俺は十五年前、向かいに住んでいる奥さんで童貞を捨てた。
当時、俺は高三の18歳。
奥さんは40だったと思う。
奥さんには俺より僅かに年上の双子がいたが、悪友とつるんで酒タバコを飲むいわゆる不良だった。
カエルの子はカエルなのだろう。父親は飲んだくれでしょっちゅうDV騒ぎを起こし、深夜にパトカーがやって来たのも二度三度ではない。
父親を見かけなくなったのは高2の時。
次の年には就職したのか、双子も見なくなり、静かな夜が続いた。
奥さん(『えみ』とする)と出会ったのはそんな高三の夏だった。
えみさんは美人というよりは童顔で可愛らしく、背は小さいがフワっと柔らかそうな肉付きの女性だった。
当時から〝タレントの『はし〇えみ』に似てるな~〟と興奮していた俺は日々、自室の窓から彼女が草むしりやゴミ捨てに行く様子を伺った。
朝のゴミ出しをするえみさんの無防備な姿を見るだけで勃起した。
ある朝、シワの寄ったシャツや透ける下着、むっちりとジーンズを押し上げる太ももを眺めていると、ついに我慢できなくなった。
俺はキッチンのゴミ袋を鷲掴みし彼女を追った。
「おはようございまーす」
気さくに挨拶するとえみさんは驚いた様子で俺を見つめ返した。
クリンと可愛らしい目が何度か瞬いて、ぎこちない笑みが滲んできたのを今でも覚えてる。
怖かった。
拒絶されると思ったからだ。
「あっ……おはようございます」
と俺に放たれた初めての声は動揺を隠せていなかった。
無理もない。
部屋着のまま、しかも若い男に話しかけられれば普通そうなる。
彼女はすぐに顔をそらした。
「今日も暑いですね」
俺は当たり障りのない会話を持ちかける。
「ええ」とか「そうですね」とか相槌を打ちながら歩き続けるえみさんの体を俺はつぶさに観察した。
黒い下着が無地のシャツに透けて、歩くたびに乳房が弾む。
ジーンズは今にも裂けそうなほどむっちり張り詰めて、えろい。
突っかけたサンダルからつま先が覗いている。
ペディキュアとは遠く無縁な……それを言うなら〝女性〟から遠ざかりつつある肢体の一部だった。
もちろん、化粧だってしていない。
ゴミ捨て場へ着く頃には「申し訳ないことをしたな」と後悔し始めた。
「向かいの〇〇さんですよね?」
きびすを返しつつ、えみさんが俺を見上げながら聞いた。
口角が少し上がって、柔らかな笑みを帯びている。俺はホッとした。
「知ってました? 俺のこと」
「たまに見かけるので」
「俺も見かけてました……なんて」
はぐらかしたつもりだが、えみさんの乾いた笑いで真意を見抜かれたと思った。
同時に、さぞキモがられるだろうな、いやいやこれは大きな一歩だ、という不毛な葛藤が続いた。
気まずい空気が流れ、俺は彼女の横顔を見つめるばかりになった。
ゴミ捨てという日常の断片において、ペディキュアも服装も化粧も怠る彼女だが、髪だけは綺麗だった。
肩にかかるセミロングは明るいブラウンに染まっており、白髪の一本も見当たらない。
歩調にあわせて一本一本が舞うようにそよいだ。
じっと見つめすぎたのだろう。
視線に気づいた彼女がはにかんで、指で髪をすいた。
「ごめんなさい、こんな格好で……」
それを聞いて俺は嬉しくなった。
俺という性欲剥き出しの若造を前に、〝女〟であろうとしたえみさんの姿をかいま見れたからだ。
「俺、良かったっす、話せて」
と俺は訳の分からないことを言って彼女を笑わせた。
今までで一番親しみのある笑いだった。
そんなゴミ捨てだけの関係を一ヶ月繰り返した、ある晩夏のことだった。
「お茶、飲んでいかない?」
そう尋ねるえみさんの頬にチークが差し込んだ。
カジュアルな服装はそのままに、薄化粧をした彼女に会うことが多くなったが、このチークは化粧によるものではないとすぐに分かった。
