大学で同級だった友達がアメリカのカレッジで講師をしていたのですが、
産休に入り私に1年半の臨時講師の話が回って来た時の話です。
赴任後6カ月程が経過したある日、同僚の教諭であるC子から、
’来月、NAKED RUN にいっしょにでない?’と誘いがありました。
その大学は、年に1回、男女問わず裸になって、
校内の図書館を裸で走り回るフェスティバル?があったのです。
'とんでもない、そんなの無理よ。しかも私達は講師でしょう。’
私は、手を振って断ったのですが、C子はその後も数回私の所に来て、
’私は去年も出たの。絶対にバレないから。マスクつけて走るからバレないって’
C子は産休になった私の友人とここ数年参加していたようです。
'20歳代の最後の思い出にしようよ’
C子にはアメリカに来た当初、住居を紹介してもらったり、その他いろいろと世話になった手前もあり、とうとう私は根負けして了承をしてしまったのです。
当日、早めにアリーナのロッカールームに入り、準備を始めました。
’マスク持ってきてくれた?’と不安げに聞く私に、
’大丈夫よ、ちゃんと持ってきてるから。後で渡すわよ’と言いながら、C子はすばやく裸になりました。見るとアンダーヘアーをハート型に手入れをしてありました。
’えっ、ショーツも脱ぐの?’と動揺している私に、’早く、早く’と催促して来ます。
私は、覚悟を決めて生まれたままの姿になりました。
’じゃ~、マスク渡すから’と言って取り出したのは、日本の夜店でよく売っている玩具のお面数個でした。
’えっ!!、マスクってこれ?こんなに小さいの?’
今日は同僚の男性教諭やクラスの教え子たちも見物に来ていると聞いています。
バレるのは絶対に避けたいと思っていたところに、
あまりにも粗末で小さいお面が出て来たので、私は真っ赤になって動揺しました。
お面を付けてみると、かなりきつく、ギリギリ顔が隠れる程度。
そうこうしている内に、外で歓声が上がり、バタバタと駆け出す音が聞こえてきました。
C子が’lets go’と叫び、ピカチュウのお面を付けて、ドアを開けて走り出したので、私も勢いで飛び出しました。
廊下に出ると耳をつんざくような大歓声とフラッシュの嵐。
ビデオ撮影している人も大勢います。
私は、条件反射的に胸と股間を手で押さえて、下を向いて走り出しました。
見ると顔を隠していない人がほとんどで、女性も堂々と全裸で、しかも下のヘアを剃っている人も多く見られます。
1区画を走ったところで、手で隠しているのは私だけ?ということに気づき、
かえって注目を浴びているような気がしたので、皆に交じって手を放して走り続けました。
生徒たちは若いだけあって走るのが速い。いつしかC子ともはぐれてしまい。全力で走る私の胸は、上下左右に激しく揺れてしまっていました。
廊下の両脇にはぎっしり見学人がいて、白人の他にもアジア系、この大学は日本人も多いので日本人もかなりの数います。恥ずかしいを通り越して、異様な気持ちになりました。
そして3区画目に入ったところで悲劇が起こりました。
それまでも勢い余って転倒している人が何人かいましたが、
運の悪いことに私の前を走っていた女子がつまずくように転倒し、私も覆いかぶさるように転んでしまったのです。ただ転んだだけなら、大事にはならなかったと思います。
私のお面のひもが何と切れてはずれて、お面の右半分が潰れてしまったのです。
慌てふためいた私は、とっさにお面で股間を左手で胸を押さえて走り出していました。
なぜそうしたかはわかりません。頭が真っ白になっていましたから。
50Mぐらい走ったところで、我に返って、顔を隠していないことに気づいて、急いでお面を顔に当てがいました。
’どうしよう、知り合いに見られたかしら・・・どうしよう’
そのことばかり考えている内にようやく終点のホールにたどり着き、皆で歓声を上げた後、お開きになりました。
数日は平穏な日々が過ぎました。
その日、教壇に立っていると、明らかに生徒たちの態度がおかしい。
昼休みにC子が飛んできて、
’大変、親友だから言うね。先日のことがネットに上がっているみたい。ごめん。’
’えっ!!、まさか!、やだやだ、どうしよう’私は膝の力が抜けていくのを感じました。
'職員室に入っても、男性陣の態度が明らかに変です。笑いながらこちらを見ている・・・
私は早退して自宅に戻ると、C子から教えてもらった’けっこう仮面の正体’というワードでパソコンで検索を行いました。
私は顔から血の気が引いて行くのを感じました。
そこには私の画像が写っていたのです。
'けっこう仮面の正体は、我が校の美人講師だった’とヘッダーに記載がありました。
後でわかったのですが、けっこう仮面とは、プロポーションの良い女性が、マスクだけを被り活躍するアニメのヒロインだったのです。どうやら私が被ったお面はそのキャラクターだったようです。
下にスクロールするとお面をかぶり、胸と局部を押さえて下を向いて走る私の写真が掲載されておりました。
かなり画質が良いので、本格的なカメラで撮られたものだと思います。
さらにスクロールすると、胸と局部から手を放して走る私の姿がありました。
5枚ほどある内の2枚は、写真でも胸が明らかに横に揺れているのが見て取れます。
コメントで、
’大きな胸を揺らし、アンダーヘアをなびかせて疾走するけっこう仮面’と書かれています。
そして、震える手で、画面を下にスクロールすると、
絶望的な写真が掲載されておりました。
お面で局部を隠し、左手で胸を隠し、顔を隠していない私の写真がありました。
画質が良いので、これでは誰が見ても私とわかってしまう。
’正体見たり、けっこう仮面。なんと、なんと我が校の女性教員だった’
と大きい字で書いてあります。
顔が写っている写真が、さらに4枚ほどあり、
最後に私の後ろ姿(当然、お尻が丸見えなのですが)の写真があり、’バイバイ’で締めくくられていました。
締めくくりの後に、’通常時の美人’というコメントとともに、
服を着て教壇に立つ私の姿と顔のアップ写真が上げられていました。
’ひどい、誰がこんなこと・・・’
他に動画もアップされていましたが、見る気にはなりませんでした。
全身から力が抜けて行くのを感じました。
同僚の男性教諭や教え子たちにこれを見られていると思うと、気が変になりそうでした。
恥ずかしいやら、悔しいやら、悲しいやらで体全体が熱くなりました。
その翌日から休暇をもらい、1カ月経過しても立ち直れない私は、辞表を郵送し帰国いたしました。
今でも完全には立ち直れていません。