さや 〜壱の回〜


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はじめに言おう。
俺は変態だ。頭がおかしい。

なんせ妻の妹である沙耶を盗撮しているのだから。

俺が結婚をしたのは二年前。
一年付き合った妻と成り行きで結婚をした。式も挙げない、静かな婚姻だ。
そして情けなくも、俺は妻の実家に転がり込んだ。ただ妻の家の周りの方が住みやすいし、妻の両親の勧めもあったから……そんなくだらない理由でここに住み始めた。

妻には妹がいる。
名前を沙耶という。

義理の妹である沙耶は美しい。
170cmの長身にスレンダーな肉体。肩まで伸びたやわらかなショートボブ。元読モというのも容易にうなずける美貌は、女優の真木よ○子に似ている。19歳……本当に美しい女だ。

しかし彼女は実家にはいない。
彼女は東京で男と暮らしている。
最初それを知った時、俺は特になにも思わなかった。

沙耶は二ヶ月に一回、実家に戻ってくる。
両親が過保護でもちろん新幹線代は両親持ちだ。

結婚して一年、それが当たり前に続いた。

そんな夏のある日のこと、いつものように沙耶が帰ってきた

「こーくん、ただいま」

こーくんとは俺のことだ。妻がそう呼ぶからつられて呼んでいるらしい。

「おかえりなさい」

「あはは。まだ敬語つかうの?」

そう。
俺は沙耶に敬語を使う。

女子との出会いをあまり経験してこなかった人ならわかると思うが、美人には見えない壁がある。こちらを妙に緊張させる雰囲気や匂い。それらはまず男から言葉を奪うのだ。

俺もその一人だ。
沙耶の美しさは俺を普段の俺にさせてはくれない。
別に好きってわけでもないのに。

「ご、ごめんね」

「もう一年以上も会ってるのに変だよ。ねえ、お姉ちゃん?」

妻はうなずいた。俺は笑うしかなかった。

夏らしい暑い夜だった。
みんな風呂に入り、俺は最後に入った。
明日は出不精の俺を除いた四人でどこかへ遠出するらしい。
家族水入らずはいいよね、なんて俺は笑ってた。それは本心だった。

しかし、それは真夏の夜の出来事で変化する。

午前二時過ぎ。
みんな二階で寝ていた。
俺と妻は同じ部屋で寝て、廊下を挟んだ反対側の部屋で両親と沙耶が寝ている。

ふと目が覚めた。
おしっこがしたくなったのだ。
トイレは一階にある。
俺は妻を起こさないよう、こっそり一階へ降りた。

シンとした一階の廊下を抜けトイレで用を済ます。
スッキリして反対側の洗面所に入った。

バシャバシャと手を洗い、タオルで手を拭く。

「ん?」

タオルが臭い。
こういうのを見ると、洗濯機に入れたくなる。俺は洗濯機を開いた。そこにはみんなの脱いだ服が入っていた。

そこでふとあるものが目についた。

ネットに入ったカラフルな物。
そう。沙耶の下着だ。

好奇心だった。
あの時の俺はきっとそう言い訳するだろう。

俺は無意識にそれを掴んでしまっていた。

そして静かにファスナーを開く。

それは紛れもない沙耶のブラとパンティーだった。
俺は自分を抑えられない衝動にかられた。股間は熱くなり、手が震えた。喉も渇く。なにしているんだ、と諭す自分がどこかにいるような気がした。いや、いないかもしれない。