「行きます! お茶飲みます!」
「遅刻しないようにね?」
学校なんかサボってもいいと思った。
玄関に入ると人の家の匂いがした。
こんな戸建てに独りで住んでるのか……そう考えると匂いも相まってなぜか勃起した。
スウェットを押し上げてくるイチモツを何とか抑え込もうとしたが無理だった。
えみさんが先に立って俺を案内する。
小さな背中。結った髪の毛が肩で弾む。
汗に光るうなじを見つけた時、胸が高鳴って、体のどこかでタガが外れた。
俺はえみさんの小さな肩に手を触れ、強く抱き寄せた。
彼女はバランスを崩し、俺の足を踏みながらも体を預けた。
体躯に相応の小さな悲鳴が上がる。
「何!? どうしたの!?」
「すみません、すみません」
俺はバカみたいに謝り続けながら彼女の脇へ手を通し、胸を強く揉んだ。
いつかAVで見たように指先で緩急をつける。
えみさんの乳房は布越しにハッキリ分かるほど大きかった。
いつも眺めるだけだった彼女の体に触れている……それだけで俺のチンコは暴発寸前だ。
「ダメだよ……こんなところで……」
俺を引き離そうとする彼女の手には全く力がこもっていない。
むしろ胸を揉むたびに脱力していくようだった。
俺はえみさんの耳を甘く食みながら、そのプリっとしたお尻にチンコを押し付け、上下にこする。
亀頭が痺れるように熱い。
「俺……ずっとこうしたかった」
「……ぁ……ん」
返事は甘美な囁きに取って代わった。
俺はそのままえみさんを押し倒し、リビングの床で彼女を剥いた。
白い素肌が露になった瞬間、ブラのベージュさえも網膜を焼いた。
彼女の濡れた目が俺を見つめている。
唇がわずかに開いて、吐息が淡く漏れはじめる……どこか覚悟の据わった表情だった。
「いいよ……? きて……抱きしめて」
汗で張り付いた前髪をかき上げながらえみさんは言った。
俺は何も言わずブラをずらし、溢れ出たおっぱいにむしゃぶりついた。
薄茶色の乳首はすでにピンと立っており、舌先で転がすたび彼女の体が強張るのを感じた。
「はっ……んん……強く揉んで……吸って……!」
俺は言われるまま胸を鷲掴みにし、顔が沈み込むほど強く吸いついた。
同時に、太ももにこすりつけていた陰部が一気に高まってくるのが分かった。
「イキそ……」
言うや否や、えみさんは急に起き上がり、俺のスウェットを下着ごと下ろすと、露出したチンコを根本まで頬張った。
「えみさん……気持ちい……すげ……」
ジュル……ジュリュルル……クチュ……
舌がねっとりと絡みつき、淫らな音を立てた。
「出して……ん……イッて?」
口から溢れた唾液とカウパーのない交ぜがクーラーで冷やされ、金玉に辿り着く頃には溶けた氷の一筋になった。
熱を帯びた部分と、冷やされた部分とが理性のボーダーを曖昧にする。
俺は腰を突きあげながら果て、えみさんの口内に濃厚な一発目を射出した。
今ここで死んでもいい、そう思ったのを鮮明に覚えている。
むせ返るえみさんの口から信じられない量の精液が零れ落ち、フローリングを打った。
「いっぱい出たね」
えみさんが震える指で口をぬぐい、嬉しそうに笑んだ。
「やっぱり若いねえ、ビックリしちゃった」
旦那と比べてるんだなと思った。
刹那、嫉妬とは違う不快感が息を整える間に満ち満ちて、虚栄心を亢進させた。
旦那のことなんか頭から締め出させてやる……と。
えみさんが床の精液をふき取り始めた。
不意に、たわわなお尻がこちらへ向けられる……俺は彼女のベルトを外し、ジーンズを力任せに引っ張り下ろした。
「ちょっと……! そこは……あぁ……っ」
ブラと揃いのパンティにはシミが広がり、顔を近づけると蒸れた女の香りがした。
手入れされていない陰毛が僅かにはみ出している。
