夏座敷と老人の想い出


101文字数:550

蝉時雨の中、君が撒いた打ち水。
「あっ!ごめんなさい…」
思いかけない君との出会い そして恋に落ちた。
青い空が眩しく、白い雲が流れてた。

薫風の中、君と歩き、涼風の中、君を抱いた。
開け放たれた窓々はまるで夏座敷、明かりを落とし君を愛撫した。
君の肌が色めき立つのが暗闇にも分かった。
君の茂みは湿り気を絶やさず、花弁を割れば蜜が溢れた。
花芯を撫でれば、君の吐息が艶かしかった。

やがて媚薬のような蜜の匂いに包まれながら、雄蕊を挿した。
僕と君は、恍惚の夢の中、夢中でまぐわい淫奔に耽った。
淫靡に体を震わせる君、夢中で突姦を繰り返す僕。
僕に跨り淫乱の舞を披露した君は、悦楽の華を咲き散らし、姦淫の熱に蕩けた…

山粧う頃、君は床に臥せった。
山間の診療所の病室の窓から見えた鰯雲を覚えている。
そして木枯らしの中、君は独り旅立ったとの知らせ…
霜花の向こうに、君を思い落涙…

春告げ鳥が来るも君は帰らず。
君と見たかった夜桜に朧月、僕は独りで眺めて、空蝉が恋蛍。
過ぎた日は帰らず。
振り返るつもりはなけれど、打ち水を見るとき ふと思い出す、君の微笑み。
鰯雲を見るとき、 ふと思い出す 君の涙…

さよなら…
僕は、君のいない幸せを見つけに行くよ…

 

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みんなのコメント

1 名前:名無しさん2022年07月24日(日) 10時58分45秒

昭和ですね

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