に寝たらたぶん・・」
田嶋さん、ここで僅かに沈黙。
「いいのよ、こんなお婆ちゃんでよかったら、好きにして」
「え?田嶋さん・・」
「タケオちゃんのこと前から可愛くて・・」
「ほんとですか?!」
「ほんとよ、目に入れても痛くないくらい」
「でも痛いですよ、他のとこに入れたら」
「どこよ?」
「おまん○に入れたら」
「えーッ?やだ、何言うのよ、でもそんなに大きいの?」
「中くらいですけどね」
「もう、ふざけないでよ」
と言ってまた俺のこと叩く。
「田嶋さんじつは俺・・」
「どうしたの?」
「したくなっちゃった」
酔った勢いで言っちゃったよ。
「えーッ!ほんと!」
「ほんと」
「い、いいわよ、じゃお風呂入る?」
田嶋さんがお風呂を汲みに行ってるあいだにもう一度冷静になろうとした。
でも駄目だった。
「お風呂どうぞ」
「俺ひとりで入るんですか?」
「ひとりで入って」
「一緒に入りたいんですけど」
「やだ、見られちゃうから」
「見たいんですよ」
「こんな身体見られたくないわ」
「だめですか?」
「お願い一人で入って」
仕方なく独りで湯舟に浸かっていると
浴室の電気が消えてドアが音もなく開いた。
田嶋さんが黙って入ってきて俺の膝の上に座った。
ザーッとお湯があふれて
「うれしいッ」という声が小さく聞こえた。
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夢中で書いていたら夜が明けてしまったので、この後のベッドシーンは省略します。
2020/12/24