俺は下着越しに舐めまくる。
しっとりと汗ばんだお尻を両手で揉みしだき、鼻先から陰部へ突っ込む。
「ゃだ……んぁ……ぁ」
「えみさん、エロいです、溜まってたんですか?」
「聞かないでよ……ん……」
「溜まってたの? セックスしたかった?」
「……うん」
頬を染め、瞳を濡らして、「うん」と白状するえみさんはマジで可愛かった。
俺のチンコは一度も萎むことなくバキバキに反り返り、脈打つたびに陰茎が亀頭をもたげた。
「俺、童貞なんだけど……」
「いいよ」
えみさんが微笑みながら唇を重ねてくる。
キスも初めてだった。
彼女の舌が唇をこじ開け、俺の舌を唾液と一緒くたに絡めとってくる。
チュ……チュプ……チュル……ジュリュ……
家どころかご近所中に響くような音で吸い付いてくる。
俺は全裸になるとそのまま彼女を抱きしめ、しっとりと濡れた肌と肌とを叩きあわせた。
えみさんの体はもっちりと温かい。
互いの唾液と汗が混ざり合い、肌にこすれて溶ける。
そのままソファーへ移動し、すぐさま彼女の下着を下ろした。
濃いめの陰毛が視界の中枢で微かにそよぐ。
「入れて……君のおちんぽ。欲しいの……すぐに……ぁぁっ!」
力を入れずとも、陰部は根本まで飲み込まれていった。
膣内は閉じ込められた熱によってぐちょぐちょに溶けてしまっているようだった。
腰を引くとチンコと一緒に愛液があふれ出してくる。
ジュッグジュッジュ……ジュル……
抽挿のたび陰唇が吸い付き、淫猥に響く。
「あっあっぁッ……大っき……ァ……ゃ……ん!」
「すげえ……気持ちい……!」
「名前……呼んで……えみって……」
「えみさん……えみさん!」
「ん……ぁぁ……奥……届いてる……ん!」
名前を呼ぶたびに膣壁がキュッキュとすぼまり、陰茎への刺激が鋭くなった。
闇雲に腰を打ち込むと乳房があちこちへ揺れ、喘ぎ声が膨らむ。
えみさんは上半身をもたげ、俺を背中から押し倒し、騎乗位で腰を振った。
まさに絶景だった。
あのえみさんが俺にまたがって半身をくねらせ、自分でおっぱいを揉みしだきながら高く喘いでいる。
俺は彼女の呼吸に合わせてチンコを突き上げ、二度目となる射精の気配を感じ取った。
「イキそう……えみさん……出ちゃう……」
「……いいよ……んっ……いいよ……!」
えみさんは緩めるどころか動きを速め、俺の全身から精液を吸い出そうとしてきた。
〝中はマズイ〟という懸念が童貞ながらに脳裏をよぎったがもう止まらなかった。
「中に……欲しいから……ちょうだい……出して……中にいっぱい出して……!」
「やばいやばい……えみさん……イク……えみ……イクよ……イクイクイク!」
呼吸を忘れるほどの快感だった。
えみさんの中でチンコが暴れまわり、精液がほとばしっている。
視界が霞み、聴覚以外の感覚があらかた消えてしまったようだった。
残ったのは内耳に反響するえみさんの喘ぎと、下半身から伝わる快楽のサインだけだ。
えみさんがおもむろに腰を上げる。
膣口から精液が滴り、絶頂を迎えて痙攣を繰り返す亀頭を打った。
「気持ちよかったね……!」
えみさんが女の子みたいに笑いかける。
刹那、快感と背中合わせの背徳感……頭を支配しかけていた旦那や子供たちの姿が雲散した。
「もう一回……もう一回やりましょう!」
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俺たちの関係は、えみさんが引っ越すまでの一年間続いた。
旦那とは離婚していたらしく、実家へ戻ると言っていたが、あるいは近所の目が気になったのかもしれない。
俺と彼女の逢引きが噂になっていたからだ。
俺も大学一年の秋から逃げるように一人暮らしを始め、しかしえみさんとは二度と会っていない。