社会人になっても冴えない人生を送っていた私に対して毎年律儀にチョコをくれていた幼馴染がいた。その年も彼女からのチョコを期待していたが「今年はないよ」と言われてショックを受けていた。
確かに幼馴染は私と違ってイケイケなギャルといった感じで陰な私に対して陽な存在だったので、これまでチョコをくれていたことの方が奇跡のようなことだったのだろう。
私が落ち込んでいると幼馴染は「夜、待ってな」と言って去っていった。
その発言の意味がよく分からず待っていると夜の8時頃に呼び鈴が鳴り、出ると幼馴染が立っていた。「よ!来たぜ」と言って家に入って来た。
幼馴染はとても軽い荷物を1つ持っていてそれはチョコではない様子だった。彼女はよくゲームをしに家に来ているのでいつものノリなのかなと思っているとどうやら違った様子で、食卓の方に座った。釣られて座るとカバンの中から紙を取り出して目の前に出して来た。その紙をよく見ると「婚姻届」と書いてあった。幼馴染は「これ、書け」とだけ言った。「妻になる人」欄には幼馴染の名前が書かれていて「証人」欄には既に私の父と彼女の父の名前が書かれていた。
緊張しながら間違えないように記入して終わると「これからよろしくな」と言われた。
動揺して何を話したのか覚えていないがこの年のバレンタインデーにチョコがなかった理由は理解できた。
しかし、それまでそんな素振りを見せていなかった幼馴染がいつから好意を寄せてくれていたのかはわからず、聞いてみると「小さい頃からだよ?」と言われて記憶を遡ると思い当たる節はあった。しかし、付き合ったことはないし、なんなら他の男と取っ替え引っ替え付き合っていたような記憶がある。そのことを知っているのでやや疑わしかったが、それを察したのか「何人か付き合っていたけどエッチはしてないよ、だからまだヴァージン」と言った。それを聞いて彼女の一途さに驚きを隠せなかった。
その夜はそのまま一緒に寝て翌日、役所に提出しに行って正式に婚姻した。その後は彼女の両親や自分の両親に挨拶に行き、そのまま引越しもした。幸いなことに趣味の関係で大きなワゴン車を持っていたので荷物はそれに乗せて運べたので引越し代はかなり浮いた。
荷物の片付けもサクッと終わり、爆速で夫婦生活が始まった。
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バレンタインデーの思い出
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