なにより俺はその混乱が心地よく思えた。

震える指でブラのタグを見る。

『Eの86〜92』

沙耶はEカップ。
あのスレンダーに見えた肉体には巨乳が隠れていた。
俺は沙耶の顔や肉体を思い返す。
その瞬間、さらに股間が熱くなるのを感じた。

続いて、もうひとつのブツに手を出す。

パンティーは85〜90。
これも素晴らしい数値だ。

俺の中で沙耶というパズルが組み立てられる。

ウエストに関しては、たしか沙耶は妻が感心するほどにくびれている。

数値は想像でしかなかった俺の中の沙耶を具現化した。俺はまるで沙耶という一体の人形を手にしたような気がした。

もう我慢はなかった。

それを掴んで、俺はトイレに忍び込んだ。
鍵を閉めて、改めてパンツを広げる。

「あっ……」

パンティーのクロッチは微かに黄色く汚れていた。
それは沙耶の分泌物であり、俺にとっては沙耶の陰部への入口に見えた。

気付いたら、俺はそいつを舐めていた。
苦さが余計に艶めかしく俺の心をまさぐる。

「!?」

ポトリとパンティーを落とした。

……俺はすでに射精していたのだ。

翌朝、俺は眠れずにリビングにいた。
一番に起きて来たのは沙耶だった。
妻から借りたシャツはだらしなく、キャミソールの肩紐が左から覗いている。

「おはよ、こーくん。早いね」

俺は固まった。
動けない、と言った方が正しい。

「……おや? まだ眠いのかな?」

沙耶はやさしく問いかけてくる。
首をかしげると、ゴムで縛った彼女の後ろ髪が揺れた。

「そんなことないです……」

「また敬語だ!」

「ちがうよ! ……そっちこそ早起きだね」

「あたし、東京のカフェでバイトしてるからさ。癖になってるんだよ」

「そうなんだね」

「うん。相方ともそこで会ったわけだしね!」

朝から眩しい沙耶。

早起きは嘘じゃないらしい。
俺はまだバレたんじゃないか、なんて怯えている。もちろんそんなはずはない。下着はまるで何事もなかったように、洗濯機に戻したんだから。

そうこうしてみんなが起きて来た。

そしてあれよあれよという間に、前日に予告していた通り、みんなは車で出掛けていってしまった。

妻がこう一言残して。

『洗濯機しておいてね!』

適当に見送る時も俺は興奮を抑えられなかった。
それは免罪符だった。沙耶の下着を好きにして良い、という意味でだ。

「じゃあ、洗おうかな」

俺は誰もいないリビングに、まるで確認するように叫んだ。
返答はない。当たり前といえば当たり前だ。
それは俺の中のなにかを納得させた。

まず俺は洗面所に入り、全裸になった。
そして洗濯機から沙耶の下着を取り出した。

「沙耶ちょっと借りるよー」

また叫ぶ。
もちろん家には俺一人だけ。

納得して、俺はブラを身につけ、そしてパンティーで陰茎をくるんだ。

これはセックスに等しい行為だ。
沙耶の陰部に長時間触れていた部位にイチモツを当てる。
ほぼ性行為と呼べる。俺は笑みを抑えられない。

その格好でリビングに出た。

ちゃんとカーテンは閉めてある。
自分のずる賢しさに感心しながら、俺は沙耶の荷物を探した。

彼女のキャリーバッグは二階にあった。

俺は中を開き、それぞれの位置を確認して、下着を探す。
しかしあるのはパンティーがもう一枚とブラトップだけ。

「ふざけんな!」

叫びながら、俺は一階へ駆け降りた。
もしこの姿を妻に見られれば間違いなく離婚されるだろう。しかしそのスリルこそ沙耶の下着への愛の様に感じられた。

リビングに戻り、沙耶のパンティーでくるんだイチモツこすり始める。熱さはすぐにやって来た。

「ああ、沙耶! イクよ!」

俺は射精した。
沙耶のパンティーは精液にまみれた。
興奮は収まらない。沙耶は薬物だ。俺の感情をむちゃくちゃに振り回し、下着へ射精するまでに貶めた。
俺の中の沙耶は、自らを切り売りする売女に思えた。

麦茶を飲んで、俺は冷めたようにパンティーを洗い、洗濯機を回した。

夕方まで大人しくしていた。
妻からメールがあり、夜に弁当を買って来てくれるらしい。

外に出て洗濯物を触ると乾いていた。
パッパと取り込んでいると、沙耶のブラとパンティーが目に入った。

頭がイカれている時は悪知恵も働くものだ。
俺はそいつを持ってトイレに駆け込む。そして便器に向かって射精した。手についた少量の精液。そいつをブラのちょうど乳首が触れる部分とパンティークロッチにこすりつけた。わずかな量。匂いは鼻を近づけないとわからない。

満足してトイレを出た。

まるで良い子のように洗濯物を畳んでいると、みんなが元気な顔で帰って来た。

「ただいま、こーくん!」

笑みを浮かべる沙耶。
俺はできるだけ笑ってみせた。

風呂を洗ってあげて、ちらちらと洗濯物を見つめる。
沙耶の順番になり、彼女は予想通りあのブラとパンティーを持ってお風呂場に行った。

胸が高鳴った。
それはドキドキ感とある種の征服感、そして沙耶と暮らす男へ向けた卑しい微笑にも思えた。

「上がったよ〜」

リビングに火照った顔の沙耶が戻って来た。
また妻から借りたシャツとショートパンツ。キャミソールの肩紐が見えないのは、きっとあのブラをしているからだろう。

「じゃあ、次は俺が入るわ」

そう言って、俺はお風呂場に向かう。

二回射精して疲れた身体でも流すか。
そんな気分で服を脱ぎ、洗濯機を開いた。

「…………えっ……?」

俺は口を押さえた。

洗濯機には、なんとあのブラとパンティーが入っていたのだ。

なぜだ?
俺は壁に背中を打ちつけ、腰を抜かした。言い知れない恐怖で手が震えた。バレた。そう思った。

あの女、実は知っていて、俺をからかっているのか?

俺はそのまま五分間固まり、すべてを忘れるように風呂桶に飛び込んだ。

〜弐の回につづく〜

 

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